ゲームで!映画で!!マルチメディアに効く!! Super+ Resolution 実戦投入!!
 この液晶モニターマニアックスの前回は、LGエレクトロニクスの液晶モニター「E50VR」シリーズに搭載されている「超解像技術」についての、具体的な仕組みやアルゴリズムについての解説を行った。

 今回は、E50VRの実機に様々な機器を接続し、この超解像技術を活用して表した映像に対するインプレッションをお届けする。

超解像を有効にしてもフレーム表示遅延がないE50VR

 液晶モニター製品において、液晶パネルの解像度よりも低い解像度の映像が入力された時には、その映像を液晶パネル解像度に拡大方向への解像度変換を行ってから表示する。一般的にはこの処理に際しては、液晶パネルの解像度を基準にして、入力映像解像度に対しての多点読み出し(マルチサンプル)を行い、適当なフィルタ関数を用いて最終的な描画画素色を算出する。

 これに対し、超解像技術とは、多点サンプルをするところまでは同じだが、「入力された映像は、実はもっと高解像度な映像だったはず」という仮定の下に、失われてしまった解像度情報を推測して復元しようとする「知能」が介入する。この知能の部分が各社の独自アルゴリズムだったり、各社が開発した知識モデルベースの非線形フィルタだったりする。


E2350VRは、1920×1080ドットのフルHD23インチ液晶パネルを採用したLEDバックライトモニターだ

E2350VRとPS3をHDMIで接続して試した

 LGエレクトロニクスのE50VRに採用された超解像技術のアルゴリズムについては、前回記事を参照して欲しいが、特徴的なのは、超解像技術を有効にしても、基本的に表示遅延が起きない…という点だ。なので、ゲームモニターとして利用する際にも積極的に超解像技術を活用していける…というのが強みになる。

第1回:実機レビュー編 第2回:Super+ Resolution 技術解説編
 E50VRシリーズには23インチモデルと22インチモデルの2タイプがあるが、共に解像度は1920×1080ドットのフルHD解像度液晶パネルを採用している。E50VRは1920×1080ドット映像に対しても超解像技術を適用できるのだが、やはり、最も効果が高いのは、この解像度未満の映像を入力したときだ。

 ということで、オリジナルフレームが720p解像度でレンダリングされている「スーパーストリートファイターIV」を実際にE50VRに接続し、超解像技術をオン/オフして、見た目の違いを調べてみた。


E50VRをゲームで試す!

 E50VRでは、超解像技術は「SUPER+RESOLUTION」という機能名で与えられ、「オフ」「弱」「中」「強」「デモ」という5モードを選択できるようになっている。オフは超解像技術なし、弱中強は超解像技術適用の強さ、デモは画面左半分をオフ、右半分を強設定にした比較モードとなっている。

 「スーパーストリートファイターIV」のレンダリング解像度は1280×720ドット程度(筆者調べ)なので、超解像オフ時は、前述したマルチサンプル式の単純な解像度変換による表示になる。

 オフのままでも実用上、問題はないのだが、超解像オンにすると、その印象はがらりと変わるはずだ。
 
E2350VRは、1920×1080ドットのフルHD23インチ液晶パネルを採用したLEDバックライトモニターだ シネマモードを使えば、動画サイト視聴のときに便利だ
左右対称的な画面を選んでデモモードで比較してみた。左がSuper+ Resolutionなし、右がSuper+ Resolution(強)有効時だ

 
「スーパーストリートファイターIV」をHDMIで入力し、Supre+ Resolution処理を行った
オフ
オフ
 
 まず、「弱」では、ボケがすっきりし、まるでドットバイドット表示のように見え出す。解像度変換によるボケが嫌いな人はこの「弱」設定で十分満足してしまうはずだ。

 さらに彩度が若干高まり、色味が豊かになる。記憶色方向に振る…というよりは、E50VRのバックライトシステムである白色LEDが放つ光源が持つ色ダイナミックレンジをフルに活かした発色となり「見た目においしい」画調になるという感じだ。

 「中」設定になると、色ディテールが自信ありげに描き出される。「中」設定以上から超解像の超解像たる画調になっていく。

 「スーパーストリートファイターIV」の画面で言うと「Deserted Temple」ステージの床の石畳のテクスチャに仕込まれたザラザラした細かい凹凸が、オフ時ではシミのようにしか見えないが、中設定では微細凹凸として見え出してくる。カメラのフォーカス性能が高まったような見た目になるのだ。

 また、文字情報やゲージなどは輪郭がくっきりとするので見やすくなる。

 「高」設定は、中設定の画調がさらに強まり、全体としてコントラスト感が強くなる。おそらく、明部階調に伸びを与えているからだと思うが、暗部の階調がブーストされるわけではないので、黒が浮いたり、白が飛んだりはせず、階調の破綻はない。

 全体として見たときには、光沢紙に高品位印刷したポスター画のような画調になる。ゲーム画像のドット1つ1つが明確に見えるようになるので、ゲーム開発サイドが魂を込めて作り込んだ画素情報を一つも漏らすことなく堪能したいユーザーにとっては嬉しいモードとなるはず。

 強設定の副次的な効果として、輪郭部が強めに描画される関係で、視覚効果として残像が少なくなったという点も挙げておきたい。日本の液晶テレビメーカーなどでも、倍速駆動が流行る前は、輪郭強調の手法で残像低減を行っていたこともあるくらいなので、これは気のせいではない。動きが速いゲーム展開で、ボタン押しのタイミングがシビアな格闘ゲームやアクションゲームの場合、この効果は非常に高い。
 
E2350VRは、1920×1080ドットのフルHD23インチ液晶パネルを採用したLEDバックライトモニターだ
シネマモードを使えば、動画サイト視聴のときに便利だ
同じくカプコンの「バイオハザード5 オルタナティブ エディション」をプレイ。暗部のディテールがはっきりとし、臨場感もアップする。敵の気持ち悪さもアップ?

