シャープはLED電球の市場においてとてもアグレッシブだ。2009年6月には「600/400 シリーズ」を発表し、LED電球の低価格化という大きな一石を投じ、市場が一気に活性化した。さらに、調色・調光ができる「600シリーズ DL-L60AV」をもって、新しい「あかり」のあり方を体現した。

 そして2010年。年が明けて間もなく、調光器に対応した小型電球のミニクリプトン電球と全く同じ大きさの「E17口金 小型電球タイプ」と、ボール型電球の形そのままの「E26口金 ボール電球タイプ」の2種類のLED電球を発表した。ミニクリプトン電球そのものの形状や、明るいボール型LED電球で調光器に対応したものは業界初となる。

 今回、既に発売されているE17小型電球タイプのものと、3月下旬に発売予定のE26ボール電球タイプのものを試用することができた。それらが小型・ボール形の白熱電球置き換えに現実的なものなのか、実使用例を交えながらその実力を探ってゆく。

 
シャープ E17小型電球タイプ 4.5W
写真左:DL-J40AL(電球色 相当)、写真右:DL-J40AN(昼白色 相当)
 
E26ボール電球タイプ 11.0W
写真左:DL-L81AL(電球色 相当)、写真右:DL-L81AN(昼白色 相当)。発売前のものなので、撮影時パッケージ入手できなかった

 前半に、既に購入が可能な小型電球タイプ4.5Wの2種類、DL-J40AL (電球色 相当) と DL-J40AN (昼白色 相当) を、後半は3月下旬に発売予定のE26ボール電球タイプ 11.0W の2種類、DL-L81AL (電球色 相当) と DL-L81AN (昼白色 相当) を紹介していこう。

モデル E17口金 小型電球タイプ 4.5W
調光器対応モデル
E26口金 ボール電球タイプ 11.0W
調光器対応モデル
品番 DL-J40AL (電球色 相当)/
DL-J40AN (昼白色 相当)
DL-L81AL (電球色 相当)/
DL-L81AN (昼白色 相当)
希望小売価格 オープンプライス オープンプライス
写真左:DL-J40AL(電球色 相当)、写真右:DL-J40AN(昼白色 相当)

 シャープのE17口金 小型電球タイプLED電球の実物を見た最初の感想は、「うわっ、ちっさい!」である。この大きさ、この形ならば手持ちのいろいろな小型器具に取り付けても違和感がないだろうな、というのが第一印象であった。

 というのも、E26口金がついた一般的な電球に対して、デザイン性を重視したコンパクトな器具、しゃれた器具ほど、小型のE17口金のついた「ミニクリプトン電球」や「ミニランプ」といった小型白熱電球が使われる。E17口金の電球形蛍光灯もあるが、取り付けた器具の見た目の印象が変わりやすく、調光器に対応しないものがほとんどなので、小型白熱電球からの置き換えにはかなりの限度があった。

 そこに、調光器対応で、最大径と全長がミニクリプトン電球と同じ、シャープのLED電球のE17口金 小型電球タイプ 4.5W調光器対応モデルの登場である。LEDならではの省電力と長寿命も備えた上で、電球色のDL-J40AL、昼白色のDL-J40AN はともに小型白熱電球の25W形相当の明るさを持つという。はたしてその実力やいかに。

 比較に用いる小型電球としては、40W形のミニクリプトン電球を選んでみた。なぜなら25W形では実使用にはちょっと物足りない明るさしか得られないうえ、40W形のものでも25W形のものと大きさ・形状が変わらないからだ。したがって、敢えて現実的な明るさを持つ40W形のものを使用している。

どちらも全く同じ大きさで、直径は35mm、高さは67mmだった。幾分LEDの発光体が黄色く透けてみえるが(右)気になるほどではない

 まずは40W形ミニクリプトン電球と並べて、シャープのE17口金 小型電球タイプの外見を比較してみると、ミニクリプトン電球と変わらない大きさであるのが一瞬でうかがえる。

 実測でも35×67mm(直径×高さ)と、ミニクリプトン電球と全く同じ。しかも、小型ながらも電球らしい形をしている。放熱部分は白色で、600シリーズのスタンダードモデルの印象をそのまま小さくしたようなデザインだ。また、発光部を覆うカバー(グローブ部)はポリカーボネイト製なのに、見た目も触感もまるでガラス製と見間違うぐらい、質の高いものだ。

