FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~迷走する永田町

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●視界遮る「6K」
  一般会計総額82兆6,524億円の2001年度予算が26日、成立した。

  KSD、(外交・官房)機密費、株価(景気)、危機管理(実習船沈没事故)、(首相のゴルフ)会員権、(首相の)賭けゴルフと6つの「K」が森政権を直撃。攻める野党に、これだけの材料がありながら、予算成立期日は、前後4番目の早さ。いったい何をしていたんでしょうね、野党の諸兄は。

  与党も野党も、頼むに足らず。千葉県知事選で、新党さきがけの議員団座長から無党派に“変身”した堂本暁子氏に敗れた理由がよく分かる。永田町の迷走はとどまるところを知らない。

  ともあれ、予算の成立で政局の焦点は、次の首相候補を決める自民党総裁選に移る。森喜朗首相(自民党総裁)は、予算関連法案の処理にめどがつく来週にも、繰り上げ実施する総裁選の時期と方法を決めた上で、正式に退陣を表明する。自民党各派は総裁選態勢を敷き、後継候補をめぐる調整を急ぐ方針だ。

  が、野中広務元幹事長と小泉純一郎元厚相の一騎打ちかと思われた総裁選は、野中氏の「固辞」に加え、小泉氏の出馬の可能性が「五分五分」に後退。ここにきて、橋本派内で橋本龍太郎元首相擁立の動きが浮上するなど、情勢は混沌としてきた。

  このニュースを1面トップに持ってきたのは読売と東京。

  東京は、2面の関連記事<首相4月退陣かすむ「6K」>で、冒頭に挙げた「6K」が逆に首相の延命を助けるのでは、と皮肉っぽく報じている。

  だが、ここまできて、調整不調を理由に森首相が続投という事態になれば、参院選の結果は一目瞭然。すったもんだの挙げ句、誰かが「ポスト森」の座を射止めることになるんでしょうな。

  蛇足だが、社説が相変わらずつまらない。見出しだけ紹介すると、

  朝日<首相後継調整、次元が低すぎませんか>
  読売<後継総裁選、自民には危機感があるのか>
  産経<自民党総裁選、お家の事情から抜け出せ>

  中身は・・・読むまでもない。見出しで想像がつきます。

  ◇参院選の前哨戦として注目されていた千葉県知事選で、既成政党に煮え湯を飲ませた既成政党出身の堂本暁子・次期知事が、早くも始動。産経とのインタビューで、羽田空港の国際化について「全否定はしない」と述べ、反対姿勢をとり続けてきた沼田武・現知事との違いを強調した。現実的に対応するということか。

  が、予断は禁物。堂本氏が頼みとした「無党派層」が、羽田空港の国際化に「ノー」を突きつければ前言はあっさり翻される。まずはお手並み拝見、である。

  ◇「総務省は5月にサービスが始まる次世代電話の10倍の情報を受信できる次々世代携帯電話に、通信コストが現在より大幅に低いインターネット電話の仕組みを採用する方針」と、日経が報じている。

  ほうほう、と読み終えて、再び読み返したら「次々世代携帯電話」、つまり9年も先(2010年)のことじゃありませんか。いくらドッグイヤーの時代に入ったからといっても、こんなに先の話を聞かされても・・・。

  ◇朝日によれば、日本テレコム(9434)は5月に始まる電話会社選択サービスに合わせて市内通話料金を業界最安値の平日昼間3分8.5円で臨む方針を決めた。

  8.7円~8.8円で出揃った市内料金の値下げ競争に投じられた同社の“一石”は、さらなる値下げ競争を呼ぶ。朝日は、「NTT東西やKDDI(9433)などの他社が追撃するのは必至」と報じているが、日経によればNTT東西とKDDIも早速、「5月に3分8.5円に追随値下げする方針を固めた」という。

  株価は高い方が、電話料金は安い方がいい。

  ◇ハンセン病患者を隔離する根拠となっていた「らい予防法」が廃止されたのは1996年4月。もう5年も経つというのに、施設を出て社会生活を送っている元患者は入所者の1%にも満たないことが毎日の調べで明らかになった。

  理由は患者の高齢化に加え、「根強い偏見や国の社会復帰支援制度の貧しさ、隔離による家族との断絶が背景にある」という。法律は廃止されたが、事態は何も改善されていないということか。

  【経済】
  ●暴走した“次期首相候補”
  先の日米首脳会談で、金融機関の不良債権処理問題について「半年くらいで結論を出したい」と言明したのは森喜朗首相ではなかった。朝日によると、首相に同行した麻生太郎経済財政担当相が、「個人的意見」と断った上で「不良債権処理を含めて半年間で骨太の結論を出したい」と発言していたことが分かったという。

  麻生発言が伏せられたのは、不良債権の最終処理を急げばゼネコンや流通業者が破綻する可能性があり、「処理策の方向性などが固まらないうちに発言が表に出ると混乱するとの判断があったと見られる」が、現実には首相発言として広く行き渡ってしまった。

  この朝日報道、福田康夫官房長官はきょうの定例記者会見でどう答える?

  余談だが、「半年くらいで」の発言の主である麻生氏は、次期総裁候補の1人。ハッキリした物言いは、好感が持てるが、裏付けのない発言は混乱を招く恐れも。

  いずれにせよ、「帯に短し、襷(たすき)に長し」の総裁候補の1人である。

  ◇金融庁が最終処理の推進を促している不良債権は、約24兆円。不良債権総額32兆9,000億円(2000年9月期)のうち、会社更生法適用などで融資先が破綻した破産更生債権8兆6,000億円と、元利の償還がされない可能性の高い危険債権15兆3,000億円であると、森昭治長官が言明した(各紙)。

  【トピック】
  ●暴挙を防ぐ手立てはなかった
  アフガニスタンを実効支配するイスラム原理主義勢力タリバンがきのう、破壊したバーミヤンの巨大石仏を報道陣に公開した(各紙)。

  5世紀前後の作とされる2体の石像は完全に破壊され、「目撃者によるとタリバンは近くの石窟に描かれた壁画も破壊した」(産経)という。

  何たる暴挙。狂気の原理主義勢力を諫める力さえ持ち合わせていない国際社会の非力さを痛感せざるを得ない。

  ◇『瓦版一気読み』の連載継続を求めるメールを読者の方々から頂戴しました。有り難うございます。

  ともあれ、あと3日。不肖増山、「3球入魂」で頑張ります。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/27 09:15