スカパーJSATと空間知能化研究所は2016年10月17日と18日、「水中ドローン(Remotely Operated Vehicle:ROV)」と衛星IP回線を使った画像データ転送に成功した。両社は2016年4月から、ロボット技術と衛星IP回線を組み合わせた海洋でのサービス提供に向けて検討を続けており、2016年7月には山梨県の本栖湖で初めての潜水試験を実施しているほか、4回の試験を成功させてきた。今回は波の高低や潮の流れ、速さなどの影響がある海中での実証に挑んだ。

 実証に使った水中ドローンは空間知能化研究所が開発を進めているもので、安全かつ低コストで深海探査を可能にすることを目的としたもの。本体後方に4つのプロペラが付いており、特定のプロペラだけを回転させることで旋回させるなど、水中を自由に動き回ることができる。遠隔操作も可能で、備え付けのカメラで海中の映像をフルハイビジョン(1920×1080ピクセル)で撮影することもできる。

写真 実証に使った水中ドローン

 今回は伊豆半島須崎沖で深度約145mの海底に水中ドローンを沈め、ドローンのカメラが捉えた映像を転送した。ドローンは捉えた映像を光ファイバーを通して海上の調査船に送り、調査船はスカパーJSATの衛星IP通信回線を経由して陸上のデータセンターに映像を送り出した。

実証で使った機器とネットワークの構成

 その結果、ドローンが捉えた映像をデータセンターを通してリアルタイムで見ることに成功した。同時に、映像データをクラウドに保存することもできたとしている。スカパーJSATは今回の成功で、衛星IP回線を利用した低価格な海底調査・監視サービスの提供に向けて前進したとしており、海洋・養殖産業などでの利用を見込んでいるという。

 今後は筑波大学の下田臨海実験センターや中内研究室の協力を得て、潜水試験を続ける。2017年度内のサービス開始を視野に入れて、試験では水中ドローンの耐久性向上、安定動作の実現、用途に合わせた画質の調整、遠隔操作する方法の改善を目指す。