FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~不充分な公開に不満爆発

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●査問会議を開いても・・・
  事故発生から9日目。ハワイ・オアフ島沖で米原子力潜水艦と衝突、海底深く沈んでいる「えひめ丸」の映像が公開された。

  無人小型探査艇「スコーピオ」が水深約600メートルの海底で撮影したものだが、18時間以上にのぼるビデオ映像のうち、行方不明者の家族らに公開したのはほんの35分だけ。マスコミにはわずか3分。「船の傷隠している、見たかった映像なく」(毎日)と報じているように、そこには損傷部や衝突痕はほとんど映っておらず、米側への不信感をぶつける家族も多かったという。行方不明者の家族にしてみれば、ノーカットで見たかったのは当然で、これでは、一刻も早く船体を引き上げてもらうしかない。

  苛立つのは事故原因の究明も後手にまわっていることだが、米側もようやく重い腰を上げた。米海軍太平洋艦隊のトーマス・ファーゴ司令官が17日、記者会見し、査問会議(特別審査裁判所)を設置すると表明。査問を受けるのは原潜艦長ら3人で、軍事法廷への刑事訴追をするかどうかについて勧告を出す。

  読売、産経、毎日、東京の4紙が「えひめ丸」沈没関連の記事とビデオ映像の写真を1面トップで取り上げているが、読売だけが行方不明者の家族から提供された衝突の跡とみられる船体の亀裂がはっきり見える写真を掲載している。こういうのもスクープ報道と言えるのか?

  ◇朝日は、沈没寸前の森内閣。朝日の世論調査で「ついに森内閣の支持率が9%、前回1月調査の19%から急落した」と報じている。ちなみに戦後のワースト内閣支持率は、リクルート事件で退陣表明直後の竹下内閣が7%でトップ。森内閣はそれに次ぐ低い支持率。

  自民党森派会長で次期総理の本命・小泉純一郎元厚相は「頭を代えただけではダメ」と「森降ろし」をけん制しつつも「自民の大転換が必要だ」と強調。ただ、自民党内部にも「もはや森首相では政権はもたない」との判断が大勢を占めており、いよいよ退陣は避けられない情勢だ。もっとも、「解散権を持つ首相が続投の意志を示せば、無理やり総辞職に追い込むことはできない」としており、かつてロッキード事件の真相解明に積極的で、当時の田中派との党内抗争を続けた三木内閣は、退陣するまで1年近くに及んだ、と読売が解説している。

  ◇日経は、日本の携帯電話機メーカーが海外市場で販売攻勢をかける、という記事。東芝(6502)が2001年度から欧州で販売を始めるほか、松下通信工業(6781)も海外向けの販売台数を3割増やすなど強気の計画を立てている。世界中どこでも利用できる次世代携帯電話サービスが国内で5月から始まるのに続き、欧州でも年明けから本格化するのを受けての先制攻撃。攻めまくるのもいいが、かつての自動車業界のように、貿易摩擦の新たな火種にならなければいいのだが・・・。

  【経済・IT】
  ●日本の “老婆”にムチ打つG7
  「物価の下落が続き景気の下方リスクが残っている」。イタリア・パレルモで開かれていたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明は、日本に対して名指しで景気回復の遅れとデフレ傾向に強い懸念を示す厳しいものとなった。苛立ち隠さぬ欧米諸国は、ご老体にムチ打って会議に臨んだ宮沢、速水の両首脳に対し、いたわるどころか「潤沢な流動性供給を引き続き確保すべきだ」との注文まで突きつけた。

  日銀は会議前に公定歩合を年0. 5%から史上最低の年0.35%への引き下げと、新たにロンバート型貸出制度を打ち出したが、評価は低い。「追いつめられた日銀」(産経)は、「不良債権の最終処理を推進」(日経)する一方で、構造改革に伴う痛みを軽減するためにも金融緩和が浸透するような政策を推進せざるを得ないだろう。

  ◇情報技術の進展に伴い、インターネット犯罪やシステムダウンで受けた企業や個人が「加害者化」するリスクが増えてきた、と日経が取り上げている。電子メールで送られたウイルスが第3者に自動転送されて相手に被害を与えたり、電子商取引システムの故障で利用者から賠償金を請求されるケースが目立っているという。セキュリティー対策を怠っていると、二重の損害を受けることになりかねないと警告している。

  【トピック】
  ●男も女も高橋スマイル
  青梅市で行われた市民マラソンでシドニー五輪の金メダリスト、高橋尚子選手が女子30キロで日本最高記録をマークして快走。一方、男子の東京国際マラソンでは、富士通(6702)の高橋健一選手が優勝した。きょうのスポーツ面は「高橋」という活字が踊っているが、東京国際マラソンを主催した産経は1面でも「えひめ丸」のビデオ映像よりも大きく、高橋健一選手のゴール前のスナップ写真を掲載していた。

  ◇「社会人も “お茶の間留学”」(産経)。管理職の昇進条件に語学力をあげる企業、リストラに負けない資格取得に目覚めた社会人を対象に、自宅で好きな時間に教室と同じ授業がテレビ電話システムで受けられる在宅レッスンを採り入れた学習ビジネスが花盛りという。金融やIT関連の講座も人気があるそうだが、そう言えば、フランスの企業と提携した某自動車メーカーの管理職が、東京・お茶の水のフランス語学校に密かに通って特訓している話を聞いたことがある。涙ぐましいが、修得できる頃まで、その会社が存続しているかどうも疑わしい。

  [メディア批評家 増山 広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm


2001/02/19 09:07