Office クラウド塾
これからどうなる Microsoft Online Services〜Office 2010との連携は?気になる話題を直撃
Microsoft Online Services連載第6回は、国内でのサービス開始から1年経った現在の状況と、気になるこの先のサービスの展開について、マイクロソフト社のインフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループの磯貝 直之 部長(以下磯貝氏)とインフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループの田中 道明 部長(以下田中氏)に話を伺った。
幅広い層からの反

■インフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループ 磯貝 直之 氏

■インフォメーションワーカービジネス本部 Office製品マーケティンググループの田中 道明 氏

-日本国内でMicrosoft Online Servicesを提供されて、1年が経ちますが、ユーザーからの反応はいかがですか。


磯貝氏 日本でサービスを開始する前には、いわゆるグループウェアを利用されていない、メールだけを使っている中小企業の方々が、Microsoft Online Servicesに興味を持たれるのではと予想していました。しかし、実際にサービスを開始してみると、中小企業だけでなく、大企業を含めて、多種多様な企業にご利用いただいています。マイクロソフト社に長く勤めていますが、こんなに立ち上がりの早いビジネスは初めてです。Microsoft Online Servicesを提供している他国と比較しても、日本のビジネスは好調で、大きな手ごたえを感じているところです。現在は、数人の事務所レベルから数万人の大企業まで、多様なセグメントのお客様にサービスをご提供しています。


―日本でクラウドが、そしてMicrosoft Online Servicesが受け入れられはじめている要因はなんなのでしょうか。


磯貝氏 一昨年のリーマン・ショック後、企業のIT投資が縮小される傾向にありました。これにともない既存のITシステムの見直しも行われ、システムの全体コストや運用コストといった面も重視されてきました。こういったタイミングで、「持たざるITシステム」が利用できる「クラウド」に注目が集まってきたのでしょう。また、より高度な機能、最新の機能を、インターネット経由で手軽に利用できるのも、クラウドに注目する企業が増えた要因と言えます。そういった企業では、オンプレミスで持っていたシステムのリプレースのほかにも、SaaS等で提供されているメールシステムのリプレースにおいても、Microsoft Online Servicesを検討いただけています。


 電子メール、ドキュメント管理、コミュニケーション(インスタントメッセンジャー、在席確認)などは、ある意味、ビジネスで汎用的に必要とされるエッセンシャルな機能の集合なので、各企業によってカスタマイズが必要な業務システムや財務システムなどと比べると、クラウドにリプレースしやすいというのもあるでしょう。


 それに加えてMicrosoft Online Servicesは、Outlookをはじめとするメールソフトウェアや、WordやExcelといったOfficeソフトをオンプレミス(社内システム)のサーバーに接続するのと同様に利用できるため、エンドユーザーとしてはオンプレミスにあっても、クラウドにあっても、使い勝手という面ではまったく違いはなく、既存システムからの移行が容易です。たとえば数千人、数万人もの従業員がいる大企業にとって、今までと使い勝手が変わるということは、従業員に対する教育だけでも大変な苦労とコストがかかります。Microsoft Online Servicesなら、極端な話、明日からシステムを切り替えたとしても、エンドユーザーはアクセス先が変わるだけで、今までと同じ使い勝手でシステムが利用できます。これなら、従業員に対する教育コストもほとんどいりません。これは、専任の IT サポート リソースを豊富に置いていらっしゃらない中堅・中小のお客様にとっても、大きなメリットとなります。


ちなみに、既存システムのリプレースだけでなく、まったくのシステム新規導入においてMicrosoft Online Servicesをご検討されるお客様も、相当数いらっしゃいます。とりわけ、会社を立ち上げたばかりのスタートアップ企業などにとっては、システム構築の初期コストが抑えられるというメリットは大きいと思います。


-Microsoft Online Servicesをご利用の企業は、どういったサービスを中心にしてお使いになっていますか。


磯貝氏 これまでの例から言えば、Exchange Onlineに対するニーズが高いです。理由はいろいろあるかと思いますが、単なる電子メール機能だけにとどまらない、Exchange Onlineの付加価値に目をつけてくださっている企業が多いように思います。たとえば、Exchange Serviceが提供しているスケジュール帳などの機能です。Exchange Onlineでは、スケジュール共有やアドレス帳共有、ミーティング招集などの便利な機能がOutlookと連携してスピーディーに行えます。そうしたExchangeの魅力にあらためて注目してくださる企業は多いです。


