FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~「死に体」首相(?)に「苦い薬」(21日朝刊版)

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●よそよそしい日米首脳会談
  きょうの各紙は、すべて「日米首脳会談」の記事が1面トップ。

  米大統領「不良債権解決を」、森首相「全力挙げる」 (朝日)
  不良債権を早期処理、首相、米に公約(読売)
  首脳会談で首相、米大統領に「半年で結論」約束(東京)

  極めつきは「苦い薬は早く飲めば、早く効く」(毎日)。ブッシュ米大統領との初の日米首脳会談が19日(日本時間20日未明)ホワイトハウスで行われたが、「死に体」の森首相に伝えた分かりやすいメッセージだ。

  「**は風邪を引かない」「**につける薬なし」と思っていたが、この日の森サンは何故か風邪気味。とは言うものの、初対面の人に健康を気遣うほどの余裕もないだろう。「苦い薬」とは、日本の経済危機克服遅れの元凶となっている金融機関の不良債権処理のことは言うまでもない。

  首脳会談はワーキングランチを含めて2時間。「大事な話をするときも、ことさら目と目を見合わせてとうこともない。何となくよそよそしい。大統領は首相を森喜朗という一人の人格としてより、一個の日本国首相として対していた。首相は居心地の悪さを味わったに違いない」(毎日)。

  大統領は、安保・外交も含め、日本が世界の平和と繁栄に一層の責任を果たすことも求めたが、日米同時株安が世界経済に大打撃を与えかねない中で開かれた会談は、この「苦い薬」についての話し合いが中心テーマ。森首相が「半年で結論を出す」と言い切ったということは、この問題が「期限付きの国際公約になった」わけだ。

  メモを一度も見ないで構造改革を迫るブッシュ米大統領。かすれた声で説明に追われる森首相。首脳会談は「スタート直後」、と「ゴール間近」という両首脳の立場の違いがそのまま表れた(朝日)。21世紀最初の日米首脳会談だったが、「死に体」の森政権では中長期的な戦略を詰め合うことができなかった。新たな日米関係を構築するには、政治も経済も早急に体制を立て直すことが、日本にとっての緊急課題(毎日)と、一応、大役を果たしたとはいえ、相も変わらず森首相に対して各紙の論評は手厳しい。

  そんな中で、産経だけは「死に体の首相による会談は意味がない、という批判もあった。だが、世界同時株安という深刻な局面を迎え、首脳会談がにわかにされることになったのは、首相にとって国内政局上も大きなプラス要因になった」という社説を載せている。森サンの古巣の新聞とはいえ、ここまでヨイショは?

  【経済・IT】
  ●米追加利下げは効き目無し
  日米首脳会談で、森首相が不良債権の抜本的な処理を加速する考えを表明したことについて、日本の株式市場では、日本経済の先行き懸念が薄らぎ、低迷を続ける株価にも好影響を与えるのではないか、との見方が出ている、と読売が観測記事。ただ、「日経平均株価が1万3000円台を回復するには相当時間がかかるだろう」(準大手証券)。さらに、「政局の混迷が続き、実現が危ぶまれる事態となれば、かえって失望売りを呼ぶ可能性もある」(アナリスト)との見方もあるが?

  ◇一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融政策の最高意思決定機関である連邦公開市場委員会を開催。1月末に続いて利下げに踏み切ることが確実視されている、と読売が準トップで報じているが、きょうの早朝(日本時間)同委員会は、フェデラル・ファンドの金利を現行の年5.5%から0.5%引き下げることなどを決定した、というホットなニュースをテレビが流している。ただ、引き下げが小幅だったことから、NY株式市場の終値は逆に大幅に下落した。さて、きょうの東京市場は・・・。

  ◇IT(情報技術)システムを企業などに導入した場合、人の移動やモノのやりとりが省け、二酸化炭素(CO2)の排出量を10~85%減らせるとする調査結果を、NEC(6701)がまとめた(朝日)。同社は社内外の33種類のIT関連システムについて分析。ITの環境への影響を本格的に分析する試みはこれまでほとんどなかっただけに注目される。

  同じNEC関連の記事でも、日経は2004年までに、全商品約2万点を独自基準の環境対応型に切り替える、と取り上げている。従来品に比べ電力消費量を3割削減、環境に有害な材料の使用をやめるほか、廃プラスチックなど、リサイクル材料の利用を大幅に増やす。朝日の記事から一歩踏み込んだネタである。

  もっとも、読売はNECでも「業績向上でもリストラ視野」という見出しの企業研究の記事。朝日や日経のような環境関連にはまったく触れていない。3紙バラバラの意図は?

  【トピック】
  ●変人ではなく、変革の人
  「私は変人と言われているが、変革の人だ」「森首相が代わっても、同じような政策、路線を引き継ぐような人だったら、私はちょっと考えさせてもらう」。自民党森派会長の小泉純一郎元厚相が、ついに出馬を決意。東京各紙が「国民の期待に応える道探る」という講演での決意表明を報じている。持論の郵政事業の民営化は?

  ◇就職活動のためにインターネットを利用した学生は8割、うち半数が毎日一回は就職目的でホームページを閲覧する。電子メールアドレスの取得率は98%とほぼ全員が持っており、約7割が毎日メールを利用している。リクルートが全国の大学4年生1万人を対象にしたアンケート調査結果である(読売)。就職活動にネットは不可欠。某アパレルメーカーの営業マンが「会社訪問のためのスーツの売れ行きがさっぱり」と嘆いていたが、リクルートスーツ代がパソコンに化けたらしい。

  ◇あの「ミール」の南太平洋での最終落下時間が日本時間で23日が午後3時半と決まった(毎日)。その1時間前に名古屋と横浜間の日本上空約170キロメートルを北から南に通過する。日本の人家に危害を与える確率は、サッカーくじよりも低い「1億分の1以下」(文部科学省ミール情報収集分析センター)というが・・・。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/21 09:30