FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~最悪の最悪は「超?最悪」

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●「底なし沼」の株安ニッポン・・・
  きのう13日の東京市場は前日の米株式市場の急落を受けて全面安の展開。日経平均株価の終値が16年ぶりに1万2000円台を割り込んだ。心配材料はアジア各地の株式市場も軒並み安となり、これまで堅調だったロンドンなど欧州市場も一時、年初来安値を更新、まさに、世界的な同時株安の様相が一段と鮮明になった。

  市場は来週の日米金融当局の金融政策を注目しており、追加的な “同時利下げ”があるかどうかが焦点で、「森首相とブッシュ米大統領による19日の日米首脳会談でも、株安が緊急課題になる見通し」(読売)。辞める総理と会談しても・・・。

  政府・与党はきのう夕、森首相を本部長とする「緊急経済対策本部」の設置を決定、日銀も19日の政策委員会・金融政策決定会合で「ゼロ金利政策」の復活を含めた一段の金融緩和を打ち出す見通し(東京)。

  「株安、銀行決算を直撃」(朝日)。保有株の期末株価が取得した簿価より5割以上下落すると、損失処理を迫られる「強制評価減」のルールが適用されるからだ。ここまで落ち込むと損失処理で業績が大幅に悪化することは避けられない。

  ◇一方、米国経済も「バブル」とも指摘されたハイテク株の急落は、企業の資金調達を難しくさせ、景気を支える柱だったIT分野の設備投資意欲も減退気味。これが、さらに株価や企業の業績を押し下げる悪環境が続いているが、日本企業でも、IT分野で、主要製品・部品の生産抑制の動きが出てきた。富士通(6702)とオリンパス光学工業(7733)がここへきて、パソコンとデジタルカメラの月間生産を大幅に減産。日立製作所(6247)も電子機器向けのマイコンの生産を10~15%縮小する、と日経が報じている。

  ◇言うまでもなく、きょうの各紙は1面、経済面に「底なし沼」の世界的な同時株安の動きを満載。まさに大恐慌さながらだが、毎日は、オウム真理教の教祖だった松本智津夫(麻原彰晃)被告の弁護団が、「訴訟能力が失われた可能性があるとして精神鑑定の実施を申し立てている」という記事。産経は、法務省が司法制度改革審議会での会合で「検察審議会の権限強化」を提案した、と取り上げている。

  【経済・IT】
  ●ハイテク株も急降下
  東証上場の主要ハイテク企業の株価下落も止まらない。日本を代表する多くのハイテク企業が昨年からの最安値を更新した。例えば、松下通信工業(6781)は99年12月に2万8400円、13日の終値は7340円。IT銘柄が市場をにぎわした1999年後半から2000年前半につけた最高値と比べると4分の1程度に値下がりしている銘柄が多い(毎日)。米ハイテク企業の株価が下げ止まらなければ「底値は見えない」状態がしばらく続く。

  米国の13日(日本時間14日午前)のナスダック、ダウ平均の株価は軒並み反発、やや持ち直したが・・・。

  ◇タクシー運転手やスーパーの店長ら景気に敏感な人たちに「街角の景気」を聞いたところ、判断指数は過去最悪、昨年8月以来7カ月連続で前月より悪化していることがわかった(読売)。一方、今回の株価急落で宮沢財務相は「別に意外と思わない」と評論家のようなのんきなコメント。赤いジュータンの密室にいるボケ老人には街角の景気感は伝わらない。

  ◇もっとも「不透明感はあるが設備投資を積極的に削ることは今のところ考えていない」。日米同時進行の株安など景気先行き不安が高まっているが、相も変わらず強気なのがトヨタ自動車(7203)。来期の連結設備投資も8,000億円台を維持する見通しという(日経)。春闘でもトヨタは7,600円で決着。他社を大きく引き離した。

  【トピック】
  ●「森降ろし」も盛り下がる
  きのうは、自民党大会が、東京の日本武道館で開かれた。「新世紀のスタートにふさわしい、自民党らしい盛大な党大会だった」と鈴木宗男総務局長。7月の参議院選挙に向けた「決起大会」として、ヤジや怒号が飛び交うこともなく、狙い通りの「シャンシャン大会」で終わった(毎日)。しかし、会場が一瞬どよめきに包まれたのはゲストに招かれたヤワラちゃんからの花束贈呈の時だけだったというから実に情けない。もっとも1万人以上の参加者とはいえ身内だけが集まった党大会、始まる前から期待はしていなかったが・・・。

  その森総理が党大会で事実上の退陣表明を行ったことで「森降ろし」の「続編」となる総裁選をめぐる党中央の綱引きが早くも始まった。「ポスト森」レースだが、「後継人事は混とんとしているものの、野中広務前幹事長を軸に展開」(毎日)という見方が主流。だが、「有力候補、やる気はあるけど、だんまり」(読売)。結局、総裁選まで「シャンシャン」とはいきそうにない(東京)。

  密室で選んだ首相を密室で引きずり降ろす、そんなオジサンたちの駆け引きはもうどうでもよくなってきた。一刻の空白も許されない。非常事態を告げる兜町の電光表示板に全神経を集中させなければ、日本はマジに危くなってきた。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/14 09:03