デジカメの動画機能とうまくつきあうには

デジカメの動画機能は数十秒の撮影に最適。初期設定は要確認

 子どもが産まれるとき、デジタル一眼カメラを買うか、ビデオカメラを買うかで迷う方も多いのではないでしょうか。うちの場合もビデオカメラ購入を直前まで検討していましたが、出産前後の忙しさで買いそびれ、今にいたります。昨今、プロ向けを除いて一般的なデジタル一眼カメラからコンパクトデジカメまで、たいてい動画機能は搭載されているので、手持ちのデジカメで十分だと考えていたせいもありました。ただ、子供が生まれる前、たまにしか撮らないときなら実際それで十分だったのですが、子どもが生まれて本気で動画機能を使いはじめると、便利なところと不便なところ、いろいろ見えてきます。

 まずは便利なところ。デジカメと一体なので買い足す必要がなく、いいレンズと撮像素子でキレイな動画が撮れるところについて。子ども連れで荷物が多い日々の中では、これは確かに便利でした。基本的には、とくにコンパクトデジカメなら(うちの場合は)部屋の中に無造作に置いてあることが多いため、「撮るぞ!」と気合いを入れなくても撮れ、日常の風景が映せます。これがビデオカメラだったらどうだったか考えると、きっと10分の1も撮っていないと思うので、やはりデジカメの動画機能は偉大です。

まだ2カ月のころ。あまり激しく動かなければ、デジカメの動画でも十分

 ただ、外出時などはコンパクトデジカメですら持って行くのを忘れて、スマホで撮ることも少なくないですが……。先日、ニコンからAndroid搭載のコンパクトデジカメ「COOLPIX S800c」が発売されましたが、SIMをさして通話できないのか真剣に調べてしまいました(ちなみにケータイとしては使えません。ただしWi-Fi環境でスカイプでの通話はできるそうです)。

 また、デジカメだとそれほど長い動画も撮らないので、数十秒のカットだと誰かに見せるときにも気楽です。そもそも「デジカメの動画機能で十分」と思った理由は、「長い動画を撮影しても見返すことが少ない」と思ったからだったので、これに関しては予想どおりなのですが、一方で間違っていた面もあって、自分の子どもの動画は何分でも見ていられます。親バカって怖いですね。

 余談ですが、こうして日常的にちょくちょく撮っていても、決定的瞬間を撮るのはやはり難しいものですね。子どものまわりで毎日起きるハプニングを目の当たりにすると簡単に撮れそうな気がするのですが、その瞬間に都合良く動画を撮っていることはないし、もう一度撮ろうと思っても撮れないことがほとんどです。CMで「はじめて歩いた日」のような感動映像もよく流れますが、実際には「伝い歩き」→「1歩歩く」→「3歩歩く」→「よちよち歩く」という流れが数カ月かけてだんだん進むので、いつ歩けるようになったのか、と聞かれると「いつだっけ?」という感じでした。それでも定期的に撮り続ければ「よちよち」から「ダッシュ」の差はわかります。

 ちなみに、デジカメの動画機能は、初期設定をよくよく確認しておくのをお勧めします。たとえばAFの「追尾機能」が「オン」になっていないと機能があっても動きません。風景やスナップを撮るだけならいちいち追尾されると気持ちが悪い動画になってしまうので、「オフ」になっているケースも多いようです。また、屋外で風が強いと「風切り音」がゴーゴー入るのが気になる場合もありますが、風切り音抑制機能も初期設定で「オフ」になっていることが多いので状況によって「オン」にする必要があります。たまにしか使わないだけに、あわてて撮影して失敗する、ということも結構ありますから、もういちどマニュアルを引っぱり出して読み直してみましょう。露出補正ができる機種でも、ライブビューで静止画を撮るのと違って、あらかじめ設定しておく必要があるケースも多いので要チェック。

 というわけで、基本的にデジカメの動画機能は非常に便利に使ってはいますが、魔法のツールというわけではなく、やはりビデオカメラほどの便利さがない部分にも多く気がつきました。普通の記事だとこのあたりはあまり言われないので、個人的な感想を注意点としてご説明したいと思います。

タテ位置撮影に注意! 動画は静止画よりも性能差が大きいので実機で確認を

 デジタル一眼カメラやコンパクトデジカメで撮り慣れると困るのが、うっかりタテ位置で撮ってしまうことが多いこと。それも、カメラで再生していても(カメラをタテにしたまま再生するので違和感なし)まだ気がつかず、パソコンにバックアップを取ってはじめて気がつくこともしばしばです。ポートレートはタテ位置が撮りやすいので自然とそうなってしまいますし、スマホで見る分には、むしろタテの方が自然ですから、クセになってしまうんですよね。

