こどもとIT

角川ドワンゴ学園、第二のN高「S高等学校」の2021年4月開校を発表

――Oculus Quest 2によるVR授業「普通科プレミアム」などニューノーマルの教育で先行

学校法人角川ドワンゴ学園は2020年10月15日、教育事業に関する発表会「The Nth DAY. N=1659」で、N高等学校(以下、N高)に続く第二の高校「S高等学校」を2021年4月に開校すると発表した。

また最新のVR技術とデバイスを活用した体験型学習を提供する「普通科プレミアム」や、通学コースの生徒がオンラインで学べる「オンライン通学コース」の設置など、新たな教育事業についても発表。“リアルとネット”を融合した22世紀を先取りする学びが紹介された。

2021年4月、茨城県つくば市に開校する「S高等学校」

茨城県つくば市に開校する第二の学校「S高等学校」

2016年4月に1,482名の生徒でスタートしたN高(本校は沖縄県うるま市)。当時は、“不登校の生徒が通うネットの高校”というイメージも強かったが、今は違う。個別最適化学習やプログラミング教育など、テクノロジーを活用した特色ある学びを実施し、2020年10月1日時点で15,803名もの生徒が通う学校へと進化した。

「The Nth DAY.(N=1659)学校法人角川ドワンゴ学園×株式会社ドワンゴ 教育事業に関する発表会」の様子
N高、生徒数の推移

そんなN高を運営する学校法人角川ドワンゴ学園(以下、角川ドワンゴ学園)は、N高に続く第二の学校として「S高等学校(以下、S高)」を2021年4月に開校すると発表。校舎は茨城県つくば市にある筑波西中学校の廃校を改修して再活用する。N高ではカリキュラムとして沖縄・伊計本校でのスクーリングを設けているが、教室と宿泊施設の受け入れ体制が2万人の定員を超えることから、他県に新しい高校を開校したという。

新しく開校するS高は、「SUPER」「SPECIAL」「SHINE」「SPECTACLE」など、さまざまな“S”を生徒一人ひとりが見つけ、自分だけの“S”を創れるように、という想いが込められている。同校には「通学コース」の生徒が通うほか、「ネットコース」の生徒が高校卒業資格を取得するためのスクーリングも行なう。またS高は、筑波大学と教育研究に関する連携協定も視野に入れながら、従来の枠組みにとらわれない子どもたちの主体性を引き出す学びをめざす。

茨城県つくば市に開校する「S高等学校」。同市に決定した理由は、県知事や市長の協力体制があったからだという
S高 校長の吉村総一郎氏。N高等学校 副校長を経て現職
S高の校歌「~夢で描けば~」を担当した人気ボカロプロデューサーの40mP氏

最新VR技術で学びに没入できる「普通科プレミアム」

S高に続く、新しい教育事業として発表されたのが、最新のVR 技術とデバイスを活用した体感型学習を提供する「普通科プレミアム」だ。

N高、S高ともに2021年4月からスタートする「普通科プレミアム」では、株式会社ドワンゴおよび同子会社の株式会社バーチャルキャスト開発・協力のもと、Oculus Quest 2(オキュラスクエスト2)を使って360度の視覚と聴覚、そして体を使って体感するVR学習プラットフォームを提供する。学習アプリ「N予備校」とのシームレスな連携が特徴で、生徒は従来の動画授業を受けながら、必要に応じてVR空間とリアルを自由に行き来することができる。

N高/S高の出願時に、VR学習と映像学習で行う「普通科プレミアム」、映像学習のみで行う「普通科スタンダード」のどちらかを選択するという。いずれも高校卒業資格を取得することができる

生徒はアバターになってVR空間上の教室で授業を受ける。VRタイムシフト機能によってほかの生徒が授業を受けたときのモーションログが残るため、ニコニコ動画のコメントのような非同期コミュニケーションを取ることができる。それによって、いつでも同じ教室で学ぶ仲間の存在を感じられ、学習継続のモチベーションを維持することが可能になるというのだ。

普段の学習環境ではつい気になってしまう生活音やスマートフォンのSNS通知なども、VR空間では集中しやすい

体験型学習では立体的な教材を動かし、歴史遺産を360度見て回れるVR教材を活用。VR 空間上のアイテムは、バーチャルキャスト社の VCI(バーチャルキャストインタラクティブ)という技術を活用し、ものさしや地球儀など、他の単元や科目でも流用できるものを創り出す。学習指導要領の変更にも臨機応変な修正で対応できるのが利点だ。