 ただし、重さは異なる。ミニクリプトン電球が14gに対して、シャープのE17口金 小型電球タイプは47gと3倍以上の重さにはなる。とはいえ、45g前後の重さは、革製バンドのついた腕時計程度の重さ。この重さが器具への負担になるとは考えにくい。

 ミニクリプトン電球と大きさが変わらないE17小型電球タイプだが、小さな発光面から放たれる光の広がり方はどのようになるのだろう。

 それぞれをE17口金のソケットに取り付けて点灯すると、光源部を中心にまずまずの光の拡散の様子が伺える。さらに、ミニクリプトン電球よりも遠くまで光が届きやすい印象。ただ、ソケット方向にはそれほど光が届かない。LED電球の半分以上を放熱部が占めるため、その点はミニクリプトン電球のようなソケット回りの明るさは望めないようだ。

   
ミニクリプトン電球:電球を中心に光が球形に広がり、床面もしっかり明るい
 
DL-J40AL(電球色 相当):光源部を中心に光が球形に広がり、遠くまで光が届く印象だ。床面への光の広がりは弱い
 
DL-J40AN(昼白色 相当):光源部を中心に光が球形に広がり、遠くまで光が届く印象だ。床面への光の広がりはやはり弱い

 光の広がり方はまずまずといったところだが、肝心の明るさに話を移そう。パッケージにはともに小型白熱電球の25W形相当と控えめな表記がある。直下照度なら、電球色のものは40W形、昼白色のものは60W形の明るさが得られるというのだが。

 アームライトにそれぞれを取り付けて、高さ550mmの位置からテーブルを照らし出す。その明るさ(照度)を実測してみると、40W形のミニクリプトン電球が428lxに対して、電球色は328lx、昼白色は390lxという結果が得られた。

 直下面のほか、照らし出されたものを見渡すと、40W形の小型電球と取り替えに現実的な明るさがある。数字の差こそあれ昼白色の見た目の印象は、40W形ミニクリプトン電球と明るさの印象が変わらない。電球色はどうしても暗くなってしまう傾向がある。

 とはいえ、同社600シリーズのスタンダードモデルの電球色の明るさが、同じ条件で398lxだったことを考えると、これだけ発光面積が小さい小型電球形LED電球が、その明るさに近い結果が得られたのは正直言って驚きだった。

   
40W形ミニクリプトン電球:428lx
 
DL-J40AL(電球色 相当):328lx
 
DL-J40AN(昼白色 相当):390lx

 想像していたよりも明るく、光も広がるE17小型電球タイプのLED電球である。もちろん実際の器具に取り付けてみてもその実力は十分に発揮される。

 実例を紹介するために、3種類の小型器具を用意した。それは、セードが光を透過するもの、しないもの、さらに、電球の形が器具のデザインの印象に影響を及ぼすものだ。

 まず、セードが光を透過しないものの場合、照らし出される光の様子は、光色の違いがあるだけで、明るさや光の広がり方がミニクリプトン電球と大きく変わらない。したがって全く問題のない置き換えができる。器具からのぞくLED電球の様子も、シャープのE17小型電球タイプはミニクリプトン電球と全く同じ形状のため全く同じ印象と言える。

 
40W形ミニクリプトン電球を小型スポットライトに取り付けた様子。セードの大きさは90x120mm(直径x高さ)
 
シャープE17小型電球タイプを取り付けた様子は、ミニクリプトン電球と全く変わらない。電球色、昼白色も同じ印象だった
   
40W形ミニクリプトン電球を点灯した様子。器具の高さは35cm程度。セードは大きさは設置する向きによっては、セードの放熱のためのスリットから強い光が洩れて目を刺激する事があり、セード自体も結構熱くなる
 
DL-J40AL(電球色 相当)を点灯した様子。床面までの距離が30cm程度なので、十分に明るく光もちゃんと広がっている。セードのスリットから洩れる光は穏やかで目を刺激しない。セードは側においても熱を感じないので快適だ
 
