楽天、NTTドコモ、自律制御システム研究所の3社は2016年11月22日、ドローンを利用した荷物配送実験を実施し、成功したと発表した。LTE通信で制御できるドローンに荷物を載せて、稲毛海浜公園(千葉市美浜区)内の約700mのルートを飛行させることに成功した。

 今回の実験は、ドローンを活用した長距離配送を想定したもの。稲毛海浜公園からスマートフォンの専用アプリを利用して商品を注文し、注文を受けた品をドローンが届けるというシナリオだ。

 稲毛海浜公園からの注文はLTEで東京都世田谷区にある楽天本社に届き、楽天本社はLTEを通して稲毛海浜公園に設置したドローンに離陸の指示を出した。ドローンは離陸後、あらかじめ設定したルートを自律的に飛行し、目的地に着陸した。

稲毛海浜公園のプール上空を飛ぶドローン

 楽天は2016年4月から、ドローンを活用した配送サービス「そら楽」を提供している。今回の実験ではその経験を基に、エンドユーザーが商品を注文する際に使うスマートフォンアプリや、楽天本社でドローンに指示を出したり、ドローンの飛行状態を確認するダッシュボード画面を改良した。

 実験に使用した機体は、自律制御システム研究所と楽天が共同で開発したもの。楽天が「そら楽」で使用しているドローン「天空」の新型機となる機体だ。自律制御システム研究所は、天空に比べて長距離の飛行が可能な「PF1」を開発し、それを基に目立つ色に着色したり、荷物を載せる部分を取り付けるなどの改良を楽天と共同で実施した。

実験に使用したドローン。楽天が使用している「天空」の次世代機となるものだ

 共同で改良した点はほかにもある、パラシュートを搭載し、緊急時の急降下の速度を抑えて、軟着陸できるようにした。さらに、楽天技術研究所が開発した画像認識技術を利用して、楽天のコーポレートロゴマークを上空から認識して、そこに着陸する機能を加えた。防滴仕様にして、雨天に強くなった点も大きなポイントだ。こうして完成した新型「天空」は、飛行距離を前世代の天空の往復5kmから往復10kmに伸ばした。

 今回実験を実施した3社は政府が主導する「千葉市ドローン宅配等分科会」に参加している。この分科会では、国家戦略特区である千葉市で、最長で15kmほどの距離の荷物配送をドローンで実現するという構想を掲げている。3社は今回の実験の成果を基に、分科会が掲げる構想の実現を目指して研究と実験を続けていくとしている。