寝てると天使!な赤ちゃんの寝顔をぶれずに撮るには

 雑誌やCMでさんざん目にはしていても、実際に目の前で見ないと実感できないことは結構あります。私の場合は、「赤ちゃんの寝顔」がそれでした。ウトウトしたり、ぐっすり眠っている寝顔を見ていると「本当にかわいいなぁ。幸せだなぁ。」とめいっぱい実感できます。起きているときは、泣いたり食べたりで世話するこちらも忙しいので余裕がありませんが、寝ているときにはこちらも「ほっ」としていることも影響しているかもしれません。

 そして、このかわいい寝顔を写真に残さなければ!とあわててデジカメを手にするのですが、この寝顔をうまく撮るのが、結構ハードルが高かったりします。なによりデジカメは暗さが苦手。かといってフラッシュを光らせたり明かりを付けて起こしてしまっては元も子もないので、フラッシュなしで撮るしかありません。そのため寝顔の撮影は常に「ぶれ」や「ノイズ」との戦いになります。

 テレビCMや雑誌で出てくる赤ちゃんの寝顔をよくチェックすると、どれも昼間のとても明るい場所でぐっすり寝ていることがほとんど。明るい方がキレイに撮れるのでそうしているのだと思いますが、一般家庭で子どもをあんなに明るい場所で寝かしつけることはまずありません。カーテンを閉めたりして、昼間でもちょっと薄暗いところに寝かせているわけで、普段見ているのはやはりフィクションなわけです。

 そしていままであえて撮ることがなかったので気がつかなかったのですが、昼間にカーテンを閉めた薄暗い部屋では、デジカメは想像以上にぶれます。また、夜に明るく感じるリビングの照明の下でもまずぶれます。

 ですから、夜の暗い部屋でなくても、できることなら三脚を使ってデジカメを固定すると安心なのですが、寝ているとは言っても赤ちゃんは案外動くもの。コンパクトデジカメはまだしも、一眼レフやミラーレスを三脚に固定する余裕はなく、撮れた試しがありません。そのため、昼間でも薄暗い部屋で撮るときはデジカメのISO感度の上限はかなり高めにしています。初期設定でもISO 800程度まではデジカメ側の設定で自動的に上がる場合も多いようですが、ここ1〜2年以内に購入したデジカメならISO 1600程度までならノイズがほとんど気になりませんし、毎回設定するのが面倒であれば、あらかじめ「ISOオート」の上限をある程度上げておいてしまうのも手です。ただし、せっかくの赤ちゃんのツルツルの肌がノイズだらけに写るのも悲しいので、上限いっぱいまで上げればいいというわけではなく「ぶれ」と「ノイズ」で妥協点を見つけておく必要はあります。また、いくら寝顔といってもいざ撮る瞬間は案外あわてるので、あらかじめ手持ちのカメラでISO感度をどこまで上げて撮れるか試しておきましょう。

夜、授乳後に寝落ち。ほけーっと口を開けた悩みのなさそうな寝顔がかわいい。ぶれないようにISO 1600に設定していたミラーレスであわてて撮影 リビングのシェードランプの真下で寝てしまったところを撮影。夜だと、ランプ下の明るい場所で寝ていても、陰が強く出て雰囲気はイマイチ
昼間、少し薄暗い部屋で「GR DIGITAL 4」で撮影したカット。目で見た限りではかなり明るく感じても、ISO 154の初期設定ではかなり暗く写ります 我が家の日曜日の光景。ものすごい寝相でベッド中をゴロゴロ移動する我が子……カーテンを開けた明るい状態だったので雰囲気よく撮れました

 寝顔撮影では、ほかにもいろいろと困る点はあります。たとえばシャッター音。苦労して寝かしつけたのに、一眼レフやミラーレスの“パシャ”という音で起きてしまうんじゃないかとドキドキですし、ピント合わせの合焦音も気になります。また、AF補助光の赤い光がまぶしいんじゃないか、目に悪くないだろうか、ということまで心配になってきます。

 一眼レフやミラーレスは、仕組み上シャッター音をなくすのは無理ですが、一部の一眼レフで「静音撮影モード」があるモデルもあり、ある程度抑えることはできます。また、合焦音やAF補助光は光らせないように設定できる機種も多いので、気になる場合はOFFにすることもできます。ただし、AF補助光をOFFにするとそれでなくてもピントが合いにくい暗がりでさらにピントが合いにくくなるので、AFがピントを合わせやすいように顔の近くに一瞬色の濃いおもちゃを置くとか、濃い色の服を着せるなどすると、明暗差がはっきりしてピントが合いやすくなるようです。

 ちなみに、このAF補助光、子どもが生まれたばかりのときに本当に安全か心配になってカメラメーカーに詳細を問い合わせたことがあります。暗い場所で赤く光るので毒々しく見えますが、実際はごく弱い光で赤ちゃんの目に入っても心配はないそうです。光が赤いのも、人がまぶしく感じない色なのだそうです。

AF補助光をOFFにしていても、こんなふうに濃い服を着ているとすんなりピントが合います

 さて、一眼レフやミラーレスで夜中、真っ暗な部屋で撮影するのはなかなか難しく、最新のプロ向けハイエンドモデルでISO 102400相当に対応した……などという報道を見るたびに、「どれぐらい真っ暗ななかで寝顔がキレイに撮れるかなぁ……」とついつい想像したりしてしまいます。子どもの寝顔を撮るために数十万は出せませんが、最近はコンパクトデジカメで寝顔の撮影に向くモデルもいくつか発売されていて、それなら現実的。

 たとえばカシオのEXILIM EX-XR20に搭載されている「HSナイトショット」や、ソニーのCyber-shot「プレミアムおまかせオート高感度」搭載モデルならISO 12800相当まで設定され、これまで撮れなかった暗い部屋のなかでの子どもの寝顔も撮影することができます。

 私としては、この寝顔のためにどちらかを買うべきか、カメラ売り場を通るたびに悩んでいるのですが、そうこうするうちに子どもがどんどん大きくなっているので、悩まず買っておくべきだったか……といまさら後悔しています。これから赤ちゃん撮影用のコンパクトデジカメを買うなら、「寝顔がキレイに撮れるかどうか」を基準に買うのもおすすめですよ。

(2012/5/23)
西村 敦子
1973年東京都生まれ。IT系出版社を経てフリーライター兼編集者に。カメラ雑誌の編集、家電製品のライターとしての活動が多く、インターネットの格安店やお得なサービスにも詳しい。2011年6月に第一子を出産し、子育て中。