VR Watch

モバイルVRでも位置トラッキングができる「HTC LINK」と「HTC U11」を体験

HTCの最新スマートフォン「HTC U11」は、ハイエンドスペックと独自機能を詰め込んだ、今夏注目の機種。そしてVR的に見逃せないのは、周辺機器としてポジショナル(位置)トラッキングに対応するモバイルVRヘッドセット「HTC LINK」が用意されることです。

HTC U11

発売が目前に迫る中、HTC Nipponとauは3日、タッチ&トライイベントを都内にて開催。一般ユーザー向けのファンイベントではありましたが、筆者もプレスとして参加し「HTC U11」と「HTC LINK」を体験することができました。

HTCファンの一般ユーザーが集結

なお、本イベントについては「ケータイ Watch」でもレポートされているので、ぜひあわせてご覧ください。

「HTC U11」は“AI社会”への下準備、VR「LINK」の狙い HTC Chang氏が語る

「au×HTC U11」ファンイベント~歴代HTC端末も勢揃い

HTC LINKは既存のモバイルVRと何が違う?

まず、「HTC LINK」の特長について整理してみます。

スマートフォンとVRヘッドセットを組み合わせたVR体験を一般的に「モバイルVR」と呼んだりしますが、HTC LINKもそうしたカテゴリのデバイスです。ただ、これまで存在したモバイルVRと比較すると、「モバイルVRでありながら、ポジショナル(位置)トラッキングが可能」という点が特長です。

モバイルVRでは、スマートフォンをVRヘッドセットに挿入することで、スマートフォンを処理ユニット兼ディスプレイ装置兼センサーデバイスとして利用するのが一般的。この場合、スマートフォンに内蔵された傾きセンサーを用いて「ユーザーがどちらの方向を向いているか」を検出することで360度、上下左右全方向を見渡せるVRならではの体験を実現します。しかしこの方式では、「ユーザーがどこにいるのか、立っているのか座っているのか、部屋のどのあたりにいるのか」といった位置情報はどうやっても取得することができません。

一方HTC LINKでは、スマートフォン+VRヘッドセットという従来の組み合わせに加えて、外部のカメラ型センサーも用意。このセンサーがVRヘッドセットやコントローラーの位置を検出することで、「ユーザーがどこにいるのか、立っているのか座っているのか、部屋のどのあたりにいるのか」と言った情報を取得することが可能になっています。これにより、従来のモバイルVRでは困難だった「立ったり座ったり、自分の足で歩いたり」といった身体性の伴うVR体験が可能になります。

また、HTC LINKはディスプレイ装置やバッテリーなどを内蔵しており、スマートフォンは純粋に処理ユニットとして利用するようになっています。

こうした特徴は、これまでのモバイルVRよりもむしろ、HTC ViveなどのPC向けVRデバイスの構成に似ています。というか、PC向けVRにおける処理装置としての「PC」が「スマートフォン」に置き換わったのがHTC LINK、と説明することもできそうです。

モバイルVRでポジショナルトラッキング体験

というわけで、そんな「HTC LINK」を実際に体験してみました。

HTC LINK

HTC U11とHTC LINKのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の間はUSBケーブル(type-C)で接続。HMDとポジショナルトラッキング用カメラは独自規格の無線で接続されます。

つまり、HMDとスマートフォンの間、およびカメラの電源以外は、ケーブルがありません。PC向けのVRヘッドセットですと、HMDからPCに伸びるケーブルがプレイヤーの動きを阻害しがちですが、HTC LINKはそういったわずらわしさとは無縁。スマートフォンがケーブルでHMDにぶら下がる形ではありますが、基本的にプレイ中に触ることはないため、首から下げたり、上着のポケットなどに入れておけば気になりません。

HTC LINK専用のカメラユニット
専用のコントローラーはHTC Vive用のコントローラーの小型版のような印象。こちらもカメラと通信してポジショナルトラッキングに対応します。

HMDをかぶってコントローラーを手に持つと、ちゃんとVR空間にコントローラーが浮いて見えます。この辺りのユーザー体験はHTC Viveなどと非常に似ていますが、これをモバイルVRで実現できているところが感動的です。

ポジショナルトラッキングは、HMDやコントローラーに装着されたライトをカメラが検知して行う、PlayStation VRと似た方式。原理的にはカメラがライトを認識できなくなった時点でトラッキング不能になるはずですが、カメラに背を向けてみたり、その場をくるくる回転したり(ケーブルフリーだから何回転でもできるんですヨ!)してもただちにトラッキング不能になることはありませんでした。ただ、担当者によれば徐々に位置ずれが起こっていく可能性はあるとのこと。

ちなみにトラッキング用のライトは取り外しが可能。VR動画などポジショナルトラッキングが必要ないときは外して利用できるというわけですね

また、個人的に気に入ったのは、HMDのメガネフレンドリーなつくり。筆者着用のメガネはHTC Viveだとギリギリ入る、Oculus Riftだとどうやっても入らないというサイズですが、HTC LINKのHMDはメガネ着用状態で余裕で装着可能でした。

画質面では、片目あたり1080x1200、併せて2160×1200ピクセル解像度で、リフレッシュレートは90Hzと、HTC ViveやOculus Riftと同じ。ぱっと見の画質も、それらPC向けVRヘッドセットと遜色ありません。

モバイルVR+ポジショナルトラッキングで何が生まれる?

HTC LINKは、モバイルVRの手軽さと、ポジショナルトラッキングによるよりリッチなVR体験を両立するという「いいとこ取り」なコンセプトのデバイスで、現状ではほぼ唯一無二な存在です。

一方で、コンテンツについてはHTC LINK用のSDKを用いて開発する必要があります。当初は日本のみでの展開ということもあり、コンテンツが充実していくまでには時間を要するかもしれません。

ただ、スマートフォンとカメラ、HMDを用意するだけという簡易的なセッティングで、ポジショナルトラッキングを用いた一歩進んだVR体験が可能になるため、リアル店舗でのVRアトラクションや、体験イベントなどで採用が進む可能性もありそうです。

なお、そうしたVR体験コンテンツの開発を手がけているテレビ朝日メディアプレックスの阿部氏による連載記事でも後日、HTC LINKを取り上げる予定ですので、お楽しみに。

一般ユーザーが体験できる機会はこれが最初だったこともあり、HTC LINKは人気
ファンイベントでは、他にもHTC U11を用いたハイレゾ視聴やカメラ作例撮影などが体験できました