DL-J40AN(昼白色 相当)を点灯した様子。電球色同様快適で、電球色よりも明るい印象だ

 そこで、この器具を寝室で使用したシーンを撮影した。枕元の読書灯、寝室の間接光として十分に活用できる。調光については後に触れるが、眠りを妨げないほど光を絞り込めるのも良い。好みや季節に応じて涼しげな昼白色も良いが、リラックスする場所には電球色が似合う。このような使い方なら、多少暗い電球色でも十分な明るさが望める。また、顔の側にあっても全く熱を感じない光で、アルミ製のセードも少し温まる程度。

 
DL-J40AL(電球色 相当)を取り付けた器具を寝室に設置。リラックスする空間には電球色が似合う
 
DL-J40AL(電球色 相当)を25%調光すると、眠りを妨げない常夜灯としても利用できる
 
DL-J40AN(昼白色 相当)は涼しげな白色光。夏なら寝室での活用もアリだろう
 
DL-J40AN(昼白色 相当)ももちろん調光ができる

 次は光を透過するセードのついた小型ペンダントに取り付けてみる。点灯すると、ミニクリプトン電球と同じようにセード全体にムラなく光が回り、器具のデザインの印象は全く変わらない結果が得られた。この器具はソケット部が深いため、かなり覗き込まないと電球は見えない。

 
40W形ミニクリプトン電球を小型ペンダントに取り付けた様子。セードの内径は74mmで、高さは80mm。器具全体の高さは150mmのもの
 
シャープE17小型電球タイプを取り付けた様子は、ミニクリプトン電球と全く変わらない。電球色、昼白色も同じ印象だった
   
40W形ミニクリプトン電球を点灯した様子。セード全体が明るく輝いている
 
DL-J40AL(電球色 相当)を点灯した様子。LED電球であるが、セード全体に光が回っている
 
DL-J40AN(昼白色 相当)を点灯した様子。電球色同様、セード全体に光が回っている

 この器具を食卓上の照明として活用してみる。器具とテーブルの距離は760mmになるので一灯だけではちょっと物足りない明るさであっても、2個並べると食事をするのに十分な明るさが確保できる。テーブル面の明るさは電球色で214lx、昼白色で223lxだった。目の前にあっても、器具から洩れる光はいやなグレア(眩しさ)もなく、おしゃれな雰囲気が演出できた。

 電球色は黄色っぽさが若干気になるが食事のシーンでも利用できる程度。昼白色はそれよりも明るく、若干涼しげな光色ながらも自然な色味が得られる。

 
DL-J40AL(電球色 相当)を取り付けた器具を2つ並べて食卓の上で点灯した様子。食事のシーンにも十分な明るさが得られた
 
DL-J40AN(昼白色 相当)は電球色よりも明るく、自然な白色光が楽しめる

 最後は、電球の形が器具の全体のデザインの印象に影響を及ぼすタイプの器具。放熱部の影響で、背の低い半透明のセードには十分な光は回らない。しかし、LED電球の大きさ形状から、器具のもつ全体の雰囲気は保持したまま。比較しなければ、このような器具への取り付けも、「アリ」ではないだろうか。

 
セードの高さが電球よりも低く、電球の形もデザインに含まれる小型照明器具。ミニクリプトン電球の光がセード全体を輝かせている
 
ソケット付近が明るくならないLED電球はセードが十分に明るくならない。しかし、LED電球の形がミニクリプトン電球と変わらないので、それほどの違和感がない
 
DL-J40AL(電球色 相当)2個を取り付けた器具の様子。フロアライトを模したデザイン(高さ55cm)だが、全体的なバランスは崩れていない
 
DL-J40AN(昼白色 相当)2個を取り付けた器具の様子。昼白色はまた違った雰囲気が楽しめる

 熱をほとんど感じないLED電球なので、こちらは観葉植物を照らし出すアクセント照明として活用する。どちらの光色もとても現実的で良い印象だ。さらに調光すれば、雰囲気のある常夜灯としても活用できる。

 
DL-J40AL(電球色 相当)を取り付けたものは、暖かな雰囲気になる。部屋のアクセント照明として利用するのも良いだろう。熱を帯びない光なので、熱に弱いデリケートな観葉植物の側においても大丈夫
 
