ぼくらの自由研究室

蚊がごっそり取れる「蚊取り器」は自作できるか?

製作費4,000円で感銘を受けた本家を超えられるか!?

「自由研究室」というコーナーだけに、世の中の不思議をトンチとアイディアで研究していく企画だ(笑)。第1回目のテーマは、感銘を受けた「シャープの蚊取り空清」。コレを安く自作できないか? という研究。空気清浄機の部分はフィルターなど、入手しなければならないものが多いので「蚊取り」に絞ってみよう。

でっきるかな? でっきるかな? はてはて? ほほー!

感銘を受けたシャープの「蚊取り空清」をパクった……、いやインスパイアした蚊取り器は、自作できるのか?

構造はいたって簡単。まず小さな窓をつけた箱の中に、紫外線が出るLEDを光らせる。これで小窓に蚊などの羽虫ををおびき寄せ、箱につけたファンで一気に吸引。そして、中に仕込んだ粘着テープで捕獲しようというものだ。

10×4cmぐらいの穴が開いた黒いボディ
その中に紫外線を出すLEDが仕込まれている
中のファンに吸い込まれた蚊を粘着テープで捕獲できる

工作も簡単にできそうだし、時期的に小学生の夏休みの自由研究&工作を一度にできて一石二鳥! ということで、記念すべき第1回は「ダンボール蚊取り器」を作ることにしよう!

材料はダンボールと蛍光灯、パソコンのファンとACアダプター

材料選びのポイントは、蛍光灯とファン。キモも財布も小さい筆者なので、今回は超小型の蚊取り器を作ることにして、蛍光灯は長さ15cm程度の4Wのものを、ファンはパソコン用の12Vのものを使った。

主な材料はこんな感じ。あとは家にある廃物を利用

一番入手が難しいのは4Wの蛍光灯本体だが、近所のホームセンターの照明コーナーなどを探してみてほしい。見つからない場合は、東急ハンズやWeb通販などでも購入できる。価格はだいたい2,000円ぐらい。なお、本体と一緒に購入したいのは、蛍光灯の一種である「ブラックライト」。価格は1本400円ぐらいだ。

お店の看板などでたまに見かけるが、特殊インクで書いた文字などにブラックライトを当てると、光って浮き上がって見えるというもの。このブラックライトは、実は紫外線を盛大に出すので、小さなLEDをチマチマつけるより、多くの虫をおびき寄せられるはず。

なぜなら、ブラックライトは「電撃殺虫器」と呼ばれる、コンビニの軒先で薄紫に光って、虫をバチッと感電死させる機器として使われている。

これが電撃殺虫器。ブラックライトで虫をおびき寄せ、まわりについている高電圧回路で感電死させる

虫が感電するのは、ライトのまわりに仕込まれている高電圧回路なので、ブラックライト自体は感電しないから安心してほしい。もし、ブラックライトが入手できない場合は、普通の蛍光灯でもいい。夏場に虫が集まってくる光景でお馴染みだが、蛍光灯の光りも少し紫外線の成分が含まれているので、虫をおびき出しやすい。

逆に虫がさっぱり寄ってこないのは、白熱電球やLEDライト。これらは紫外線の成分が少ないので、蚊取りには適さないのでご注意を。

普通の昼光色の蛍光灯は、白い光を出す
ブラックライトは、青~紫外線にかけての光を出す。この写真は、同じ条件で撮影したもの

なお、蛍光灯本体は、LEDよりも発熱量が多い。蚊の習性のひとつに、人間の体温のようにほのかに暖かい部分に集まるというものがあるので、ブラックライトはLEDよりも蚊を集めるのに優位といえるだろう。

