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激戦!コンビニ最前線<下>
~店舗縮小は業態の限界?
[経済リポート一覧へ]

 昨年大ヒットしたグリコ(2206)の「ムースポッキー」。売れすぎて生産が間に合わず販売中止、発売延期を頻発した商品だ。商品性は勿論、“モーニング娘。”を起用したCMなどにより人気に拍車をかけたのが主因であるが、コンビニが売れ筋を大量に確保した影響も見逃せない。特に昨年秋に関東地区で発売を再開した時はすごかった。都内の多くのコンビニでムースポッキーを大量に陳列する光景が良く見られたものだ。

 コンビニが扱う商品は約3,000品目と多くない。コンビニは満遍なく多くの商品を並べるのでなく、少数の売れ筋に的を絞ることで売上を伸ばしてきた。商品の絞込みと呼ばれるものだ。しかし売れ筋であり続ける商品はほとんどない。3,000品目のうち半分以上は1年で中身が入れ替わるのだ。

●陳列は商品の先行指標
 昨年秋のピーク時のコンビニでは、レジ向かいエンドなどの好位置に山積みされていたムースポッキーも今では大分おとなしく陳列されるようになった。人気や消費者先端の情報に関しては、コンビニに勝るものはない。いわば先行指標とも言える。ある商品がスーパーではまだ多くの陳列場所を割いている一方、コンビニでは縮小傾向にあるとしたら・・・。

 もちろん、今ムースポッキーの売上に懸念があるわけではない。だが株式投資では、今と異なる世界をイメージできる能力も必要だ。業績が好調ですべてがバラ色に見える時こそ将来の禍いの種を蒔いているものなのだ。株価が天井を打つのはそういう時である。1年後にムースポッキーが今の人気を保っている保証はどこにもないのだ。

 昨年あたりからセブン―イレブン・ジャパン(8183)でビールの品揃えが変化したことにお気づきだろうか?

 アサヒビール(2502)の「スーパードライ」、キリンビール(2503)では「一番搾り」や「ラガー」など人気の高い品目が相当なスペースを占める店が多くなった。ビールアイテムの絞り込みだ。セブンイレブンのビール値下げが関係していることは間違いない。つまりメーカーや品目を絞り込み、単品販売量を増やすことにより、メーカーからリベートなどで有利な条件を引き出すわけだ。これによって加盟店の粗利益を確保することが可能となる。

●メーカーの天国と地獄
 発泡酒を含めたビール業界は、キリンとアサヒで75%のシェアを占める。そしてコンビニがこの2社に集中し始めたということはさらなるシェアの上位集中を招くことを意味している。もはやサッポロビール(2501)、サントリーに残された選択肢は多くない。

 コンビニの商品絞り込みにおいては、選ばれた方は天国、外された方は地獄だ。だからこそメーカーはコンビニの棚を確保するために必死になるのだ。ビールなどはディスカウントストアやスーパーが主力だから、まだましかもしれない。最もコンビニの商品政策に敏感なのは、菓子と飲料業界。グリコにしてもコンビニの要請は真っ先に優先しなければならなかったのだ。

 実際はコンビニが選ぶのはメーカーでなくて個々の商品である。いきおいメーカーの新商品開発競争は激しくなる。特に飲料業界ではその傾向が強いが、ヒット商品はそうそう生まれない。新商品は1,000に3つ程度しか、生き残らないと言われているのだ。売上次第ですぐ棚から外されてしまうので、新商品開発の負担は相当重いようだ。

 ところが意外にも飲料を最も売っているのは自動販売機。これが約4割のシェアで、コンビニでの販売量は2割程度に過ぎない。それでも飲料メーカーがコンビニを重視する理由は何だろうか。ひとつにはコンビニ店頭に並ぶことのプロモーション効果、もうひとつがコンビニの情報・データの価値、つまりマーケティングのためだ。新製品だけでなく小型ペットボトルなどの容器ですら、コンビニのデータが直接、間接的に関係しているのだ。

 「生茶」はそんな中で飛ばしたキリンビバレッジ(2595)のヒット商品である。この商品は発売後じわじわと売上げを伸ばし、今なお人気が高い“富士山型”だ。爆発的に人気が急上昇した後急降下する“茶筒型”に比べ、この商品がロングセラーとなる可能性は高いと見ている。

●革新的商品で生き残り
 ファミリーマート(8028)が500店に及ぶ店舗閉鎖を決定した。都市圏を中心として店舗は過剰で競合が激化し、既存店の売上低迷に歯止めがかからない。積極的な出店政策で売上規模を競い合ってきたコンビニも利益重視の政策に転換を迫られたと報じられた。この報道を受けて、ファミリーマート株は下落した。本来ならこのような企業再構築プランは評価して良いものだが、コンビニ業界全体の成長性が疑問視された格好となってしまった。セブンイレブンをはじめ、主要コンビニ銘柄はほとんど昨年来安値を更新したのだ。

 ファミリーマートが閉鎖するのは1日の販売高(日販)が30万円以下の店舗の予定。この水準はオーナーの所得を含めて考えると経営が成立っている状態とは言い難いものだ。ファミリーマートの平均日販は45万円。しかし、同じように積極的店舗展開をしてきたセブンイレブンの日販は69万円。この差は何だろうか? これがコンビニ株投資をする上で決定的ポイントとなる。その意味では日販が50万円弱程度のローソン(2651)をはじめ中堅のコンビニに対する評価は限定的にならざるを得ないというのが正直なところだ。

 レベルの差はあれ、コンビニの企業努力は、すべてこの日販の水準をあげることにつきる。おにぎりの値下げで取上げた価格戦略、多大な投資を要するeコマースや金融戦略、そしてメーカーやベンダーに負担をかけてでも売れる商品を開発しようとするのはすべてそのためであると言っても過言ではない。

 日本の流通業態は、百貨店から総合スーパー、そしてコンビニに移ったと言われている。そして今さらにコンビニ業態の限界論も台頭している。しかし日本のコンビニという業態はセブンイレブンをリーダーとしてさまざまな問題を克服し、革新的な商品・サービスを生み出してきた。

 今後もその精神を忘れず、われわれ消費者に素晴らしい商品・サービスを提供し続けてもらいたいものだ。そしてできることなら、経営上の問題も乗り越え、素晴らしい投資対象となるよう願うばかりである。

■URL
・激戦!コンビニ最前線<上>~巨額おにぎり市場の攻防
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/economy/
note/010219.htm

・激戦!コンビニ最前線<中>~eコマース戦略の行方は
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/economy/
note/010226.htm

[フィスコ提携アナリスト 松本 竜太郎]

2001/3/5

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