DL-J40AL(電球色 相当)を調光した様子
 
DL-J40AN(昼白色 相当)はさわやかな白色で、植物の色をより引き立ててくれるだろう
 
DL-J40AN(昼白色 相当)を調光した様子。常夜灯にもいいだろう

 以上3種類の器具に取り付けてみたが、どれとも相性が良く、実使用に向いている。とはいえ、今回用意した器具はどれもセードに対して電球を垂直に取り付けるタイプのもの。電球を横向きや斜めに取り付けるダウンライトなど、器具によっては適正な明るさが得られない場合も考えられる。購入する前に器具を確認する必要はあるだろう。

 既に冒頭でも触れ、利用例としても調光しているところは紹介済みであるが、シャープのE17小型電球タイプは調光器に対応している。100%の全灯からほのかな明るさまで自由自在に調光ができる。

 しかも、このLED電球は、今回テストした調光器との相性がよく忠実にシンクロした調光が実現している。というのも、それまでにも調光器対応のLED電球はあったのだが、調光器の目盛りの半分あたりでLEDが消えてしまうものがほとんど。しかし、この小型電球タイプのLED電球は25%あたりまで消えないので、白熱電球と同じ感覚で調光ができるのがとても新しく感じる。

       
ミニクリプトン電球:100%(全灯)
 
75%調光
 
50%調光
 
25%調光
 
ミニクリプトン電球は、最大限に光を絞り込んでもほのかに光っている
       
DL-J40AL(電球色 相当):100%(全灯)
 
75%調光
 
50%調光
 
25%調光でほのかな明るさになる
 
12.5%調光の様子。25%以下になると完全に消えてしまう
       
DL-J40AN(昼白色 相当):100%(全灯)
 
75%調光
 
50%調光
 
25%調光でほのかな明るさになる
 
12.5%調光の様子。25%以下になると完全に消えてしまう
器具の上にミニクリプトン電球、下にはDL-J40ALを同時に取り付け、40%弱に調光した様子。ミニクリプトン電球はかなり赤っぽくなるが、LED電球の色味は変わらない

 スムーズで快適な調光はとても快適だ。天井付けの器具で、壁面スイッチに調光器が組み込まれたものへはもちろん、手持ちの器具に新たに市販のコントローラーを組み合わせ、器具をリニューアルすれば、活用の範囲がさらに広がるだろう。付け加えて、LED電球は調光をしても白熱電球のように赤くならないのも一つの特徴だ。

 LED電球の大きな特徴として、省電力・長寿命が第一に挙げられる。シャープのE17小型電球タイプを導入することによって、どのぐらいの年間維持費が節約できるのだろうか。

 まずそれぞれの電球をワットチェッカーにつなぎ、消費電力を計測した。パッケージには4.5Wと記されているものの、DL-J40AL (電球色 相当)、DL-J40AN (昼白色 相当)とも実測値はたったの3W。40W形ミニクリプトン電球は、小さいながらも全灯で35Wになるため、11.7倍の電力を消費する。電気代だけなら確実にお財布に優しいといえるだろう。

   
40W形ミニクリプトン電球:35W
 
DL-J40AL(電球色 相当):3W
 
DL-J40AN(昼白色 相当):3W
   
ミニクリプトン電球を最大限に調光しても、3W消費している
 
DL-J40AL(電球色 相当)は、調光40%を下回った時点で「0W」と、測定不能になる
 
DL-J40AN(昼白色 相当)も、調光40%を下回った時点で「0W」と、測定不能になる

 以上の実測値を元に1日8時間使用すると仮定し、1年間の維持費を試算した。シャープのE17小型電球タイプと電球購入代と1年間の電気代の合計は4,083円。この金額は、40W形ミニクリプトン電球を1.6年使い続けた維持費(4,109円)とほぼ同じなので、その時点で元が取れる計算となる。

 その間、ミニクリプトン電球ならば2.3個以上の面倒な電球の取り替えが必要であるが、シャープのE17小型電球タイプはその先7年近くも使い続けられる。調光する使い方をするなら、そのぶん電気代も安くなるため、年間維持費もそれに伴って低く抑えることができる。

 ところで、ここまで「電球の大きさ、調光器対応」と言う点から、小型電球形蛍光灯をほとんど引き合いに出していなかった。ここにきていきなり小型電球形蛍光灯の話をするのは恐縮するのだが、ここで敢えて記しておきたい。

