FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~「新聞は、疲れる」と森総理

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ● 朝日は「世紀の大誤報」・・・
  「聞きたいことは分かっている。朝日新聞に聞きなさい」。朝日が、きのう7日付朝刊で「森首相、辞意固める」と報じたことに対し、不快感たっぷりに否定した。さらに、参院予算委員会でも「その新聞は就任当初から、(私を)批判している。そうした方向に持っていきたいという願望で書いたのではないか」とも。

  さらに、森サン「私は最近、新聞を見ないようにしている。どうも、疲れる。新聞に動かされている感じもしないわけではない」と、苦し紛れに心境を語る。本人の否定だけでは不十分と考えたのか、小泉純一郎・森派会長は「党大会前に辞意を表明することはない」と否定、福田康夫官房長官も「世紀の大誤報」と、だめ押し否定した。

  それでも、きょうの産経は「執行部、森退陣へ包囲網、総裁選で後継選出、新政権は来月下旬」と報じている。産経といえば、森サンが、大学を出た後 “縁故”入社して、駆け出し記者になった古巣。ついに、その新聞社まで・・・。

  ◇名指しで「大誤報」と否定された、その朝日は、速水優日銀総裁が、動きの鈍い政治に「構造改革を推進することが、金融緩和の条件になる」と、都内での講演内容を取り上げている。為替介入による円安誘導や証券税制の見直しの検討にも言及するなど、金融政策が手詰まりとなる中で、政治圧力を受け続けてきた日銀が、異例の注文をつけた格好だが、財務省も「デフレ対策の責任は日銀にある」などと反発、一段の金融緩和をも求めている。

  ◇その金融・産業の再生につながる不良債権処理を後押し。再建型倒産手続きである民事再生法の活用を経営不振の中小企業などに促すため、経済産業省が4月にも新たな融資制度などを導入する方針を固めた、と日経が取り上げている。

  ◇きょうも毎日と東京は「外務省機密費流用事件」の続報。

  毎日は、松尾克俊・元要人外国訪問支援室室長が宿泊費を補てんするとして受け取った5億円が詐欺容疑にあたると判断、警視庁が立件へ詰めの捜査を急いでいると報じれば、東京は「週内にも逮捕状」を請求する方針を固めたという。いよいよ重大局面を迎えて、松尾元室長にたかっていた役人や政治家たちは?

  ◇きのうは「デフレ阻止へ緊急提言」というテーマで、異例の「社説?」を1面トップで載せた読売。きょうも1面の左肩から2面に続けてく企画記事として連載しているが、トップは、「中国で今後20年以内に約1万キロに達する高速鉄道網を建設する計画の策定に着手した」という記事を載せている。久しぶりに夢のある話題だが、日本を含めた受注争いが激化するのは必至。が、朝日が2面に「日本企業に対する中国人の視線が厳しくなっている」と、複雑な対日感情を抱いている中国ビジネスの現状を具体的に紹介しているのは偶然なのか?

  【経済・IT】
  ●組合もびっくり「ゴーン流」春闘
  日産自動車(7201)のカルロス・ゴーン社長が、日本型春闘交渉のあり方にも一石を投じた。今春闘で、組合側が要求した5.2カ月分の一時金(ボーナス)を満額支給することで妥結。しかも、今月14日の集中回答日前という異例の満額回答だ(産経)。一方、予想はされていたが「リコール隠し」の発覚後、経営危機に陥っている三菱自動車工業(7211)は、経営側が「実質賃下げ」を提案している(朝日)という情けない経営実態。

  しかし、先日は資本提携先のダイムラー主導による「ターンアラウンド計画」を発表、その巻き返しの目玉に、高給待遇の“老人クラブ”と言われている「顧問制度」の廃止を打ち出したものの、腐敗体質の病巣になっている「相談役」の廃止は見送られた。これではリストラされる9万5,000人の従業員は納得できない。三菱の経営陣にもゴーン流の「率先垂範」が求められているが・・・。

  ◇生保各社が生命保険料を一斉に値上げする。住友生命が先陣を切って発表、他社も追随する模様(毎日)。長期金利低下で資金の運用環境が悪化しているためだが、生保の経営もかなり深刻なようだ。

  ◇新ゲームボーイが登場。任天堂(7974)が新型携帯ゲーム機を発表した。この中で人気キャラクター商品の「ポケモンカード」を電子化し、新型機とつなぐ新しい遊び方を提供。「いつでも、何処でも、簡単に」というキャッチフレーズで、高度な技術に偏りがちだった従来型との差別化をはかることで、一人勝ちを揺るぎないものにするらしい(朝日)。

  【トピック】
  ●活字新聞の使命は終わったか?
  高速インターネットを利用して新聞を紙面のまま、パソコンに送って、画面上で読んだり、印刷ができる便利なシステムを開発、産経新聞がこの夏にもサービスを開始する(産経)。ネットを通じて、新聞をまるごと“電子配達”するのは日本で初めてという。読売が火をつけた「大きな活字」競争も4月から各紙が後追いするが、「新聞を見ない」という総理を筆頭に、活字媒体への読者離れは止めどもない。記事のスクープ合戦もさることながら、新聞社自体の生き残りレースも見逃せない。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm

2001/03/08 09:10