VR Watch
AR/VRとMRの利用シーン
VRメディア概論 ~VRビジネスの最前線より~ #03
2016年12月5日 12:14
IT分野で昨今注目されているキーワードとして、AR/VR、そして最近はMRなどが多く話題にのぼる昨今です。
AR/VRについては、語呂が良いせいか並べて語られることが多いのですが、個人的には同列に語るのは違和感があります。実際のところ、作り手の立場からすると似た技術を使ってはいるのですが、ユーザー側からするとまるで別物だからです。
今回では並列して語られることの多いAR/VR、そして新しい概念として「MR」について整理したいと思います。
AR=Augmented Reality(拡張現実)
現実の映像とデジタル情報を重ね合わせることで「現実を拡張する」という概念です。スマートフォンの3D描画機能と内蔵カメラを使用することで、気軽に一般の人がアプリとして使用できるようになってきました。
実際の使われ方としては、
・現実の映像にテロップ的に付加情報を追加する
・現実にある画像やマーカー(ポスター等)を基準として3Dオブジェクトを表示し、まるでそこにあるかのように見せる
などがメインとなっています。
弊社でもイベント公式アプリとして、
・イベント会場のポスターにスマホをかざすと、キャラクターが出てきてスタンプをゲット、というARスタンプラリーのアプリ
・ノベルティグッズに印刷されている企業ロゴをスマホのカメラで覗くと、動画CMが流れる「ミニサイネージAR」
というアプリ開発を手掛けたことがあります。
VR=Virtual Reality(仮想現実/人工現実感)
VR元年、ようやく世間の認知度を得つつあるVR。本来のVirtual Realityの概念はもっと広いものですが、最近は「VR」と呼ばれる際はOculus Riftなどの「ヘッドマウント型VRブーム」を指すことがほとんどです。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)をかぶることにより、バーチャルな空間に完全に没入することができるもので、最近は視覚だけでなくアトラクション的ギミック、例えば椅子が振動する、座席が油圧アクチュエータで動く、風が吹くなど視覚以外の体験を与えることで、よりリアルな体験ができるよう進化しつつあります。
具体的にどのように使われているかは、本コラムの第一回目をご覧いただければと思います。
MR=Mixed Reality(複合現実)
VRやARよりも新しい概念で、ARをより一歩進めてさらに新しい体験ができる、現実とデジタルを対等かつシームレスに合成した世界を体験できるものです。
ARでは、現実の映像をベースにデジタルで便利な情報を付加する「主:現実 従:デジタル」という関係になっているのに比べて、MRでは現実とデジタルがまったく対等で、お互いに作用し合うものになっています。
例えば、床とテーブルの高さの違いや現実の部屋の壁を3Dオブジェクトのように認識し、デジタルのキャラクターが壁にぶつかったりテーブルをよじ登ったり、などが可能となります。
つまりARとの違いは、ユーザーがMRデバイスを装着することで、現実とデジタルが完全に融合し一体化した、まったく新しい「世界」として認識するという、全く新しい感覚を味わうことができます。
MRの利用シーン
MRはまだ新しい概念で一般の利用シーンはまだまだ未知数です。
ひとつ言えるのは、MRを単なる既存の「AR」として捉えてしまうのはもったいないということです。従来のARと同様の用途になってしまうと、MR独特の価値を体験することはできなくなってしまいます。
スマートフォンアプリで実現できるARに比べ、MR専用デバイスは多くのセンサーを搭載し高価であるため、「MRである理由」が大事になってきます。MRである理由、「現実とデジタルがシームレスに融合し、新しいワールドを形成している」という長所を生かさなければ意味がありません。
わかりやすいところでは工場や機械の整備マニュアル、医学手術の練習などB2Bの学習ツールとして使えそうです。が、自分の業種的にはどうしてもエンタメにつなげたいところではあります。
私がMRの使い方として興味あるのは、
・サンドボックス型のMRゲーム
自分の部屋にブロックを積み重ねて建造物などを構築。当然、物理法則も適用し、そこに生き物が育ったり、乗り物が走ったり、植物が茂ったりと「生きているジオラマ」が実現できる。当然他人の部屋に行くことでお互いの作品を見せ合ったり、「戦争」することも可能に。
・ホログラムお化け屋敷
現実の廃墟+お化けをホログラムで表現。
・ホログラムペット
自分の机や引き出しの中でペットを飼う!餌を上げたり芸をしつけたり。
・テーブルの上でアイドルライブ
現実のライブを特殊なカメラで撮影し、3D映像化。自分の部屋のテーブルの上で小さなアイドルが本物と同じクオリティのライブを繰り広げます。
などなど。まだまだイマジネーションがついてきていませんが、今一番ホットな分野であることは確かです。弊社でもMicrosoft Hololensの研究開発に着手しております。
阿部聡也
株式会社テレビ朝日メディアプレックス クリエイティブ事業部 ビジネスプロ デューサー。ITベンチャー、通信会社にてブログサービス、動画投稿サービスなどの新規立ち 上げを経て現職へ。現在VRコンテンツ開発事業"VR-plex"や技術研究を中心に 活動中。