リアルグローブと、一般社団法人 救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会(EDAC)は、救急医療や災害対応にドローンを活用する実証実験を開始した。ドローンだけでなく、ウェアラブルデバイスやセンサーも活用して、救急医療や災害対応を開始するまでの時間を短縮しようという試みだ。

今回は4種類の実験を実施する。1つ目は傷病者発生時を想定したもので、ドローンとドローンが搭載するカメラを活用して、傷病者がいる場所をいち早く特定するというもの。現場を素早く特定することで、救急隊員が傷病者のもとにたどり着くまでの時間を短縮することを目指している。

2つ目は火災発生を想定したもの。ドローンを火災現場に先回りさせて、ドローンが搭載するカメラで被害状況を把握する。消防車や消防隊員を現場に向かわせる前に被害状況を把握することで、消防活動に必要な消防車や消防隊員の数を判断できるかを検証する。正確に判断できれば、必要十分な要員と消防車を最短の時間で送り出すことができ、鎮火までの時間短縮を期待できる。

3つ目はドローンとセンサーを組み合わせたものだ。ドローンや各種環境センサーの計測値に加えて、被験者のバイタルサイン(心拍データ)を集め、ヘッドマウントディスプレイにAR画像として表示する。路上などで、体調不良を起こして倒れてしまった人を救護するような状況を想定したものだ。ヘッドマウントディスプレイは救護に当たる担当者が着用する。救護に必要なデータを眼前にあるAR画像で把握できれば、最短の時間で最適な方法で対処できる。

4つ目はウェアラブルデバイスを活用するもの。心停止に陥った人がいるという想定で、その事実を素早く認識することを目指している。心拍データは、心拍センサーを備えるTシャツ型のデバイスで検知する。センサーは無線通信機能を持つトランスミッターとつながっており、心停止を検知したらトランスミッターが救護を求める信号を出す。

以上の実験は、救急医療や災害対応にドローンをはじめ、センサーやウェアラブルデバイスなどの機器が役立つという仮説に基づくものだという。実験で仮説を検証すると同時に、ドローンなどの機器それぞれについて、使える点、使えない点、改良すれば使えるという点を、実験に参加する消防関係者などへの聞き取り調査で明らかにしていく。この検証は今年度中に完了する予定。

そしてこの実験の最も大きな目的は、消防による救命活動や災害対応といった、市民サービスの改善、行政運営の効率向上を支援する「ヘカトンケイルシステム」構築のための課題や要件の整理である。ヘカトンケイルシステムは、今回の実験で使える、あるいは改良すれば使えると判断した機器だけが関わるものではない。機器が発信するデータに加えて、オープンデータ、G空間情報(位置情報とそれに関連付けられた情報を指す)、福岡市が推進している「都市OS」からの都市情報などを統合し、消防機関や医療機関と連携して自律的に動くシステムだ。

ヘカトンケイルシステムの全体像

実験の検証結果がまとまったら、ヘカトンケイルシステムを普及展開していくロードマップを描く作業に入る。この作業では、普及展開の運用ルールや、システムに必要な機器の要求仕様とその調達方法などを策定していく。ロードマップ作成作業の過程で、必要に応じて実験もしていく。例えば今回の実験では空を飛ぶマルチコプター型のドローンを使用するが、路上を走るドローンや、水上で移動するドローン、水中で動き回るドローンなどを活用する可能性も探り、必要に応じて実験で検証する。

ヘカトンケイルシステムの構築と、そのための課題や要件を整理するための実験などの活動は「救急医療・災害対応におけるIoT利活用モデル実証事業」の一環として実施する。この事業はリアルグローブとEDACが共同で総務省に提案し、総務省の「IoTサービス創出支援事業」で採択となった事業の1つだ。