 また、Exchange OnlineはExchange Serverと共通のWeb APIを持っているため、サードパーティーが開発した豊富なExchange対応ソリューションを利用できるというメリットもあります。たとえばビービーシステム様が開発された「ExLook」というソリューションは、いわゆるスマートフォン以外の携帯電話からExchange Onlineへのアクセスを可能にするものですが、実はもともとExchange Server向けに提供されていたものでした。こういったオンプレミスと相互運用性のある機能拡張が行えるのは、Microsoft Online Servicesならではといえます。


 SharePoint Onlineも、さまざまなデザインカスタマイズが可能で、多くの企業がそれぞれに活用してくださっています。もともとは社内におけるコラボレーションツールですが、社外とのデータのやりとりを便利かつ安全に行なうためのドキュメントレポジトリとして利用されている企業もいらっしゃいます。SharePoint Onlineには弊社のセキュリティ ソリューションである Forefront がデフォルトで適用されているためです。これは Exchange Online も同様です。


―ビジネスにおけるスマートフォンの重要性は急速に高まっていますが、Microsoft Online Servicesのスマートフォン対応はどうなっていくのでしょうか。


磯貝氏 現状でも、Exchange Onlineでのメール閲覧や、端末のリモートワイプなどが利用できます。スマートフォンは弊社のWindows Phoneのほかにも、iPhoneやBlackBerryといった端末がありますが、特に他社製端末だからといって区別することなく、対応を行なっていく方針です。事実、さきほどのリモートワイプ機能はiPhoneでも対応しています。



―現在、Microsoft Online Servicesは、マイクロソフト社が運用している海外のデータセンターで運用されているわけですが、速度や安全性の面で不安視される方も多いのではないでしょうか。


磯貝氏 クラウドということで、データを外部のデータセンターで運用しているわけですが、多くの企業でも、外部のデータセンターを借りて、ITシステムの運用をされている状況を考えれば、根本的な問題とは言えないと思います。レイテンシーに関しては、たとえばExchange OnlineとOutlookの組み合わせであればメールの送受信を非同期の通信で行えますので、実用上問題になる場面は少ないと考えています。


 データの安全性について言えば、現在、日本で提供しているMicrosoft Online Servicesは、シンガポールにプライマリ、香港にセカンダリのデータセンターが用意されており、十分な地理的冗長性を確保しています。仮にシンガポールのデータセンターが災害等でトラブルに見舞われたとしても、そこから十分に離れている香港のデータセンターは安全な可能性が高いというわけです。


 セキュリティなどの信頼性の面も万全です。業界標準のオペレーション基準に幅広く対応しているのに加えて、弊社が従来より提唱している「多層防御」を実践しています。通信やデータベースの暗号化から、データセンターの物理的なセキュリティ確保まで、さまざまな側面でのセキュリティ リスクを想定した対策を行っております。


マイクロソフト社は、米国のシカゴ、英国のダブリン、シンガポールなど、全世界で大規模なデータセンターを運用しています。ワールドワイドでこれだけのデータセンターを運用している企業は、全世界でも数社でしょう。また、マイクロソフトは世界最大級のWebメールであるHotmailなど、コンシューマー向けのクラウドサービスを15年にわたって提供し続けてきた実績があります。



■地理的冗長性のあるデータセンターロケーションや様々なセキュリティ対策を施したサーバー

Office 2010へ移行するMicrosoft Online Servicesの今後

■ドキュメントを「作る前」「作る最中」「作った後」と、一貫したコラボレーション機能とワークフローを提供するOffice 2010。ExchangeやSharePointの最新版と組み合わせることで真価を発揮する

―先日、Exchange Server 2010やSharePoint Server 2010を含むOffice 2010の発売日が発表されましたが、Microsoft Online ServicesのExchange OnlineやSharePoint Onlineは今後、どのように2010ベースに移行していくのでしょうか。