今回は4Wのブラックライトを使ったが(規格として6Wや8Wもあるが、あまり見かけない)、勉強机のスタンドライトに使われる長さ30cmほどの10Wタイプもある。さらに多くの蚊をおびき寄せるために10Wのブラックライトを使う場合は、大きな箱が必要になるので、それに合わせてファンも大型化するといい。おすすめのファンはホームセンターで手に入る、ガス台用の換気扇だ。だいたい3,000~4,000円で購入でき、100Vの電源で駆動できるのでかなり強力だ。そのぶん、めっちゃ運転音がうるさいため、寝るときに蚊取り器が使えないという本末転倒な惨事に見舞われないように注意してほしい(笑)。

10Wの蛍光灯だといきなり大型になるので注意

今回使ったファンは、パソコン用のファン。サイズは一般的な12cmで、風量(CFMの数値が大きいもの)が多いやつがベスト。最近のパソコン用ファンは、風量より静かさを優先するものが多いので、ファン選びには注意してほしい。

ブラックライトとファンの大きさが決まれば、箱のサイズもおのずと決まる。最後にスーパーなどで、適当なサイズのダンボール箱をもらってこよう。ポイントは、飲み物や野菜などの重い商品が入っている箱がいい。これらの箱は、重量物に耐えられるように、普通のダンボールより固い紙が使われている。

ダンボールで自由工作するぜ! とはいえ原理模型だぜ!

ダンボールとカッターで作る蚊取り器とは言えど、作るものはおもちゃじゃなくて、理論に基づいた機械の製作だ。カッコよく言えば、原理模型ってヤツ。材料さえ揃えば、作るのにはそんなに時間もかからないので、みんなでレッツ・トライ! あ、ラッカースプレーが乾くのに時間かかるけど……。

①ファンと蚊の玄関の小窓を開ける

蛍光灯とファン、そして箱が揃ったら、仮組みして部品を配置する。ポイントは蚊の玄関と、空気を排出するファンの間に、蚊を捕獲する空間を設けるところ。つまり空気の入口と捕獲経路と出口のエアフローを考えよう。

なお、蚊の玄関は、シャープの蚊取り空清を真似て、10cm×4cmの穴とした。

蚊をお迎えする玄関穴。シャープの蚊取り空清をパク……、いやオマージュして10cm×4cmとした
パソコン用の12cmファンが取り付けられる穴を開ける。穴の下書きは、ファンを当てて穴の大きさを鉛筆でなぞりがき。設計図は一切起こさずに工作だ!

②蚊が大好きな黒にペイント

穴を開け終わったら、黒のラッカースプレーで箱全体を塗る。ニオイが気になる人は水性を、速乾性なら油性がおすすめ。

箱の中もしっかり黒く塗る。何度か重ね塗りして真っ黒にするので、スプレーは300ml缶以上がおすすめ
ガムテープを剥がしたところは色が変わるけどご愛嬌(笑)。しっかり作るなら、つや消しブラックで塗って目立たなくする手もあり

③蛍光灯の組み立て

箱の中に蛍光灯やファンを入れてあらためて仮組み。ちょっとファンの厚みがあって、中に入れられそうにないので、箱の外側につけることにした。

蛍光灯やファンを実際に入れて、きちんと収納できるかチェック
蛍光灯は必要に応じてコンセントなどを配線する

④ファンの組み立て

パソコン用のファンを使う場合は、ACアダプターなどを接続して、ファンを回転できるようにする。ファンから3本の電線が出ている場合は、赤(たまに黄色の場合も)がプラスで、黒がマイナス。白やほかの色の線は、回転数検出用なので使わない。

ファン駆動用のACアダプターは、使わなくなったパソコンの周辺機器用のものを代用する。ACアダプターの出力に、出力12V 0.5Aという表記が必ずある。電圧は12V(それ以下でもそれ以上でもダメ)、電流は0.5A以上のものを探す。

ACアダプターとファンの電線は、それぞれのビニール被覆を剥いて、ファンが回るように電線を接続。よじって接続したあとに、ビニールテープで絶縁すればOK。プラス/マイナスが間違っていると、ファンが回転しないので、一瞬だけ電線を当てて、ファンが回転する組み合わせを調べること。

