FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~サクラは満開というのに・・・

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●「医」の過失?に甘いメス
  ◇非加熱血液製剤による肝炎感染問題で、厚生労働省がようやく重い腰を上げた。非加熱製剤を使ったと見られる803の医療機関名を公表、肝炎検査の受診を呼びかけることになった。対象は1972年から88年までの間、新生児出血症や出産時の大量出血などで、止血剤として非加熱製剤を投与された人で、検査対象者は1,000人にのぼるという。読売、毎日、産経、東京の4紙が1面トップで取り上げている。

  きのうは非加熱血液製剤にエイズウイルス(HIV)が混入し、患者が感染して死亡した薬害エイズ事件で、業務上過失致死罪に問われた元帝京大学副学長・安部英被告に対し、東京地裁は無罪を言い渡した。

  「医の責任に司法甘く」(毎日)、「覆された薬害の構図」(読売)、「判決は免罪符ではない」(朝日)など、安部被告無罪に対する各紙の論評である。医学の知識にうとい筆者がその判決の是非をあれこれいう能力も資格もないが、血友病治療の最高権威だった安部医師に、刑事責任を問えなかったのはなぜか。薬害エイズ事件は「官・業・医」の複合的過失ではなかったのか。製薬会社のミドリ十字では、起訴事実を認めた歴代社長3人の過失が認定されて実刑判決が宣告された。「医」の過失が否定されたことはどうも釈然としない。

  ◇朝日が、「死に体」総理の退陣日程を報じている。4月22日に党総裁選の投票をして新総裁を選び、翌23日の国会で首相指名選挙をし、新内閣が発足するというスケジュールが固まった。ただし、焦点の後継者選びについては、この紙面ではしぼりきれていない。森総理退陣報道でも朝日がリードしていたが、麻生太郎経済財政担当相ら噂されている「第3の候補」を含めて決定版とも言える続報を期待する。

  ◇NEC(6701)が、2年後をめどに情報通信機器関連の国内約10工場を分離すると、日経が取り上げている。富士通(6702)も子会社を含めて製造部門の集約を検討しているという。パソコンなどのIT情報通信機器の生産に伸び悩み傾向が出始めたり、家電量販店での安売り競争で利益率は極端に低下している。

  「抜本的な構造改革が不可欠」(秋草直之・富士通社長)と判断したためだが、先週このコーナーでも触れたように、特にNECの場合は深刻だ。例えば、岡本綾子プロとの契約解除や夏の軽井沢の風物詩となっている「女子プロゴルフ」のスポンサーを撤退する動きもみられて、そこまでリストラするのかとかんぐりたくもなる。しかも“ミニ・ヒットラー”と呼ばれている西垣浩司社長と旧経営陣との壮絶なバトルも勃発、腐敗体質が表面化しているのも気掛かりだ。

  【経済】
  ●生命維持装置を外すダイエー
  与党の政策責任者会議で、「政府・与党緊急経済対策本部」の第2回会合を当初予定の4月6日から4日に繰り上げて開き、緊急経済対策を2段階で取りまとめることを決めた(東京)。

  4日に開く会合では、銀行の不良債権処理策や金庫株の解禁など、すでに検討を進めてきた対策を中心に議論する。その後、税制や予算措置をともなう項目について本格協議し、早ければ4月末をめどに最終的な形で対策を打ち出すという。森首相の退陣とどうリンクさせるのか。事実上、総理不在での会合になるのは避けられない。

  ◇トヨタ自動車(7203)が、日立製作所(6501)などが設立する新しい通信衛星(CS)放送会社「シーエス・ワンテン」に出資参加する。カーナビなどの車載端末を起点に情報サービスの拡大をめざすトヨタが新たなビジネスの可能性を探る(朝日)。トヨタは来年度の採用計画も大幅に増加する予定だ。

  ◇前向きのトヨタと対照的なのが三菱自動車工業(7211)と日産自動車(7201)。三菱は今期の連結赤字がついに2,700億円に膨れ上がる(日経ほか各紙)。一説には3,500億円にのぼるのではないかという当初の試算もあったが、下方修正の幅はやや抑えられたわけだ。同じ再建中の日産は、きょう主力工場の村山工場を閉鎖する。今期は復配に転じるなど、ゴーン社長のリバイバル・プランが功奏、しかも、ボーナス満額回答、女性広報部長をスカウトしたり、とかくマスコミに取り上げられる明るいニュースが目立っているが、ユーザーは甘くはない。すべては今後の販売力で評価が決まることをお忘れなく。

  ◇経営再建が危ぶまれている大手スーパーのダイエー(8263)が、販売協力金などと呼ばれるリベート370億円を取引業者から集めて、利益を確保していたことが、読売の取材で明らかになった。不透明性の強いリベートは流通業界の商慣習。それを新経営陣は廃止するというが、ダイエーにとっては生命維持装置を取り外すのと同じこと。きょうは希望退職者の電話受け付けが午前10時から始まる。1,000人枠がすぐに埋まることは間違いないが、窓の外は早くもサクラが満開というのに三菱といい、ダイエーといいなんとも淋しい話である。

  【トピック】
  ●ドタキャン総理の逆襲
  淋しい話と言えば、きのうもこのコーナーで触れたが、ノルウェー国王主催行事の森サンのドタキャン事件。東京など各紙が続報しているが、首相は寿司屋での会食を「持病の腰痛が悪化したため」と支離滅裂の言い訳、「ふざけたことを書いて。君らには人情のこれっぽっちもない」と番記者に怒鳴り散らしたそうだ。しかも「ドラキャンだかドタキャンだか。そんなことを流すのがニュースかね。国民の貴重な電波をあずかって、その程度のことしかできないのかね」とも。そんなネタを提供したのは森サン、あなたデ~ス・・・。

  ◇新小学1年生の将来。男の子は野球、サッカーのスポーツ選手、警察官、運転手。女の子は、パン屋サン、花屋、看護婦・・・。ランドセル素材メーカーの調査の結果(産経)だが、筆者の時代には「ぼく総理大臣」と大きな声で答えていた生徒も多かった。

  <P.S.>
  「明日があるさ」と思っていたが、この瓦版もいよいよ明日が最後です。その後も連日読者の方から「瓦版一気読み」を継続して欲しいというメールが殺到しています。感謝感激です。明日の最終版までどうぞよろしく。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/29 09:22