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コラム 瓦版一気読み~千葉は新風、ロシアは無風

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●保守大国にも無党派旋風
  千葉県知事選の投開票の結果、新人で前参議院議員の堂本暁子氏が初当選。接戦の末、自民、民主など各党推薦の候補を退けての当選である。女性知事は大阪、熊本に続いて全国で3人目。きょうは、読売、朝日、毎日、東京の4紙が1面トップで取り上げている。

  昨年の長野、栃木両県知事選に続く、無党派知事の誕生は、「民意に鈍感な既成政党に対する有権者の不信感が広まり、政党政治の危機が一段と深刻化していることを示す結果と言える。今後の東京都議選、参院選に向け政党に警鐘を鳴らすものだ」(読売)。

  「斜陽の保守王国、自民敗北」(朝日)。「政党離れが深刻、自民みじめな敗北」(毎日)」と見出しが語っているとおり、「自民離れ」が加速していることはある程度予想がついたが「無党派の流れに乗り切れなかった」(菅直人幹事長)民主党の敗北も深刻だろう。

  ◇日露首脳会談は旧ソ連が平和条約締結後の歯舞、色丹両島の引き渡しに同意した1956年の「日ソ共同宣言」を「交渉プロセスの出発点」として確認することなどを盛り込んだ「イルクーツク声明」に署名。

  しかし、「保守大国」に新風が吹き込んだ千葉県と違って、日露領土交渉の方の霧は晴れず「新たな方向性を見いだせないままで、北方領土交渉は難しい局面を迎えた」(産経)。

  「こちらの狙いに少しずつ近づいた」と森首相が自画自賛しているものの、「何も変わったわけではない」(プーチン大統領)と冷やかなロシア。領土問題についての解釈の違いもあって、双方の隔たりを改めて印象つけた会談だったと言える。

  イルクーツクでの森総理。首脳会談のあとで、近郊にある亡父の墓地を訪れて「最後の外遊」を報告。しかし、「ロシア大統領に会っただけで何の意味もなかった」(藤井自由党幹事長)などと批判しているように、不発に終わった先の日米首脳首脳会談といい、近く退陣する森首相の花道を飾るほどのものではなかったようだ。

  ◇日経は、自動車業界で車種ごとに世界の最適地で生産を集約する動きが広がっている、という記事。本田技研(7267)が「シビック」の一部車種を英国工場に集約。経営再建中の三菱自動車工業(7211)は「ギャラン」の国内生産を中止して、米工場に移管、国内市場には逆輸入するという国際分業体制を構築するというもの。国際分業と言えば聞こえがいいが、三菱にとっては車種の絞り込みや工場閉鎖で売る車がなくなってきたための苦肉の策に過ぎない。

  【経済・IT】
  ●減らない不良債権残高
  都市銀行、地方銀行など全国136行で、今年度上期に不良債権が新たに3兆6,000億円発生したことが金融庁の調べでわかった、と日経が報じている。不良債権を資産から落とす最終処理は約2兆2,000億にとどまっており、新たな不良債権が銀行の予想を超えるペースで増えている実態が明らかになり、下期に最終処理を大幅に積み増さないと、不良債権残高は減らないとみられる。

  ◇わずか1年前には「金のなる木」ともてはやされたインターネット関連ビジネスが、剣が峰にさしかかっている、と読売が取り上げている。ネット王国といわれるアメリカでは、先端的なネット企業の業績が悪化し、国内でもネットベンチャーの多くが経営不振や資金難に苦しんでいるという。苦しんでいるのは、あの当時ネットバブルに酔った投資家も同じだが?

  ◇そんななかで元気なネットベンチャーもいる。光ファイバーによる高速通信サービスを展開する有線ブロードネットワークスが4月末にも、大阪証券取引所のナスダック・ジャパン市場に株式上場する(日経)。株式市場が冷え込んでいるなかでの上場の狙いは?

  【トピック】
  ●「ポケモン」は「嫌われモン」
  サウジアラビア紙によると、人気ゲームソフト「ポケモン」に対して、反イスラム的な要素を持つとして子供達に遊ばせないよう命じる宗教令を出したという(日経)。カードの交換・収集を目的にするゲームが、聖典コーランが禁じるギャンブルに似ているためだという。また、ポケモンのキャラクターが、反イスラム的なダーウィンの「進化論」に基づく可能性があるとも。禁止の理由は支離滅裂のようだが、ゲーム中毒が増えて、すぐにキレるガキが目立っている日本でも何らかの対応が必要ではないのか・・・。

  ◇広島、愛媛両県で死者計2人を出すなど、西日本一帯に大きな被害をもたらした安芸灘地震。今朝も震度5以上を観測する余震が続いているが、今回の地震発生直後、内閣府の「地震被害早期評価システム」が「死者165人」という過大な被害推計値を出していたという (産経)。

  昨年の鳥取県西部地震の際も死者がゼロだったのに対し、このシステムでは「209人」と過大推計されていたそうだ。大げさな数値よりも実際の被害のほうが少なかったのは不幸中の幸い。もっとも、数値は外部には公表されず、内閣府などの防災担当者への内部資料として処理されるものだそうだが、それを入手した担当記者の食い込みもあっぱれだ。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/26 09:44