テラドローンは2017年6月29日、北海道の国道沿いの断崖絶壁をドローンを使ってレーザーで測量したと発表した。現場は北海道広尾郡広尾町。北海道中心部から南に走る日高山脈の南端近くの町だ。ここを走る国道336号線沿いにある「オリコマナイ法面(のりめん)」という断崖絶壁の防災工事の一環としてレーザー測量機搭載ドローンで測量した。

テラドローンが測量を実施した断崖絶壁「オリコマナイ法面」

 オリコマナイ法面は落石や土砂崩れが発生しやすい。放置しておくと、すぐ脇を走る国道336号線の交通に悪影響が及ぶ可能性が高い。そのため法面を鉄筋を通した方眼状の枠(法枠:のりわく)で固め、道路を整備する工事が進んでいる。しかし高さ100mの急勾配の断崖という環境が工事前の測量を難しいものにしていた。

 足場を作ることが困難であるため、三脚の上に設置する測量機器「トータルステーション」や、地上レーザースキャナーを使うこともほぼ不可能という状況だ。そこでドローンの登場となるわけだが、ドローン測量でも写真測量では、断崖の表面がひさしのようになっている部分が死角となってしまう。テラドローンはこの問題から同じドローン測量でも、レーザー測量という手段を選んだ。

オリコマナイ法面の測量に使用したレーザー測量機搭載ドローン

 測量結果は3次元空間に配置した微小な点の集まりという形で確認できる。点の集まりの形は測量対象の断崖の表面と同じ形になる。

レーザー測量機搭載ドローンで、オリコマナイ法面を測量した結果

 さらに、このデータから断崖の形を表す3次元モデルを作成した。従来は目視で測量し、法枠の総延長、法枠の体積を計算し、工数をはじき出して施工管理をしていたが、この手法では法枠の総延長や体積を正確に計算することが困難である上、計算に多くの工数が必要だった。

オリコマナイ法面の3次元モデルを作成したところ

 しかし、今回テラドローンが実施したレーザー測量なら測量結果をすぐにコンピュータで確認でき、そのデータから3次元モデルを簡単に作成できる。さらに、そのモデルから、工事に必要なコンクリートの体積などもほぼ正確に算出できる。今回の工事は從來の測量手法を利用した工事よりも安全に実施でき、ほぼ事前の計画通りの工期で施工管理ができた。その結果、工期全体を大きく短縮できたという。

 テラドローンは今後も高所や断崖絶壁など人間が作業するには危険な場所における作業をドローンを活用して支援し、無事故での工事完了に貢献するとしている。さらに、新技術も取り入れながら建設業界の労働環境改善や生産性向上を目指すという。