電源開発(Jパワー)と国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は、「ドローンを活用した電力設備点検のための無線伝送システムの共同研究」を進めることで同意し、契約を締結したと発表した。

 Jパワーは電力設備の点検作業の効率向上を狙って、ドローンを利用した点検作業に実現を目指して研究開発を続けている。しかし、ドローンを遠隔で制御する無線通信技術の選択が問題となっている。ドローンと管理者が直接通信する場合、山間部などでは山や樹木が電波を遮ってしまい通信できず、携帯電話通信網を利用しようとしても、山間部では電波が届いていないということがよくあるという。

 そこで、NICTが開発を進めている独自の無線通信方式を電力設備点検用ドローンの無線通信技術に応用する。NICTが開発している方式は、通信免許が不要で、比較的長距離の通信が可能な920MHz帯を利用したもので、ドローンを中継してその先にあるドローンと通信するマルチホップ通信に対応する(1段階に限る)。この機能を利用することで、電波が直接届く距離に無線中継用ドローンを飛ばし、その先にあるドローンを制御するといったことが可能になる。

無線中継用ドローンを利用して、本来は電波が届かない距離にあるドローンを遠隔制御する

 この通信技術は、ドローン制御信号の受信だけでなく、ドローン側からその位置、高度、飛行姿勢などのテレメトリ信号を操縦者や管理者に送信する機能を持つ。操縦者側から制御信号を送ると、0.06秒程度と非常に短い遅延でドローンに信号が届く点も特徴だという。また、マルチホップ通信時に中継するドローンが変わって、通信経路が変更になっても通信信号が途切れることはなく、連続して制御信号の送信、テレメトリ信号の受信ができるという。

 今回の共同研究では、見通せる距離の先に離れたドローンを運航するときの無線中継の方法や飛行ルート選定、運行条件、運行制約を考慮に入れたドローンの運用方法について検証する。さらに、制御信号やテレメトリ信号の通信品質も評価する。そしてもちろん、電力設備点検にどれほど役立つのかということも検証、評価する。JパワーはNICTの無線通信技術を搭載したドローンによる電力設備点検を、2019年度に開始することを目指している。