「バイオハザード5 オルタナティブ エディション」をHDMIで入力し、Super+ Resolution処理を行った
オフ
オフ
 


E50VRをDVD映画視聴で試す!

 続いて、動画の視聴を超解像をオン/オフして見比べてみた。

 ブルーレイではなく、あえてSD解像度(標準解像度)のDVDを480p出力にして視聴した。

 E50VRはフルHD映像に対しても超解像を有効にできるが、これはフルHD映像に対して掛ける…というよりは、フルHDにアップスケールされた低解像度映像に掛けるための機能だ。またブルーレイはフルHD記録されたコンテンツの解像度を加工して再びフルHDパネルで表示することの是非については賛成派と反対派に分かれての激しい議論が予想されるのであえて本稿では触れない。

 視聴に用いたのは新3部作「スターウォーズ」のDVD。なぜ、今更?といわれそうだが、フルHD時代以前の大画面☆マニアにてさんざん視聴ソフトとして用いたため、各チャプターが、どんなときにどう見えるか…というのが大体頭に入っているため。

 実際に見てみると、前項でも触れたように、映像が激しく動いても、超解像有効時には残像感が減る。補完フレームによる倍速駆動があるわけではないのに、カメラが左右にパンするシーンでは画面全体の動き方がなめらかに、クリアに流れるようになり、背景と前景の距離感がしっかりと伝わってくるため、映像に立体感が出てくる。また、ゲームの時と同様、DVD映画でも、LG超解像特有の色ダイナミックレンジの拡張とコントラスト表現の強化は効果が高く、映像の見た目がリッチになる。

 ゲーム映像では「強」設定にしてもそれほど違和感はなかったが、DVD映画では強設定にすると、DVDの記録方式特有のMPEG2ノイズまで際立ってしまうので、「中」設定までがお勧めだ。もとのSD解像度映像ではわかりにくい色ディテール表現も、「中」設定まで上げればほとんど見えるようになるので無理に「強」設定にする必要はない。

 試しにDVDプレイヤー側を1080p出力にして、アップスケールしたDVD映像をE50VRに入れて超解像機能を活用してみたが、色ダイナミックレンジの拡張、コントラスト感の強化については480p時と同様の効果が得られていたが、解像感向上については、「強」設定にしても控えめな効果となった。

 超解像の効果を、最大限に享受したければ480p接続で、味付け程度に利用したいのであれば1080p接続で。これがDVD映像を見るときの超解像利用方針になるだろうか。
 
SD解像度の映像にSuper+ Resolution処理を行った
オフ
オフ


ゲームにも映像鑑賞にも高い能力を発揮!

E2350VRは、1920×1080ドットのフルHD23インチ液晶パネルを採用したLEDバックライトモニターだ

用意されている端子はイマドキのゲームハードを接続するのに最適。ところで、E50VRのDsub15ピン端子は最近はノートPCにしか使い道がない…と思っている人。Xbox 360の接続に使える(マイクロソフト純正ケーブルが出ている)。DVI端子をPC接続に、HDMI端子をPS3に使ってしまった場合は、Xbox 360をD-sub15ピン端子で接続しよう。アナログRGB接続になるがD端子よりも高品位な高解像度接続にも対応できるし、前述したように超解像を効かせることも可能だ。筆者の実験では1280×720ドット、1360×768ドット、1920×1080ドットで正しいアスペクト比での表示が行うことができた。お勧め。

 LGエレクトロニクスのE50VRシリーズは、液晶モニタであり、テレビ製品ではない。映像入力端子として用意されているのはDVI-D端子、Dsub-15ピン端子(アナログRGB)、HDMI端子の3つ。

 いずれも、基本的にはPCを接続することを前提とした液晶モニターであり、PCモニターとしての実力は先代のE50Vシリーズ(型番にRがないモデル)で実証済みだ。この超解像機能がどう活用できるかについてこの連載で紹介してきたわけだが、ゲームモニターとして、映像観賞用モニターとして非常に高い能力があることが、一連の評価の中で分かってきた。超解像機能はDVI-D端子、HDMI端子、そしてD-sub15ピン端子(アナログRGB)にも利用できるのがユニークだ。

 元々表示遅延が少なく、そして超解像機能を活用しても表示遅延に影響がないということ。これはゲームモニターとしては嬉しいポイントだ。本稿で取り扱った「スーパーストリートファイターIV」以外にも様々なゲームプレイをしてみたが、きびきびと反応のよい表示が行えていた。超解像付きなのに、価格がけして高くないのも嬉しいポイントだ。フルHD解像度のPCモニターが欲しくて、なおかつゲーム機も高品位に表示したいというのであれば、E50VRは非常に価値が高い製品だと言える。



(トライゼット西川善司)

今回試用に使ったゲームタイトル

スーパーストリートファイターIV

ハード:PLAYSTATION®3 / Xbox 360 / ジャンル:対戦格闘 / 発売日:好評発売中 / 希望小売価格:4,990円(税込)/ CEROレーティング:B(12才以上対象)
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
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バイオハザード5 オルタナティブ エディション

ハード:PLAYSTATION®3 ジャンル:サバイバルホラー / 発売日:好評発売中 / 希望小売価格:4,990円(税込)/ CEROレーティング:D(17才以上対象)
(C)CAPCOM CO., LTD. 2009, 2010 ALL RIGHTS RESERVED.
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