本コラムでは、先行する海外のドローン活用ビジネス事例を厳選して紹介します。また、『世界のドローンビジネス調査報告書2017』の内容を抜粋し、再構成しています。

仏Parrot社の傘下、精密農業分野で注目を集める

 MicaSenseはカリフォルニアに本社を構えるスタートアップ企業で、精密農業に特化したプロダクトを提供しています。MicaSenseはドローンの機体メーカーであるフランスParrot社の傘下企業でもあります。AirwareやsenseFlyといった著名なドローン企業ともパートナー契約を結んでいます。代表的なサービスおよび製品は、データ管理クラウドサービス「ATLAS」とマルチスペクトルカメラ「RedEdge」です。

マルチスペクトラルカメラ「RedEdge」

 MicaSenseは、RedEdgeというマルチスペクトルカメラを提供しています。

RedEdge、価格は5,900(US)ドル。

 RedEdgeは青、緑、赤、レッドエッジ、近赤外線の5波長に対応しています。このカメラは、人の目では見ることのできない波長を観測できるセンサーを搭載しており、作物の成長に不可欠なデータを収集することができます。ドローンへの搭載を可能にするため軽量化が施されています。

データ管理クラウドサービス「ATLAS」

 MicaSenseが提供しているATLASは精密農業に特化したデータ管理クラウドサービスです。MicaSenseのRedEdgeやParrotが提供するSequoiaといったマルチスペクトルカメラから取得したデータの管理や分析に利用できます。

 ユーザーが空撮後にSDカードに保存されたデータをクラウド上にアップロードすることで、ATLASはデータを処理し、24時間以内にデータ加工を行います。データ加工の種類も豊富で「CHLOROPHYLL MAP」「OSAVI」「NDRE」「NDVI」「NIR REFLECTANCE」「CIR COMPOSITE」「RGB COMPOSITE」「DSM」などがあります。これらのデータを参考に、農家は効率よく農作物を生産していきます。

加工処理を施したデータ

ATLASは4つのプランを提供しています。「PER USE」は0.6ドル/エーカーの金額で利用が可能で、データ管理を行う対象面積に応じた従量課金制となっています。「BASIC」プランは月額50ドルでひと月あたり150エーカー、「PLUS」は月額100ドルでひと月あたり350エーカー、「PRO」は月額250ドルでひと月あたり1,000エーカーのデータ管理が可能です。

今後、日本でも活用が広がるか

 日本は農薬散布用のドローンが普及していますが、ドローンを用いた精密農業は進んでいません。唯一、国内ではドローン・ジャパン社がMicaSenseのATLASやRedEdgeを利用した稲の精密農業サービスをスタートしています。今後、国内でも精密農業の普及に伴い、同社のプロダクトの需要が高まる可能性があります。

執筆者:インプレス総合研究所

日本国内のドローンビジネス市場規模の発表や『ドローンビジネス調査報告書2016』『世界のドローンビジネス調査報告書2017』など発行。