 というのも、ある40W形相当の明るさを持つE17口金の小型電球形蛍光灯の年間維持費は748円。一方、シャープのE17小型電球タイプのそれは639円。つまり、小型電球形蛍光灯と年間維持費を比較しても、わずかではあるがシャープのE17小型電球タイプに軍配が上がってしまうからなのだ。

 小型電球の置き換えにはもちろん、もし小型電球形蛍光灯に満足していたとしても、それが切れたなら、シャープのE17小型電球タイプの置き換えをお薦めする。電球の大きさ、スムーズな調光のほか、点灯した瞬間から電球本来の明るさが得られ、頻繁な点滅にも強いことは、蛍光灯では得にくい利点だからだ。

電球 小型LED電球
DL-J40AL/AN
ミニクリプトン電球 40W形 小型電球形蛍光灯40W形
定格寿命 25,000 時間 2,000 時間 8,000 時間
実測消費電力 3 W 35 W 7 W
1日8時間使用した場合の寿命日数 3125日
(約8年6ヶ月以上)
250 日
(約8ヶ月)
1000 日
(約2年9ヶ月)
1年間で必要な電球個数
(365日×8時間÷定格寿命)
0.117 個 1.46 個 0.365 個
1年間の電球代
(1年間で必要な電球個数x購入価格)
456 円 350 円 310 円
1年間の電気代
(365日x8時間使用)
183 円 2,218 円 438 円
1年間の維持費
(1年間の電球代+電気代)
639 円 2,568 円 748 円
※電気料金の表記については、1kwhあたり22円で計算しております。 電気料金の表記について

 ここで注意して欲しいのは、上記の比較表にも記しているが、シャープのE17小型電球タイプLED電球の定格寿命は、E26タイプ(40,000時間)よりも短い25,000時間という点。ミニクリプトン電球の12.5倍、小型電球形蛍光灯の3.125倍長持ちであることには間違いないのだが、E26口金タイプほどではない、ということをお忘れなく。

写真左:DL-L81AL(電球色 相当)、写真右:DL-L81AN(昼白色 相当)

 次に、E26口金 ボール電球タイプを紹介しよう。目を惹くのはその美しいまんまるなフォルム。発光部分を覆うガラス製のグローブが、球体全体の2/3を占めている。残り1/3の放熱部は白色で、多少器具から覗いてもあまり違和感のない仕上げになっている。口金と電球の間に突起もないので、ボール型白熱電球からの置き換えが容易であろうと簡単に想像がつく。

 シャープによるとこのボール型LED電球は、明るくムラの少ない面発光で、業界最高クラスの明るさを実現するとのことだ(昼白色相当)。電球色のDL-L81ALが40W形相当、昼白色のDL-L81AN は60W形相当の明るさが得られるという。しかも、ボール型LED電球では初の調光器対応型だ。さて、どのような結果が得られるのだろうか。

 比較に用いる電球として、60W形の明るさのボール型の白熱電球と、電球形蛍光灯の電球色と昼白色の3つを用意した。

写真左:ボール型白熱電球、写真中央:シャープ26口金ボールタイプ、写真右:ボール電球形蛍光灯。大きさの印象はほとんど変わらない

 まずはボール型白熱電球、シャープのE26口金 ボール型電球タイプ、ボール電球形蛍光灯の順にならべ、その外見を比較してみよう。

 それぞれを実測してみると、ボール型白熱電球は高さ95x130mm(直径×高さ)、シャープのボール型電球タイプは95x127mm(直径×高さ)。直径は同等、高さは白熱電球より-5mmと言う結果なので、ボール型白熱電球と置き換えても全く違和感のない範囲だろう。ちなみに、ボール電球型蛍光灯の大きさは92×128mm(直径×高さ)になる。

 ただし、重さは大きく異なる。ボール型白熱電球は55g、ボール電球形蛍光灯が110gに対して、電球色のDL-L81AL、DL-L81ANともに245gと、白熱電球の4倍以上の重さになってしまう。ボール電球形蛍光灯の2倍を超える重さ。この重さは電球形LED電球の中でも特に重い部類になってしまうので、取り付ける器具を選ぶかもしれない。