磯貝氏 今年の後半にはExchange Server 2010、SharePoint Server 2010ベースのサービスをMicrosoft Online Servicesでご提供できるかと思います。


 2010ベースのサービスにアップデートする場合は、 1 つ 1 つメールボックスを移行するといった作業は特に必要ありません。データ移行の作業などは、マイクロソフト社側で行われます。


田中氏 Exchange Server 2010とOutlook 2010は、ビジネスで使う上で非常に便利な組み合わせになります。また、SharePoint Server 2010は、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteなどのアプリケーションをブラウザー上で利用することができるOffice Web Applicationと連携しており、もちろん、Microsoft Online Servicesでもこの機能が提供される予定です。


磯貝氏 今年後半に2010ベースのサービスが提供されても、すべてのユーザーが強制的に新バージョンのサービスに移行される訳ではありません。1年間の移行猶予期間があるため、ユーザー様の都合が良いタイミングで新バージョンのシステムに移行していただければ結構です。もちろん、新バージョンのテスト環境も用意するため、テスト環境でいろいろなテストをしていただければと思います。


田中氏 Office 2010の担当としては、Office 2010は今までのOfficeソフトよりも使いやすくなっているため、一度でも使っていただければOffice 2010の良さが判っていただけると思います。Microsoft Online Servicesは、新しいOffice環境を試してもらうにはぴったりの環境だと思います。


 Microsoft Online Servicesを2010ベースにアップデートしたとしても、 クライアント側はOffice 2007であれば動作しますし、Microsoft Online Services をとりあえず2010ベースにアップデートしておき、クライアントは徐々に入れ替えていくというステップを踏むこともできます。Office担当としては、Exchange Server 2010やSharePoint Server 2010の機能を最大限に活かすにはOffice 2010がぴったりだと考えているので、Microsoft Online Servicesのアップデートを機会にクライアントもOffice 2010ベースに入れ替えていただけるものと確信しています。



―今後、Microsoft Online Servicesには新しいサービスが追加される可能性はありますか?


磯貝氏 Microsoft Online Servicesで提供しているコミュニケーションサービスのOffice Communications OnlineもOffice Communication Server 2010ベースに移行していきます。これ以外に新しいサービスをMicrosoft Online Servicesに追加していく予定は、現時点で特にありません。ただ、Microsoft Online Servicesの機能アップしていくことは、どんどん行っていきます。先日のメール容量拡大もそうです。例えば、ドキュメントやメールが外部に流れないように保護するIRM(Information Rights Management) などは、オンプレミスのExchange ServerやSharePoint Serverでは提供されていますが、Microsoft Online Servicesでは提供されていません。こういった機能は、将来的に提供していきたいと考えています。


―最後に、クラウド サービスに興味を持たれているユーザー様に。


磯貝氏 マイクロソフト社は、ITを通じて「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を最大限に引き出す支援をすること」というミッションを持っています。そのためには、より高度で最新の機能セットを手軽に利用できる環境が必要であり、マイクロソフト社がクラウドを提供する理由もそこにあります。生活や仕事における便利さ、手軽さを実現するための手段として、Microsoft Online Servicesをはじめとするクラウドサービスを利用してほしいですね。


―そうですね。Microsoft Online Servicesでは、30日間利用できるトライアルサービスや体験サイトを用意されていますから、それを使ってユーザーがMicrosoft Online Servicesの便利さ、管理の簡単さといったことを体験すれば、クラウドの利点が実感できるのではないかと思います。本日はどうもありがとうございました。


(山本雅史)

「Business Productivity Online Suite(BPOS)」は、今回紹介したExchange Onlineのほか、SharePoint Online、Office Communications Online、Office Live Meetingの4 サービスを包含する統合コミュニケーション & コラボレーション サービスです。

Microsoft Online ServicesのWebページから、実際にサービスを無料トライアルすることができます。無料トライアルサービスには、手続きなしですぐに体験できる「体験サイト」と、専用の管理サイトと記憶域を利用できる「30 日間無料トライアル」の 2 つの方法があります。

体験サイトの利点

30日間無料トライアルの利点

トライアルの詳しい手順などはリンク先の手順書などをご覧ください。

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