VR数学教材
地球儀や宇宙空間での天体の様子、月の満ち欠けをVRで体験

VR 空間の校舎は建築家の隈研吾氏がデザイン。「次世代に活躍する人材を育む、新しい学び舎」というコンセプトのもと、進化・成長を続ける若者たちの「学びのスパイラル」を表現した。

隈研吾氏がデザインした、VR空間の校舎“学びの塔”

VRを使った体験学習のほか、スピーカーとマイクが内蔵したOculus Quest 2の特性を生かしてオリジナルのコンテンツも用意。面接シミュレーションによる指導や、アバター制作アプリ「カスタムキャスト」を使用した生徒同士のコミュニケーションも楽しめる。

面接対策もVR空間で。現実に近い環境で実践的なコミュニケーショントレーニングが可能

グループワークを通して21世紀型スキルを身に着ける「オンライン通学コース」

コロナ禍の休校期間中は、N高の通学コースの授業もオンライン化されたそうだが、その知見を活かし、2021年4月からN高、S高において「オンライン通学コース」を開設する。「ネットコース」との違いは、通信制のスタイルで学ぶネットコースに対し、オンライン通学コースは、教室での学びと、教室外の学びを混ぜたハイブリッド型。時間割も決まっている。

オンライン通学コースでは、少人数でのグループワークをベースに、主体性や行動力、課題解決力など社会で活躍するスキルを身につける学びを提供する。生徒は将来のビジョンや日々の学びをシートにまとめ、それを担任の教師と共有しながら個人面談によるコーチングを受けることができる。

少人数でのグループワークを重視した「オンライン通学コース」

通学スタイルは、「ベーシッククラス(週3日)」と「ライトクラス(週1日)」から選べ、21世紀型スキル学習・PBL・英語・プログラミングといった、社会で他者とよりよく生きるための力を身に着けていく。また、クラス授業がない日はZoomやSlackを利用した「ネット学習室」でいつでも先生やTAに学習の疑問や勉強のやり方を質問・相談することが可能となっている。

ベーシッククラスの時間割例

高校範囲を超えた学びを開放する「インターハイスクールコミュニティー」

高度な領域の学びに関心のある全国の中高生に向けて、2021年4月に「インターハイスクールコミュニティー(以下、IHC)」を開設。IHCはN高、S高の生徒だけでなく、学校や地域の枠を超えて参加できるコミュニティーだ。その分野の専門家や第一線で活躍する有識者を講師に招き、オンラインとリアルの良さを取り入れた活動を行なう。

開設当初はまず、「起業部」「数理コミュニティー」「研究部」を設立。起業部では、起業家をめざす中高生に、ビジネスモデルや競合戦略の構築、資金調達や登記手続きをレクチャーする。数理コミュニティーは、東京工業大学の加藤文元教授をはじめとした研究者や大学院生とのリアルな交流を通して、より高度な学問領域への学びを楽しみながら進めていく。研究部は、さまざまなジャンルで学術的な研究活動を行なっている中高生のためのコミュニティー。大学生による研究のサポートや研究活動費の提供も予定しており、学術論文の書き方も指導していく。

インターハイスクールコミュニティーは、N高、S高の生徒だけでなく、全国の中高生が参加できる

角川ドワンゴ学園では2021年4月入学第6期生の募集を開始し、資料請求や出願受付をスタート。また、2020年10月31日(土)23時59分までに資料請求を申し込み、S高への入学を決めた方の中から抽選で10名にS高制服をプレゼントするキャンペーンも実施している。

S高の開校を記念して、制服プレゼントキャンペーンを実施

ICT技術を用いて、学ぶ意欲がある学生に実社会で役立つ学びを提供する角川ドワンゴ学園。EdTech業界のリーディングカンパニーをめざす同学園の新しいフェーズに、熱い視線を送りたい。

本多 恵

フリーライター/編集者。コンシューマーやゲームアプリを中心とした雑誌・WEB、育児系メディアでの執筆経験を持つ。プライベートでは6歳と2歳の男の子を育てるママ。来年小学校入学を控えた子を持つ母として、親目線&ゲーマー視点で教育ICTやeスポーツの分野に取り組んでいく。