赤ちゃん用ケーキを食べる図。せっかくの1歳の記念日なのにタテ位置で撮ってしまった動画

 先日、1歳の誕生日という、ずっと残りそうな動画でこれをやってしまいました。写真なら回転させるのは簡単ですが、動画はタテ位置に回転できるのか? カメラには動画編集ソフトが付属していなかったので、ネットでさんざん検索して、オンラインソフトなど活用してみましたがうまくいかず、あきらめかけていたらマイクロソフトの提供している無料プログラム「Windows Essentials」のひとつである「Windows Liveムービーメーカー」であっさりできました。対応している形式も、Windows Mediaビデオ(.wmv)をはじめ、「.mov」、「.avi」、「.mpg」などかなり豊富。Windows Vista Service Pack 2以上であれば誰でも利用できますからおすすめです。

Window Liveムービーメーカーで簡単にタテ位置にできました。ちょっと小さめですが、首は疲れません

 また、ピント合わせにもちょっと困りました。便利すぎるデジカメのオートフォーカス(AF)に慣れてしまい、同じデジカメが動画になるとピント合わせが難しい機種があるということに慌てました。じつはこれ、数カ月間あまり気にならなかったのです。まだ歩かないうちは子どもの方が動かないので、どのデジカメでも問題なく撮れてました。しかし、歩けるようになると状況が一変。これまであまり動くものを本気で撮っていなかったので気がつかなかっただけでした。それに、カタログや仕様で書かれていたことともちょっと印象が違っていました。

静止画のオート撮影だと、シャッターを押せばピントも自動的に合いますが、動画はあらかじめ一度ピントを合わせておかないと、こんな風にぼけた状態からの撮影になってしまいます

 デジカメ動画の撮影中のピント合わせは、黎明期の製品では「マニュアルでのピント合わせのみ」でしたが、最近では「AFも可能」は当たり前になり、「追尾機能付き」も登場してきました。子どもの動画を撮っていると、この「追尾」の重要さがよくわかります。この、ピント合わせで動く被写体を追いかける「追尾」機能が付いているものはまだ少なめ。追尾しているはずでも、パソコンで見てみると、ところどころピントが外れている、ということもよくあります。

動きが速いと、自動的にある程度ピントが合っても、ところどころ外れることも

 もともと、動画機能についてはメーカーやカメラの機種による使い勝手や性能差がかなりあるので、静止画とともに動画をかなり撮るという場合は、店頭でデモ機を使って、実際の撮れ方(子どもを撮ることがメインなら、特に追尾の性能)をよくよくチェックしておくことをお勧めします。細かいピントはデジカメの背面液晶では確認しきれないのでわかりにくくはあるのですが、それでも動作はある程度わかります。

 また、動画は、ある程度レタッチができる静止画と違って加工が難しく、撮ったままを使うことが多く、ごまかしがききません。特に、撮ったあとだと暗さの補正がどうにもならないのでご注意を。また、室内だと、蛍光灯照明の下で動画撮影するとチラつきが出ることがあります。ビデオカメラだとたいていこのチラつきは補正機能がありますが、デジカメだと搭載されていないケースが多いようです。天気のいい日に屋外で撮った動画と、夜の室内で撮った動画の差が、静止画よりも大きめです。

子どもの笑顔と笑い声はかわいいもの。でも夜の室内だとやはり映像はノイズが多め

 というわけで、デジタル一眼カメラの動画撮影機能は、条件が揃えば家庭用のビデオカメラよりずっと高画質で、今や映画やテレビCMにも使われるほどですが、オートで何も考えずに使うとなかなかうまくいかないことも。最近、子どもが自由に歩くようになった我が家では、そろそろビデオカメラを買おうかという話も出ています。もちろん、普段のちょっとした動画を撮るには、デジカメの手軽さが抜群に便利なのは間違いありません。手持ちのデジカメの動画機能で「できること」「できないこと」をあらかじめ理解しておくと、変にがっかりせず、使いこなせるのではないでしょうか。

(2012/9/7)
西村 敦子
1973年東京都生まれ。IT系出版社を経てフリーライター兼編集者に。カメラ雑誌の編集、家電製品のライターとしての活動が多く、インターネットの格安店やお得なサービスにも詳しい。2011年6月に第一子を出産し、子育て中。