Lesson 8 逆光を味方につける!

 言うまでもなく写真と光はとても大事な関係にありますが、「かわいい!」とか「おもしろい!」って魅力的な被写体を見つけたときは光を無視して一目散に被写体に駆け寄っちゃってることって、実はありませんか? 光を見なくちゃいけないのはわかってるんだけど、気持ちが焦っちゃってついつい…わかります。ポジションを決めているうちに一瞬のシャッターチャンスを逃しちゃうかもしれませんもんね。だからと言って光を無視してはステキな写真は撮れないので、体で覚えるためにもひとつずつおさらいをして行きましょう。

 今回はポートレートや花、テーブルフォトの撮影には欠かせない‘逆光’の撮り方をマリコちゃんと勉強していきましょう!

 

Best Shot ! photo by nana
■PENTAX K-5/DA35mmF2.8 Macro Limited/絞り優先AE(F2.8)/ISO200/WB太陽光/画像仕上:風景
木の真下から見上げて撮影した紅葉。本当はもっと深い赤色でしたが、逆光で撮ることによって太陽の光で葉が透けて柔らかい赤色になりました。
■PENTAX K-r/DA35mmF2.8 Macro Limited/絞り優先AE(F8.0)/ISO200/WBオート/+1EV
花のシベを覗き込むように撮影。太陽は花びらの向こう側にあるので逆光の状態。花びらの透過がわかりやすいようにF8.0まで絞りました。

 

 まずはいつものようにマリコちゃんに自由に撮ってもらいましょう! もう主役の被写体を見つけて撮る方法はわかっていると思うので、ボケを活かしたキレイな写真を期待しています!!

 

NG Shot ! photo by mariko
■PENTAX K-r/FA 43mmF1.9 Limited/絞り優先AE(F1.9)/ISO200/WBオート/画像仕上:風景

 

 これは立ったまま上から見下ろして撮っていたときの写真だね。ちゃんと撮りたい被写体にピントが合っているし、画像仕上げを風景にしているから鮮やかなオレンジ色がキレイに出ています。だけど、光の当たり方は読んだかな? 太陽がそのまま当たっている順光の状態だとコントラストが高くなって被写体の輪郭は出やすいんだけど、花びらの透け感などの表現はし難くなっちゃいます。

 花びらを透けさせる方法は他にもあるけど、ここは今回のテーマに沿って逆光での撮影に挑戦してみましょう!

 

GOOD! photo by mariko
■絞り優先AE(F1.9)/ISO200/WBオート/画像仕上:風景
マリコちゃんコメント
光が当たる方向だけでココまでかわるんだ?!!!!
写真に表情が出てお花から温かさが伝わってくるっ
ナナさんから教わる前の写真は比べると全然綺麗じゃないな。。。
カメラの中ばかりに目がいってたけど、カメラの後ろや横からの光や方向がいかに重要か写真を見比べると すっごくわかりやすい!!
これからは自分の撮りたい被写体ばかりでなく周りの状況の変化ももっと楽しみながら撮ってみよう!!!

 

 これはしゃがんで見上げるようにして撮っていたね。逆光で花びらが透けて見えて、さっきの濃いオレンジ色の花と同じ花には見えないくらい透明感を出すことができました。ちょうど蝶が花びらにとまった瞬間を捉えたのでピントが甘くなっちゃったのはご愛嬌(笑)。思いがけずイイ写真が撮れることもあるので、たとえピントが合わなくてもシャッターはどんどん押すようにしましょう。

 

 

光の当たり方で被写体のイメージは変わる!

 それではここで、光の当たり方についてのおさらいをしましょう。被写体のマリコちゃんの立ち位置は変えず、カメラが彼女の周りを半周する形で撮影しました。特にマリコちゃんの顔にできる影に着目してみてください。

 

被写体のマリコちゃんの周りを回って撮影。マリコちゃんにはカメラ目線をキープしてもらいました。光の状態を見るためにレフ板や露出補正は行っていません。

 

【順光】 【斜光】 【サイド光】
太陽は被写体の正面にあり、光は被写体に真っ直ぐに当たっている状態。マリコちゃんは太陽を直接見ているのでとても眩しそう。 太陽が被写体を斜め前から照らしている状態。天気が良すぎるとこのように被写体に強い影を落としてしまいますが、曇りのときなどの柔らかい光はどんな撮影にも使いやすいオールマイティーの当たり方です。 太陽は被写体の真横から当たっています。マリコちゃんの右側の頬と鼻に光が当たっているのでそこは明るいのですが逆側の顔は暗くなっています。立体感が出て強いイメージの写真になります。
【半逆光】 【逆光】 【逆光+レフ板】
マリコちゃんの右後頭部に光が当たっている状態。今までよりかなり柔らかいイメージになりますが全体には暗くなるので、レフ板を使ったりプラスの露出補正をして明るい印象に仕上げるといいでしょう。 太陽が被写体の真後ろにあり、カメラの正面にある状態。光が回り込んで柔らかい印象になり髪には天使の輪ができます。半逆光と同じくポートレートとしての撮影でしたらレフ板を使って顔を明るくしてあげましょう。 ポータブルサイズの小さなレフ板でもアップなら光を回すことができます。もっと大きなキャッチライトを入れたいときはレフ板も大きなものを使用しましょう。

 

上で使用したレフ板。折りたたむと手のひらサイズになるミニレフ板は手軽に持ち歩けて便利!

 

マリコちゃんコメント
向きを変えただけですごい変わってる!同じ時間の同じ場所とは思えない!
光のあたり具合でめちゃくちゃ変わるのはわかったけど、レフ板の効果もものすごい!
肌もキレイに見えるし、レフ板は人物撮るには必須かも!!

 

 このように光の当たり方ひとつで同じ被写体でもイメージが変わってしまうので、撮りたいイメージとそれが被写体に合っているかを考えながら撮影をする癖をつけてください。「そんなにいっぱいの光の使い方なんてわからない!」と言う方は、まずは逆光の使い方を覚えてみてください。被写体を間に挟んで、自分が太陽のほうを向いて撮影すればいいのですから覚えやすいですよね。

 また、明るい物にカメラを向けるとカメラは自動的に「明る過ぎる」と感知して暗く写してしまうので、プラスの露出補正をして見た目に近い色合いまで明るくすることを忘れないようにしてください。できれば小さくてもいいのでレフ板を持つことをオススメします。逆光での撮影時に、光が当たらない手前側に自然に光を回すことができます。花やテーブルフォトの撮影がメインの方は、自分の肘から手のひらくらいまでの狭い所にも置けるような小さい物でもOKですが、ポートレートメインの方は結局最終的に欲しくなってしまうので、両手を広げたくらいの大きさの物を最初に奮発して買ってしまいましょう!

(状況撮影=編集部)

 

(2011/12/2)
(みさき なな) フォトライター 東京都生まれ。B型。知り合いの写真家の作品撮りにモデルとして関わったことがきっかけで写真に興味が沸き独学で写真の勉強をし、その作品を持ち込んだ出版社に編集として入社。2010年独立。現在はカメラ雑誌の編集やWEBでのカメラレビュー、写真講座のライターとして活動中。
Twitter:@cosaruru ブログ:http://misakinana.com