[Vol.5]カメラで映す子どもと日常 飯沼亜紀さん

カメラが自然と入り込んでいる暮らし。カメラを持ち歩く楽しみ。日々キラキラしていることを切り取る喜び。カメラのある生活を楽しんでいる女子に密着します。第5回目はソフトウェア開発会社で企画職として働いている飯沼亜紀さん。

実は4歳と1歳のお子さんを持つ、二児の母でもある飯沼さん。最初のお子さんが生まれてから写真で成長を記録するために、趣味でキュートなスクラップブックを作り始めた。海外の雑誌を見たりネットの情報をチェックしたりと、お洒落に作るコツを積極的にインプットし、むしろ写真そのものよりも力を入れて制作していたという。

可愛らしい飯沼さんは実は二児の母

腕を上げていくにつれ、海外のスクラップブック仲間からは「あなたの作る作品はやさしい色合いをしていてステキ」と絶賛されるようにもなった。しかしさらにいい作品を作るために、素材の主役となる写真にも力を入れたいと、気持ちに大きな変化が生まれ始めた。そこで思いきってソニーのデジタル一眼レフカメラ「α330」を購入。大学時代から人物や風景などを撮るときに愛用していたコンデジは、子どもの素早い動きに追いつかなくなっていたので卒業した。

ソニーの一眼レフカメラ α330を愛用中

毎日ちがっているからこそ残したい

子どもという「被写体」と向き合うのはどんな感じなのか。飯沼さんは「子どもってびっくりするくらい、写真を撮るたびに表情がちがっているんです」と話してくれた。大人と比べて、成長スピードが遥かに速い子ども。彼らの変化を追いかけることは、とてもドラマティックで楽しいと思う。子どもの一瞬一瞬を丁寧に切り取るようになって「今残すべきものは何か」という視点が生まれた。

二度と見られないものも多い。たとえば、ハイハイ、指しゃぶりなどがその一例。成長とともにそれらは消え去っていく。「日常にあることって見逃してしまいがちなのですが、それらは記録しておかない限り、少し時間がたつともう見られないものなんです」と飯沼さん。だからこそ写真という「作品」として残しておきたい。何気ない日も特別な日と変わらない。そういった気持ちで一日一日を大切に過ごすようになった。

日常的にお子さんを撮影(撮影:飯沼亜紀) 一瞬の動きを切り取る(撮影:飯沼亜紀)

休日はカメラを持ってお散歩に

厳選されたスクラップブック用の写真は、何百枚も撮影したうちのほんの一握りに過ぎない。「良い写真がなかなかない」という悩みを抱えていた。まずは撮影枚数を増やさなくてはと、休日は必ず外へ写真を撮りに出かけるようになった。子どもの写真をステキに撮るコツは「情報を入れすぎないこと」なのだとか。表情、動き、ポーズーーそのうちどれをテーマとして伝えたいのか決める。そうすることで、ぐっと締まった写真になる。
写真の枚数を増やすという課題を解決するために、もう一つ実践したことがある。勤めている会社でなんと「million moments」というスマートフォン用写真アプリをリリースしてしまった。これは撮った写真を美しい雑誌のように閲覧できるアプリで、撮る、取り込む、めくるというシンプルな動作で楽しめる。写真を撮りっぱなしにすることなく、見返して楽しめる。「写真を撮るきっかけを与えてくれる」という飯沼さんの理想がかたちとなっている。平日に時間のないときには、一眼レフではなくこのアプリで撮影することも。

カラフルな背景が写真に映える(撮影:飯沼亜紀) 窓からの光を有効活用(撮影:飯沼亜紀)

スイーツ写真に癒される

母でもあるけれど一人の女子でもある飯沼さん。「働いていると、ときどき疲れちゃうこともありますよね」とやわらかく微笑む。これはすべての女子に共通しているはず。気持ちはわかる……。その疲れを癒すのに写真が一役買っているそう。「特にスイーツ写真が好きなんです」とマカロンの写真を見せてくれた。ギリギリのところまで接写しているので、上質なマカロンの素材感がしっかり伝わってくる。

カラフルなマカロンたち(撮影:飯沼亜紀)
スイーツ写真は女子の癒しになる(撮影:飯沼亜紀) 色鮮やかな写真に仕上げた(撮影:飯沼亜紀)

スイーツだけではなく、食事に行くとキレイな食べ物は必ず写真に撮る。そこから元気をもらう。美しい写真は人を元気にしてくれるパワーがあるのだとか。上手く撮るために心がけていることを聞いてみた。中途半端な角度からは撮影しないこと、小鉢や小物を配置したりメインを中央から外すなどして、構図が上下左右対称にならないようにすること、お皿の一部などを時に大胆に切り取ることなどを、いつも意識している飯沼さんの写真はたしかに雰囲気がある。

自分のツボを知ることでステップアップ

写真の腕を上げるために実践していることがある。今回まで取材してきて初めて聞いた試みだが、いいなと思う写真をTumblrにアップして「それに惹かれた理由」を自分の言葉で説明している。「自分の好きなもの、なぜそれを好きだと思えるのかを知ることで、新たな発見があります」と飯沼さん。1日1写真と決めて1ヵ月続けてきたなかで、実はトーンの暗い写真が好きだとか、小物を取り入れたスタイリングが好きだとか、さまざまな発見があった。

好みを知った上で、とにかくたくさん撮る。そうするうちに「写真のテーマを探すようになったし、同じものでも色々な視点で見るようになりました」と語る。1つの花でも上から撮影するだけではなく、下から撮ってみてはどうだろうと考えが巡っていくのが楽しい。写真が生活の一部となることで、ものの見方や考え方、ライフスタイルまで、あらゆるものがハッピーに変わっていく。

常に写真を撮っている飯沼さんの影響か、お子さんもカメラに興味を持つようになったらしい。大人とは目の高さが異なる子どもの撮る写真には、「こんな視点もあるのか」とハッとさせられる。想像以上にお洒落な写真が撮影されていることに驚いてしまう。将来的には「写真×子どもで何かしたいです。まだ全然詳しくは思い付きませんが」と笑顔で話す飯沼さん。何の変哲もない日常をカメラでカラフルにするための方法を教えてくれた気がした。

(2012/9/14)
池田園子
1986年生まれ。岡山県出身。2005年に上京。楽天でポータルサイト運営、某ITベンチャーでメディア運営を経てフリーのライターに。Web、ガジェット、新しいモノ、会社、働き方、恋愛、イケメン系のネタを主に書く。コミュニケーション全般が好きで、人が好き。愛用カメラはPENTAX K-rとRICOHのCX4。取材で人を撮り、散歩しながらも撮っています。(ホームページ)(Twitter)