 さて、大きな発光面をもつボール型電球タイプだが、その光の広がり方はどのようになるのだろう。

 それぞれをソケットに取り付けて点灯し比較すると、ボールLED電球の光は上方向、横方向へとくまなく広がっている。ボール型白熱電球、ボール電球形蛍光灯に全くひけをとらない上、さらに遠くへ光が届いている印象だ。特に昼白色の光の広がり方は力強い。ただし、放熱部分が小さいのだが、ソケット付近はそれほど明るくならない。

ボール型白熱電球:電球を中心に光が球形に広がり、床面もしっかり明るい
 
DL-L81AL(電球色 相当):光源部を中心に光が球形に広がり、遠くまで光が届く印象だ。床面への光の広がりは弱い
 
ボール電球形蛍光灯(電球色 相当):ボール型白熱電球に良く似ているが、床面への光の広がりは若干弱い
 
DL-L81AN(昼白色 相当):光源部を中心に光が球形に広がり、遠くまで光が届く印象だ。床面への光の広がりはやはり弱いが全体的に明るい印象だ
 
ボール電球形蛍光灯(昼白色 相当):ボール型白熱電球に良く似ているが、床面への光の広がりは若干弱い

 光の広がり方はとても穏やかで、良い結果が得られた。次はその明るさに話を進めよう。アームライトにそれぞれを取り付けて、E17口金のときと同じように、高さ550mmの位置からテーブル面を照らし出す。

 その明るさ(照度)を実測してみると、とにかく驚きの結果が得られた。昼白色のDL-L81ANはなんと990lx、電球色のDL-L81ALでも660lxという明るさが得られた。60W形のボール型白熱電球の明るさ(照度)は633lxだったことから、どちらも白熱電球よりも明るい結果が得られたのだ。ボール電球形蛍光灯の電球色は565lx、昼白色でさえ592lxという結果からも、シャープのボール電球型の明るさが際立つ。

 シャープのニュースリリースでは控えめな明るさを記していたが、この結果を見る限りでは、直下照度では間違いなくどちらも60W形のボール型白熱電球よりも明るいと断言できる。もちろんLED電球なので、点灯した瞬間からビシッとした明るさが望めるのも嬉しい。

60W形ボール型白熱電球:633lx
 
DL-L81AL(電球色 相当):660lx。白熱電球よりも明るい
 
ボール電球形蛍光灯(電球色 相当):565lx
 
DL-L81AN(昼白色 相当):990lx。白熱電球よりも大幅に明るい
 
ボール電球形蛍光灯(昼白色 相当):592lx

 ちなみにこの計測中、電球の重みでアームライトが傾いたりすることはなかった。ボール型電球の使い方の多くは、ペンダントやダウンライト。それを考えると、電球の重さはあまり気にしなくても良さそうだ。

 直下照度では、電球色、昼白色とも60W形のボール型白熱電球よりも明るい結果から、ボール型白熱電球はもとより、ボール電球形蛍光灯を使った器具への置き換えとして、シャープのボール電球タイプは十分に力を発揮できるだろう。

 ボール型電球を利用する器具は、球体の電球という特徴を活かしたデザインのものが多い。つまり、電球そのものが丸見えになるものが一般的。その実使用例を紹介するために用意した器具は光を透過しないアルミ製のもの。しかもセードの深さが10cmにも満たない電球がハッキリと見える一灯型のペンダントだ。

   
ボール型白熱電球を器具に取り付けた様子。ペンダントのセードの大きさは直径450mm、シェードだけの高さは80mm、器具全体の高さは200mmのもの
 
ボール電球形蛍光灯を取り付けた様子。安定器の部分は全く見えない
 
ボールLED電球は放熱部分が少々覗いてしまうが、気になるほどではないだろう

 今回紹介しているボール電球タイプのLED電球の放熱部分は、それまでのE26口金LED電球よりも高さが30mmと抑えられている。そのため、用意した薄いセードの器具に取り付けても、バランスはほとんど崩れない。この結果から、他の器具へも違和感なく取り付けられるのではないだろうか。

