シンガポールに拠点をおくH3 Dynamics社は2016年11月15日、手投げ式ドローン「HYWINGS」を発表した。機体を航空機のような固定翼型とし、電源に燃料電池を使用することで、最長で10時間、500kmの飛行を可能にした製品だ。価格や発売予定日は明らかになっていない。

HYWINGSは両手で持って投げ出すことで飛び始める

 巡航速度は50km/hで、最大で70km/hまで速度を上げられる。離陸時の重量は7kg。30km/hの風が吹いても安定飛行を続けられる。オプションとして3種類のカメラを用意する。1つ目はフルHD(1920×1080ピクセル)画像を記録するカメラで、2つ目は赤外線サーモグラフィカメラ。そして3つ目はマルチスペクトル画像(多重分光画像)を捉えるカメラだ。

 H3 Dynamics社によると、HYWINGSのように長距離飛行が可能な製品がほかにもあるが、高価な上、離陸にある程度の距離の滑走路が必要なものや、カタパルトで強く押し出してやる必要があるものばかりだという。その点HYWINGSは、手で持って投げ出してやることで飛行を始めるので、コストを削減できるそうだ。飛行開始前の準備も最小限で済み、すぐに飛ばすことができる。

 電源として搭載している燃料電池はH3 Dynamics社の関連会社であるHES Energy Systems社が開発したもの。本来は航空宇宙産業に向けたもので、ドローンの一般的な電源であるリチウムイオン蓄電池と比べると1/3~1/5も軽いという。HES Energy Systems社は現在、HYWINGSに向けた小型の水素補給器を開発中。これでHYWINGSのタンクに水素を充填すると、6時間の連続飛行が可能になる見込み。

 H3 Dynamics社はHYWINGSを1つのステップとして、さらに大きく、さらに長い時間飛行できる機体を開発する計画を立てている。電力で50~80時間飛行可能なもので、無人のものだけでなく、人を乗せられるものを開発する可能性を探っている。