ブルーイノベーションと日水コンは2017年7月31日、老朽下水管をドローンで点検するサービスを試行的に開始すると発表した。今秋から横浜市で提供開始の予定。ドローンで老朽下水管を点検する試みは、これが日本初のものになるという。

 日本政府は2015年改正の下水道法で、下水管施設を適切な時期に点検すること、特に腐食の恐れが大きい部分は5年に1回以上の頻度で点検することを義務付けている。この法改正の背景には、今後下水管の老朽化が急速に進むという事情がある。現時点で、日本国内の下水管のうち3%は建造後50年が経過している。そして、老朽化した下水管の腐食を原因とする道路陥没事故が多発している。2014年には下水管の腐食が原因の道路陥没事故が3300件発生している。

 また、今後下水管の老朽化は急速に進んでいく。10年後には日本国内の下水管のおよそ10%が老朽化する。距離にするとおよそ5万kmにもなる。20年後にはこの数字がおよそ33%となり、老朽化下水管の総延長はおよそ15万kmにもなるという。

 しかし、法が定めているとはいえ、老朽化した下水管の点検作業には作業員の命に関わる危険が付きまとう。具体的には、人体に有害な硫化水素ガスの発生や、ゲリラ豪雨などによる氾濫といった危険を想定できる。実際、老朽化した下水管の点検作業中に事故が発生して、死者を出した例もある。

 ブルーイノベーションと日水コンは、このような課題をカメラ搭載ドローンで解決することを目指して、点検、調査技術の開発を続けてきた。そしてようやくその成果が形になり、手動操縦でドローンを下水管内で飛行させる試験に成功した。さらに、横浜市でドローンを使った下水道点検を実視するに至った。

 下水管は一般に地下に埋まっており、照明がない真っ暗な環境だ。さらに、地下にあるため各国の測位衛星「GNSS(Global Navigation Satellite System)」の電波も届かない。このため、ブルーイノベーションと日水コンは、GNSSの電波を期待できない地下の下水管でも自由に飛行できる専用ドローンを開発した。

 点検にドローンを利用することで、点検に必要な時間がぐんと縮まるという効果も期待できる。作業員が下水管内を移動しながら目視で点検すると、1日でおよそ600mの下水管を点検できる。カメラを搭載した自走式ロボットで点検してみたところ、1日に点検可能な下水管は300m程度だったという。

作業員の目視、カメラ搭載ロボット、ドローンそれぞれの点検ペースの違い

それが、ドローンを使うと点検のペースが桁違いに上がる。ドローンで下水管を点検すると、秒速1~2mのペースで点検できるという。1日当たり5.4kmもの下水管を点検できるという計算になる。
ブルーイノベーションと日水コンは今後、下水管内でドローンを自動航行させることと、撮影精度の向上を目指す。より安全で効率良く点検できる環境を整えることを目標として開発を続けるという。