 実際に点灯してみると、色むら、明るさのムラのない面発光が実現されており、柔らかな光を放つボール型白熱電球と全く遜色ない光り方が得られた。ただ、器具の上部にはデザインと放熱を兼ねたスリットがあるのだが、そこから洩れる光は白熱電球や蛍光灯よりもどうしても暗くなってしまった。

ボール型白熱電球を点灯した様子。セード上部のスリットにあるフィンの反射光がセードの上面も照らし出している
 
ボール電球形蛍光灯(電球色 相当)を点灯した様子。フィンの反射光がセードの上面をある程度照らし出す
 
DL-L81AL(電球色 相当)を点灯した様子。セード上部からはあまり光が出てこないが比較しなければ問題ないレベル。電球はグローブ全体が均一に光り、ボール型電球の印象と変わらない
 
ボール電球形蛍光灯(昼白色 相当)を点灯した様子。フィンの反射光がセードの上面をある程度照らし出す
 
DL-L81AN(昼白色 相当)を点灯した様子。セード上部からはあまり光が出てこないが比較しなければ問題ないレベル。電球はグローブ全体が均一に光り、ボール型電球の印象と変わらない

 この器具を食卓上の照明として活用してみる。器具とテーブルの距離は730mmあるのだが、一灯だけで十分に明るい。テーブル面の明るさは電球色で263lx、昼白色で392lxとしっかりした明るさが得られた。

 
DL-L81AL(電球色 相当)を取り付けたペンダントを食卓の上で点灯した様子。テーブルの周りにも明るく光が広がって暖かな雰囲気が演出できる
 
DL-L81AN(昼白色 相当)を取り付けたペンダントを食卓の上で点灯した様子。電球色よりも明るく、自然な白色光だ

 電球色は多少黄色が強調される傾向があるが、とても明るく感じるので、食事のシーンでも気にならない程度。また、テーブルの周りも十分に明るい光が広がっている。昼白色は電球色よりも明るく、自然な白色光が楽しめる。

 ところで、このボール型LED電球の光はとても穏やかで、それによってできる影もマイルド。LEDの光は直進性が強いため、強い影がどうしても出やすい傾向があるのだが、LED電球らしからぬ、ボール型白熱電球のような柔らかな光が望める。全体照明で使用しても、極端な影ができにくいので柔らかな雰囲気が演出できるだろう。

 以上の結果から、ペンダントライトや多灯タイプの器具など、全体照明を目的とした器具へのとりつけも十分に応えられるだろう。

 
写真左:ボール型白熱電球は柔らかい光を放つが、フィラメント部分は結構わかる上、フィラメントを支えるパーツが映し出されている。写真右:ボール型LED電球は、LED電球でありながら光のムラがほとんど感じられない
 
写真左:ボール型LED電球が落す影。柔らかな光なので強い影が出にくい。写真右:光の拡散の工夫のないLEDは強い影が発生してしまう

 既に冒頭でも触れているが、ボール型LED電球でありながら、調光器に対応している。しかも、100%の全灯からほのかな明るさまで、調光器の動きとほぼリンクして、無段階に調光できるのだ。ここでは、調光器対応のボール電球形蛍光灯は発売されていないので割愛する。

 先に紹介したE17口金のものと同様に、ボール型LED電球も、調光器の動きにかなり忠実にシンクロした調光が実現している。調光25%あたりまで、消えることなくスムーズな調光ができた。今回の実験では調光して明るさを抑えても、白熱電球のように赤くならず、グローブ面はほとんど光のムラができない。

       
ボール型白熱電球:100%(全灯)
 
75%調光
 
50%調光
 
25%調光
 
ボール型白熱電球は、最大限に光を絞り込んでもほのかに光っている
       
DL-L81AL(電球色 相当):100%(全灯)
 
75%調光
 
50%調光
 
25%調光でほのかな明るさになる
 
12.5%調光の様子。25%以下になると完全に消えてしまう
       
DL-L81AN(昼白色 相当):100%(全灯)
 
75%調光
 
50%調光
 
25%調光でほのかな明るさになる
 
12.5%調光の様子。25%以下になると完全に消えてしまう

 先に述べてしまうが、シャープのE26ボール電球タイプの消費電力は11Wとなっている。とても明るいが、その分LED電球の中でも消費電力は高い。省電力であることには間違いないが、年間維持費がどのぐらい影響を受けるのか気になるところだ。実際にそれぞれの消費電力を計測し、年間維持費を試算してみよう。

