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コラム 瓦版一気読み~「表現・報道の自由」とは?

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●世論に逆らえずやっと開門
  有明海でのノリ不作問題で、谷津義男農相は最大の焦点となっている長崎県・諫早湾干拓事業の潮受け堤防の水門を開放して調査することを表明。きょうは、読売、毎日、東京の3紙が1面トップで報じている。

  「世論に逆らえず開門」(毎日)を決めたものの、開放時期には触れていない。「疑わしきは調査する」(読売)という調査検討委員会の判断は妥当だが、水門開放をめぐり、今後も水際で大きく揺れることは必至である。

  ◇産経は機密費流用事件の記事。逮捕された外務省の元要人外国訪問支援室長、松尾克俊容疑者が、故小渕恵三元首相のロシア、マレーシア訪問などでも随行員の宿泊費補てん分を水増し請求し、計6,000万円前後の官房機密費を詐取していた疑いが強まったという。これにより立件される機密費詐取額が計1億円を上回る見通し。

  毎日も社会面で「首相の地元への土産代などが足りなくなった際の穴埋めで、宿泊費を水増しするようになった」などと、供述内容を取り上げている。1億円でも抑え気味の金額ではないかとみられるが、警視庁捜査二課は「疑わしきは罰せず」ではなく、諫早湾のような「疑わしきは調査」の姿勢で徹底究明を期待したいものである。

  ◇疑わしいと言えば、大腸ガンの遺伝子研究を進めている横浜市立大医学部の研究グループが共同研究相手の理化学研究所に虚偽の報告。昨年春、手術で切除された大腸の一部を患者に無断で採取して遺伝子を解析、その結果を勝手に学会で発表していたことが明らかになった、と朝日が取り上げている。

  この種の独自ネタはタレ込み情報が圧倒的に多い。社会面の関連記事のインタビューで「早く実験結果を出さなければならないという重圧で、やってしまった」と研究員が認めていることからも、罪の意識が強く不正行為を隠しきれないで、外部に漏らしてしまったようだ。この記事はウソをついてもやがてはバレるという教訓デス。

  ◇法務省が自社以外から取締役を起用する社外取締役制度の導入をすべての大手企業に義務づける商法改正案をまとめた、と日経が報じている。国際的に通用する透明で効率性の高い企業経営をめざし、社外人材の登用で経営監視を強化するのが狙いという。株主代表訴訟などを恐れて社外重役になりたがらないケースが目立っている。改正案ではほかの取締役と違って会社に対しての損害賠償責任などを軽減することも盛り込んでいるというが・・・。

  【経済・IT】
  ●商社も財閥解体が加速
  三菱商事(8058)と住友商事(8053)は、双方の携帯電話販売子会社を対等合併する、と産経と日経が同時に報じている。最近、大手商社では、条件次第でライバルとの事業統合や提携により、事業を強化して収益力拡大をめざす動きが活発化しているが、商社も生き残るためには節操など気にしていられないのはよくわかる。

  ◇NTT(8432)グループをターゲットにした規制法案の骨格が固まった。が、NTT弱体化は日本の国際競争力をそぐと主張する自民党に配慮し、グループの資本分離を法案から外したほか、NTTドコモ(9437)への新規制も緩和。「新秩序は骨抜きの恐れ」(産経)は否めない。暗礁に乗り上げていた通信事業に関しても「親方日の丸」は健在で、これでは通信改革の行方に不透明感を増すばかりだ。

  ◇日本テレコム(9434)が、5月から開始する市内通話料金を8.5円に値下げすると発表したが、一夜明ければNTT東西地域会社とKDDI(9431)も8.5円に値下げする方針を固めた(毎日)。これまで「業界最安値」を掲げてきた東京通信ネットワークも追随するというが、読売によると8.4円が有力だそうだ。

  「マイライン」が料金値下げ競争の引き金となっており、通話料金が下がることは利用者にとってプラスになるのはありがたいことだが、十銭単位で各社が小出しにする「消耗戦」に付き合うほどヒマはない。それを連日のように面白がって大きく報道するマスコミもマスコミだが・・・。

  【トピック】
  ●寿司屋のネタは新鮮?
  インターネットの通信販売は、利用したいけど不安も大きい。東京都の意識調査の結果である(読売など各紙)。7割以上が「利用したい」と考えているものの、9割が「非常に不安」「少し不安」。その理由は「代金支払い方法の安全性」が疑わしいことや、「個人情報が漏れる恐れがある」「届いた商品の品質、イメージが異なる可能性がある」などの声が多かったそうだ。

  個人情報についてはプライバシーを守る「個人情報保護法案」が閣議決定されたが、一方で、マスコミ報道についても規制する内容が盛り込まれており、毎日など各紙は、「表現・報道の自由」を制限しかねないと社説で警告している。

  ◇そのマスコミ報道をもっとも保護してもらいたい心境なのが森サンだが、きのうも、来日中のノルウェー国王主催の行事に欠席して、迎賓館に近い「寿司屋」で派閥の若手議員と会食していたことがバレてしまった。そのチョンボについて「気持ちは分かるが、そこらへんのおじさんと違う。辞めるまでは一国の総理なんだから」と作家の林真理子さんらも嘆く。

  相も変わらずバカバカしい次元の低い話でコメントする気にもなれないが、それにしても森サンの「異例の欠席」について、それを報じる各紙の扱いも異例。なかでも毎日は1面準トップと社会面トップで派手に紹介。「寿司屋のネタは新鮮そのもの」とシャレたいところだろうが、「表現・報道の自由」とはいえ、いくら何でもここまで大げさに取り上げるほどのこともない。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/28 09:22