写真のファンは、回転数検出のないファンで電線2本式。今後も部品を使いたかったので、ここではプラグをハンダ付けしている
ACアダプターにある表記。必ず電圧12Vを選び、電流の出力は0.5A以上を選ぶ
ファンに指が触れないようにファンガードも取り付けてみた
ファンの固定は両面テープでもかまわないが、固いダンボールを使っているなら4mm(M4)のネジを使って止めることもできる

もし、ファンに換気扇を使う場合は、コンセントの差し込みがついているので、改造なしでOK。箱への固定は、タッピングネジというものを使うといい。

⑤捕獲シートの取り付け

捕獲シートは、書類をまとめるクリアファイルを適当な大きさにカットして、ダンボールの切れ端などを使ってストッパーを作る。

クリアファイルを適当な大きさにカット
ダンボールの切れ端でストッパーを造り、マジックで黒く塗る

⑥捕獲シートの作成

先にカットしたクリアファイルに、黒い両面テーブを隙間なく貼って捕獲シートの完成! 100円ショップの黒い両面テープでもいいが、ここでは、クルマのパーツなどを付ける、よりネチョネチョして粘着性の高いブチルゴムのテープを使った。

気流が乱れて蚊を捕獲しやすそうなところに、両面テープを仕掛ける

⑦中仕切り

このままでは蚊の玄関からファンまで一直線なので、蚊をせっかく誘い込んでも、そのままファンから出て行ってしまうかもしれない。そこで空気を捕獲シートに沿って迂回させる中仕切りを作る。

このままでは、吸った空気とともに、蚊をそのまま逃がしてしまう
蛍光灯を土台にして、中仕切りをダンボールで作る

⑧蛍光灯と中仕切りのペイント

蛍光灯本体と中仕切りも黒くスプレー。細かい部分は、黒い油性マジックなどで塗ってもOK。

中仕切りは、蛍光灯の本体に両面テープでつける。ブチルテープだとネチョネチョであとがたいへんなので、ここは普通の両面テープでOK
中仕切りと蚊を捕獲するシート間の隙間を調整して、空気の流れに変化をつけ、蚊の飛行を邪魔する。隙間を狭くすれば空気は急に流れるが、空気の抵抗が増えて風量が減るので、バランスを見ながら調整すること

⑨最終組み立て

すべて部品を組み込んで、動かしたのがコレ。

中に仕切りを入れたので、ファン側からブラックライトは見えない
蚊の大好きな黒に、蚊の大好きな紫外線。そして、ほのかに暖かい箱の中に、思わず入りたくなる蚊の玄関

コレで本当に蚊を捕獲できるのか?

手作り感満載の自作蚊取り器。完成品を仕掛けて、その効果を調べてみることにした。しかし家の中では、虫が入ってこないかもしれないので、ここではベランダにセットして一日運転してみた。

非常にコンパクトで携帯性にも優れた蚊取り器

結果は! すげー!捕れてる!

24時間運転して4匹を捕獲!

これが多いのか少ないのか不明だが、日照の続く日で蚊は少なかった感じだ。とはいえ、こんな小さな蚊取り器で4匹も取れたので、十分に有効といえるだろう。と思いたい(笑)。

おそらくアカイエカが3匹と羽虫が1匹

蛍光灯本体とブラックライトで2,000円+パソコン用ファン+ラッカーで、実質かかる金額は4,000円程度で蚊取り器が作れた。パソコン用ファンを4,000円程度の換気扇に変えたら、さらに強力なものが作れるだろう。

また、蚊は二酸化炭素が大好きなので、二酸化炭素発生器を作りチューブで蚊取り器本体内に送り込んでもいいだろう。麦茶ボトルにドライアイスを入れて自然に解けた二酸化炭素のガスを使ってもいいし、ボトルの中に水とイースト菌と砂糖を入れて、発酵させて二酸化炭素を発生させる方法もある。

もしかすると、販売されている蚊取り器よりも捕獲率の高い機械が作れるかもしれない!

藤山 哲人