 電球色のDL-L81AL、昼白色のDL-L81ANとも実測値は10Wとリリースニュースで提示されたものより低い数値が測定された。60W形ボール白熱電球は54W、電球形蛍光灯は12~13Wと、LED電球よりも高い数値が計測された。

ボール型白熱電球:54W
 
DL-L81AL(電球色 相当):10W
 
ボール電球形蛍光灯(電球色 相当):13W
 
DL-L81AN(昼白色 相当):10W
 
ボール電球形蛍光灯(昼白色 相当):12W
ボール型白熱電球を最大限に調光しても、5W消費している
 
DL-L81AL(電球色 相当)は、調光40%を下回った時点で「0W」と、測定不能になる
 
DL-L81AN(昼白色 相当)も、調光40%を下回った時点で「0W」と、測定不能になる

 以上の実測値を元に1日8時間使用すると仮定して、1年間の維持費を試算した。シャープのE26ボール電球タイプの電球購入代(7000円とした)と、1年間の電気代の合計は7,620円。ボール電球60W形を約2年使い続けた維持費(7,694円)とほぼ同額になるので、2年ほどで元が取れ、さらにそこから11年以上使い続けられる。

 1年間の維持費は、ボール型LED電球は1,131円なので、ボール電球(3,847円)よりも3.4倍低く抑えられる。

 ボール電球形蛍光灯は1,231円なので大きく違わないかもしれないが、シャープのE26ボール電球タイプはなんといっても調光器対応。しかも点灯した瞬間から明るく、頻繁な点滅にも強い。それらの利点はボール電球形蛍光灯には全く備わっていないものだ。

 ボール型白熱電球から置き換えをするなら、確実にお得だ。ボール電球形蛍光灯に満足していたとしても、蛍光灯では望めない利点が多いので、使えなくなった時点でシャープのE26口金ボール電球タイプの置き換えがお薦めできる。

電球 E26口金ボール
DL-L81AL/AN
ボール電球 60W形 小型電球形蛍光灯40W形
定格寿命 40,000 時間 2,000 時間 6,000 時間
実測消費電力 10 W 54 W 13 W
1日8時間使用した場合の寿命日数 5000日
(約13年8ヶ月)
250 日
(約8ヶ月)
750 日
(約2年1ヶ月弱)
1年間で必要な電球個数
(365日×8時間÷定格寿命)
0.073 個 1.46 個 0.486 個
1年間の電球代
(1年間で必要な電球個数x購入価格)
511 円 380 円 428 円
1年間の電気代
(365日x8時間使用)
620 円 3,468 円 803 円
1年間の維持費
(1年間の電球代+電気代)
1,131 円 3,847 円 1,231 円
※電気料金の表記については、1kwhあたり22円で計算しております。 電気料金の表記について

 どちらにも共通して言えることは、インテリア性が高く、器具の印象を損ねることなく、さまざまな器具に取り付けられる。どちらも密閉器具には対応していないのだが、電球らしい形、ヒートシンクの仕上げが細かく丁寧なので、たとえ見えてしまってもゴツゴツとした印象にはならないだろう。さらに、電球に求められる基本的な明るさは期待以上の結果が得られ、光の広がり方も良好。特にボール電球タイプの光の広がり方は、柔らかで優しい。LED特有のギラギラした感じがなく、LED電球の印象を大きく変えるあかりであった。

 確かに初期費用は高くつくのだが、どちらも2年以内には元が取れる。特に、調光器がついた器具をお使いならば、白熱電球からの買い替えを強くお薦めできる。また、細かな話しになるが、どちらも雷サージ対策が施されている。万が一、落雷による瞬間的な高電圧がかかっても決して安くはない電球が壊れる可能性が低いのは嬉しいことだ。そんな点からも、高い完成度、バランスのとれたLED電球であることには間違いないだろう。

 それにしても、E17小型電球タイプはとても小さいのに、想像した以上の明るさが得られた。そのような点からも、今後どのようなLED電球を展開してゆくのか、今から大いに楽しみである。

[Text & Photo by 藤原 大蔵]