FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~NYダウ1万ドル割れの衝撃

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●米ナスダックも再び2000割れ
  世界的な同時株安の様相が一段と鮮明になった。読売は、14日午前のニューヨーク株式市場が、取引開始直後から全面安の展開。ダウ平均は、一時、昨年10月18日以来ほぼ5カ月ぶりに1万ドルの大台を割り込み、ハイテク銘柄の多いナスダック店頭市場の総合指数も一時、再び2000を下回った、と報じている。

  リアルタイムに伝えられない新聞は、深夜から早朝に動くNY株を扱うのは、とくに勇気がいる。最終版でも日本時間で午前0時45分。日本時間現在の株価がぎりぎりで、茶の間に届くころにはテレビ等の電波メディアから終値が流れるからだ。

  そこで、今朝のNYダウを朝のニュースでチェックすると、終値が9973.46ドル。ナスダックも1972. 08と大幅下落、読売の見出しどおりの展開となってしまった。米国の株価急落は「日本の不良債権処理の遅れ」も大きな原因とみられており、1万ドルの大台割れは東京株式市場への連鎖は避けられない。

  ◇福岡高裁の古川龍一判事の妻による脅迫事件をめぐり、捜査令状など捜査書類のコピー問題で、福岡高裁は古川判事と青山正明・福岡高裁長官、土肥章夫・同高裁事務局長、小長光馨・福岡地裁所長の4人の懲戒を求める分限裁判を申し立てた。

  「法の番人、手負い傷」(東京)、「司法不信歯止めかかる?」(毎日)など、朝日、毎日、東京が1面トップ、各紙も社会面などで大きく報じている。

  ◇産経は、日本が無償支援しているロシア老朽原潜の核廃棄物処理施設建設がロシア側の規制によって3年以上も遅れたうえ、いまだに本格稼働できない状態に陥っていることが、米国の核拡散問題関係者の話から明らかになった、という記事。

  森総理にとって、来週は「最後の外交週間」。訪米後、24日には、シベリア・イルクーツクに飛び、プーチン大統領と北方領土問題を話し合うというが・・・。

  ◇情報技術を使った事業の仕組みを対象とする、ビジネスモデル特許の国内での出願件数が急増している、と日経が取り上げている。特許庁によると、昨年1年間で約1万5,000件、前年のほぼ5倍に膨らんでいる。インターネットによる決済業務や資材調達など本格展開に備えるため、IT関連の大手企業だけでなく、ベンチャー企業や非製造業に出願のすそ野が広がっているからだという。

  【経済・IT】
  ●危機ラインのマイライン
  利用者が事前に電話会社を選ぶマイライン(優先接続制)の登録状況を、電話各社でつくるマイライン事業者協議会が公表。それによると、1月10日から2月末までの登録者数は、全利用者の6. 6%に過ぎず、登録の動きは低調だった(毎日)。ただ、そのなかでも、NTT(9432)グループが全体で7割弱を占め、新電電を圧倒している。値下げ競争が激化するのは利用者にとってありがたいことだが、サービス内容がわかりにくいのが致命的。登録者を獲得するため、これからもあの手この手の新サービスを投入、各社間の消耗戦に一段と拍車がかかるのは必至だろう。

  ◇日銀が、ゼロ金利政策への復帰を視野に、一段の金融緩和に踏み切る見通し(読売)。株価下落が止まらず、3月末の企業決算への影響が深刻視されている上、米経済の急減速で日本国内の景気腰折れ懸念が一段と高まっているためで、追加金利緩和で、投資家や企業心理の安定を図るのが狙いというが、NYダウもついに1万ドル割れ、危機ラインを越えて、ようやく重い腰を上げるようでは・・・。

  【トピック】
  ●「首相を一人、募集中」
  デフレ危機下で行われた金属産業大手の春闘交渉。きのうの一斉回答でヤマを越した。昨年よりわずかに上回る賃上げ回答が示されたが、引き続き低水準で、景気の先行き不透明感を反映する結果となった。業界のなかでも、明暗をわけたのが自動車で、トヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)の「勝ち組」に対し、リコール隠しの後遺症が続く三菱自動車(7211)はベアゼロ、マツダ(7261)も前年割れ(毎日)。

  春闘を受けて、日経連の奥田碩会長が「人減らしをして収益を上げるだけでは経営者とはいえない」と、安易にリストラをする経営者に対しても糾弾しているが、契約社員、パートなど正社員でない労働者は、すでに被雇用者の3割以上、年俸制導入企業も多い。旧態依然の春闘交渉はますます時代に合わなくなってきた。

  ◇もう、「死に体の首相」のことを触れるのはバカバカしいので止めようと思ったが、朝日の天声人語に欧米のジャーナリズムがとらえたおもろい記事のことが載っているので、前振りの部分を紹介しょう。

  米タイム誌「首相を一人、募集中」と題して、日本の政治は歌舞伎のように筋が入り組んでいる、と書いた。英ガーディアン紙は、「日本の政治家たちは、能のようにあいまいな役回りを演じている」。「だけどモリが辞めちゃったら、だれがお笑いのネタを提供してくれるの?」という社説を載せたのは米サンノゼ・マーキュリーズ紙。森サン、第二の人生をお笑いタレントでデビューすれば、海外でも引っ張りダコかも・・・。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/15 09:16