FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~「量的緩和」可能性はゼロか?

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●日銀「3度目の正直」それとも・・・
  日銀はきょう19日午前から開く政策委員会・金融政策決定会合で、ゼロ金利政策への復帰を視野に、一段の金融緩和を決定する。日経によると、緩和措置として金融市場に供給する資金を増やす量的金融緩和を実施し短期市場が実質ゼロ%に低下することを容認する案や、短期金融市場の誘導目標金利を現行の年0.15%から実質ゼロ%にするゼロ金利政策の復活などを討議する。

  株価下落が止まらず、3月末の企業決算への影響が深刻視されている上、米経済の急減速で日本国内の景気腰折れ懸念が一段と高まっているためだが、2月以降3回の政策変更。「3度目の正直」となるのか・・・。

  ◇ブッシュ米大統領との初の日米首脳会談に臨むため、森首相は渡米中。「死に体総理」が留守とあっては拍子抜けなのか、各紙の紙面をみると政局の話題が極端に減ったが、東京は、自民党総裁選で、旧河本派会長の高村正彦法相を擁立する動きが浮上した、ときょうも1面トップで報じている。その根拠、野中氏が「不出馬宣言」を行うと同時に、小泉氏の総裁就任に反対する姿勢を鮮明にしたためというが、番記者にとっては書き得の観測記事に過ぎない。

  ◇仕事の目標を決め、その達成度に応じて処遇と賃金を決める成果主義に基づく賃金・人事制度を先駆的に導入した富士通(6702)が、4月から制度の見直しを行うことになった、と朝日がトップで取り上げている。「短期的な目標ばかりでヒット商品が生まれない」などの弊害があらわれたためで、今後はプロセスや潜在力を重視して評価するよう改めるという。以前、某大手企業の人事担当者が「成果主義の難しさは査定方法にある」とこぼしていたが、査定評価を甘くしてもらうためにゴマスリ社員も増えたそうだ。

  その朝日は富士通の賃金・人事制度の方向転換とセットで大和証券(8601)が、新年度から一般職を廃止して、総合職並の仕事に順次切り替えるという記事を載せている。一般職はカウンターから笑顔で迎えてくれる証券レディーが大半を占めており、総合職の資格試験にパスしなければ辞めざるを得ないことになる。つまりリストラされるということにかわりはない。

  ◇読売は大学病院で相次ぐ医療事故の防止を検討してきた国立大学医学部付属病院長会議の作業部会がまとめた最終報告案の記事。事故が起きた場合、患者や家族に「誠実で速やかな」説明を行うとともに、求めに応じ、遺族にもカルテや検査結果など一切の診療記録を開示する方針という。医療の実態がいかに杜撰で「誠実」でなかったことを暴露しているようなものだ。

  ◇産経は、日本領域への外部からの不法侵入を防止・排除する自衛隊法改正案の骨格の中身を取り上げている。「危害射撃」を新設、船体への発砲も可能になるなど、自衛隊の権限を明確化する内容になっている。

  ◇懲役刑を受け刑務所で作業をしている受刑者の労役に対し、賃金を支払うよう日本弁護士連合会が法務省に申し入れていることが明らかになった、と毎日が報じている。受刑者は刑務所で作業に就くことが義務付けられているが、週平均40時間労働で月約4,000円。時給換算で5円から36円程度とただ働き同然という。食事付きというのはシャバにいるホームレスよりもまだ恵まれているが。

  きょうは6紙とも見事にバラけた紙面構成である。

  【経済・IT】
  ●米国「円安容認」ホント?
  ブッシュ米大統領との初の日米首脳会談がきょう(日本時間)予定されているが、日本をデフレから回復させ、世界経済の安定をはかるため、円安を容認する可能性を検討していることが明らかになったことをニューヨーク・タイムス紙などが報じた(日経)。円安・ドル高が進めば、米国の輸出は伸び悩む。米経済にとってマイナス面も多く、反論もあるが?

  ◇NEC(6701)は駅やコンビニなど街角に設置した投票端末を通じて選挙の投票を行う「ネットワーク型電子投票システム」を開発した(読売)。すでに富士通(6702)の子会社もマークシート式の投票用紙を使って投票データを電子化するシステムを開発しており、未だ首相公選の可能性は期待できないものの、皮肉にも電子投票システムの開発競争だけは早くも激戦となっている。

  ◇先週16日に死去したセガ(7964)の大川功社長兼会長の後継社長に、ゲームソフトを中心としたコンテンツ部門の担当で、共同最高執行責任者(COO)の香山哲特別顧問を起用する方針を固めた(産経)。カリスマ的な存在の大川氏の周りは「イエスマン」ばかりだったが、リクルートから移籍した香山氏は、大川氏に不振の「ドリキャス」の生産中止を認めさせた人物。大川氏からの850億円の私財贈与を置きみやげに、大川色の脱皮が再建のカギとなる。

  【トピック】
  ●森サンは立派な「反面教師」
  「クイズで楽しく、ニュースがわかる」。iモードを使って携帯電話で朝刊をチェックしながら、ニュースクイズを楽しめる新サービスがスタート。朝日と日経の共同サイトで、一定期間の無料サービス後、月額100円を徴収する仕組み。ニュースクイズは解答の回数や正解率によるプレゼントや表彰などを予定しているという。ニンジンをぶら下げて新聞離れの若者を呼び込もうとする意気込みはわからなくもないが、ただし、きょうの朝日、日経からは気になるプレゼントの品物は載っていない。

  ◇英国で家畜の伝染病「口蹄疫」が確認されてから、1カ月が経過。感染被害は史上最悪のペースで進み、狂牛病に続く「英国発の伝染病」への懸念から、欧州産肉製品を禁輸する動きが世界に広がっている、と読売が特集で詳しく取り上げている。

  この記事には載っていないが、タモリがコマーシャルしている同じ名前の精力剤までとばっちりの被害を受けているというから恐ろしい。

  ◇「指揮官は、常に自ら進んで隊員に範を示さなければならない。かかる統率力は指揮官の全人格と能力を基盤として発揮される」。防衛大学校の卒業式で「率先垂範」の心得を説いた森サン(東京)。卒業生には「反面教師」に映った。厳粛な場でも冗談が言えるのはやっぱりお笑いタレントだ。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/19 09:24