[Vol.2]89年世代・市岡麻美さん

カメラが自然と入り込んでいる暮らし。カメラを持ち歩く楽しみ。日々キラキラしていることを切り取る喜び。カメラのある生活を楽しんでいる女子に密着します。第2回目は「あっちん」の名で20代の女子たちから支持されている、今注目の89年世代・市岡麻美さん。

吸い込まれそうな大きな瞳、華奢な手足、ゆるふわな雰囲気——。思わず守ってあげたくなる女の子のような市岡さん。しかし可憐な見た目とは裏腹に内に秘めた芯は強い。大学を卒業後、現在は社会人2年目として写真を扱うベンチャー企業で働く。その合間をぬって、イベント企画、独自メディアでの発信など走らない日はない。夢は「オンリーワンの仕事で活躍すること」だからがんばれるのだとか。先月も著名な若手女性を2人ゲストとして招き「100人女子会」を成功させた。実はパワフルな女の子。

彼女のことを知ったきっかけは1枚の写真にある。筆者の男友達がかなりステキなプロフィール写真をFacebookで使っているので、どこで誰に撮ってもらったのか聞いてみた。イケメンがNYあたりで爽やかに微笑んでいるような写真。その撮影者が市岡さんだった。人物を撮影してみたいと思い、Web上で呼びかけたところ希望者が多数集まり、数人限定で撮影を行った。彼女は決してプロではない。それでも人をこれほどまでに魅力的に写し出すセンスが気になる。今日はいろいろと語ってもらうことにしよう。

頭の中でクリップを付ける

例の男友達の写真について「あの写真、本当にステキ。どこで撮影したものですか」とさっそく切り出してみる。撮影場所は丸の内のパブリックスクエアだという。確かに場所も大事。ただ実物より5割増しでカッコよく見えるなんて、一体どういった工夫をしているのかしらと思う。私も知っておきたい。「私、その人の長所を見つけるのが得意なんです」と微笑む市岡さん。その人のいいところを活かしつつ、持って生まれたもの以外の要素でも、相手を魅力的に写す努力をおこたらない。

たとえば、髪型、服装、女子の場合はメークで、人の印象は大きく変えられる。これまで自分の写真写りに満足していなかった人も、彼女が撮影した写真を見て感動する。市岡さんは「足し算や引き算をして工夫すれば、最高にいい写真を撮ることはできます」と自信を持って話す。華奢な男性の場合は、真正面よりも斜め横から撮影し、細さを感じさせないことがポイント。髪型でもオシャレ感を出すために、前髪を上げるなどスタイリングもていねいに行う。

人のいいところを見つけて活かす

“誰でもかわいく写れる”を伝えたい

13歳から18歳まで、市岡さんはモデルとして活動していた。大学入学と同時に引退してからは「今度は撮影される側ではなく、撮影する側になってみたい」と思うようになった。撮られる側の楽しさ、かわいく写るための方法、構図はよく知っている。幸運なことに大学にはかわいい女友達がたくさんいた。彼女たちにモデルふうのポーズを取ってもらい、その姿を撮影していたという。イメージしてみると、まるでカメラマンのようだ。

それでもモデル経験者でもない限り、撮影されることは苦手なのでは? この問いに対して「確かにその通りです。意外に喜ばれないんですよね」といたずらっぽく笑う。それでも「かわいい」「この写真ステキだよ」と撮影したての写真を逐一見せたり、言葉で相手の気持ちをアゲたりすると、女子はのってくる。徐々にハイテンションになって、楽しくなってくるらしい。“きれいな作品”を見せてあげることが、さらにいい表情を引き出すことにつながってくる。

市岡さん撮影……うーん、お洒落!

キュートな場所ではいい写真ができあがる

先日チェコとオーストリアを巡ってきたという市岡さんが、旅の写真を見せてくれた。中欧のやさしくてカラフルな世界がぎゅっと凝縮された、おもちゃ箱の中を覗いたような写真だ。単焦点レンズを使っているため背景が美しくボケている。「世界の国々の中でヨーロッパほどかわいい場所はないと思います」と目をキラキラさせながら語る。かわいい場所ではかわいい写真を撮れるというのが彼女の持論。日本でも人を撮影するときには、丸の内、表参道、青山など、洋風でゴージャス感のある街を選ぶようにしている。

人がたくさん行き交うところだと、撮る方も撮られる方も気を使う。市岡さんが外国で撮った写真は、かわいらしいスイーツ、美味しそうな食べ物のほか、一緒に旅をした女友達の自然な横顔、あえて作ったモデルふうのポーズなど、人物がとてものびやかな印象。「向こうでは人の写真を撮ることはふつう。人目を気にせずに開放的になれます」と市岡さん。年に1回は好きな国を訪れて、写真を撮ることを楽しんでいる。今後もヨーロッパのまだ訪れていない国を回りたいという。

「こういうのが好き」を見つけよう

彼女がカメラを持つようになったきっかけの大本は、大のカメラ好きだというお父さんの存在が大きい。実家に帰ると必ずカメラ話に花を咲かせる。こんな写真を撮るにはどうすればいいかと相談することも。高校時代まではCanon PowerShotを使っていたが、大学入学後に一眼レフが欲しくなりNikon D5000を購入した。「そのときも父といっしょにカメラ屋さんへ行きました」と話す。Canonは鮮やかな色合いとコンパクト感が気に入っており、日常的に持ち歩く。Nikonは「お洒落なところへ行くときの必須アイテム」だとか。

愛用中のCanon PowerShot、Nikon D5000

ステキな場所でオシャレな1枚を撮るーーそれが市岡さんの趣味としての写真だ。それにしてもセンスがよすぎて羨ましい。彼女が切り取った世界は、海外ファッション誌のよう。「普段から雑誌をたくさん見るようにしています。自分で『こういうのが好き』といった構図、バランス、イメージを予め持っておくといいかも知れません」と教えてくれた。久しぶりに「好きこそものの上手なれ」という言葉を思い出した。

最初は好きな写真を真似るのでもいい。次第に自分の大好きな世界観を、写真という小さな額縁の中に表現できるようになれば、今よりもさらにカメラライフが楽しくなりそうだ。

(2012/7/18)
池田園子
1986年生まれ。岡山県出身。2005年に上京。楽天でポータルサイト運営、某ITベンチャーでメディア運営を経てフリーのライターに。Web、ガジェット、新しいモノ、会社、働き方、恋愛、イケメン系のネタを主に書く。コミュニケーション全般が好きで、人が好き。愛用カメラはPENTAX K-rとRICOHのCX4。取材で人を撮り、散歩しながらも撮っています。(ホームページ)(Twitter)