FINANCE Watch
メリルの日本法人で人材大量流出?~2社統合を引き金に

  世界最大の証券会社、米メリルリンチの日本法人である「メリルリンチ・ジャパン」(メリルリンチ証券)と「メリルリンチ日本証券」の2社が、今年3月に統合され「メリル日本」として新たなスタートを切る。法人部門とリテール部門を一本化することで事業基盤を強化しようというわけだが、こうした狙いとは裏腹に、「法人部門の人材が大量に流出するのでは」との観測が流れ、業界関係者の注目を集めている。相場に強気の姿勢を示す「牡牛」をシンボルマークに掲げるメリルだが、世界的な“巨牛”の内情を覗くと、日本市場で圧倒的な強みを持つ法人部門が難しい局面に直面している姿が透けて見える。

  ●ボーナス支給日に何が?
  「ボーナスの支給日にウチに来たら、面白い光景が見られるかも」

  皮肉交じりにこう語るのはメリル・ジャパンの株式取引部門の中堅社員。同社の年間ボーナス支給は、2月上旬か中旬の初めに予定されている。

  外資系金融機関のボーナス日は、報酬をもらってから他社に移籍する人間が何人出るかを計る“イベント日”として知られている。人材の移動が活発な外資企業では「辞める」「残ってくれ」と様々な人間模様が交錯するのが通例だ。メリル・ジャパンにとって、今年の支給日は「特別な日」になり、「尋常でない数の社員が辞める」と、この中堅社員は語る。

 米系の情報サービス会社トムソン・ファイナンシャルによると、日本企業絡みのM&A(買収・合併)におけるファイナンシャル・アドバイザー(FA)ラインキングでは、メリル・ジャパンは1999年に続き2000年も2位の座をキープ。当然のことながら、法人部門のボーナスも良い中身が予想されている。

  しかし、「今回のボーナスを最後にメリルの日本拠点では当面ボーナスが出なくなる」(債券部門関係者)との噂がまことしやかに流れているのだ。なぜか。

  ●法人部門の利益で赤字を補填?
  法人部門のメリル・ジャパン内では、リテール部門のメリルリンチ日本証券との統合が実施されれば「法人の利益がリテールの赤字補填に向けられる」(同)との観測が根強い。

  1998年、旧山一証券の社員約2,000人を引き継いで営業を始めた「メリル日本証券」は、立ち上げ費用がかさんだため、初年度から赤字続き。野村証券(8604)が個人営業の手本とした「資産管理型営業」の収益は、今も右肩上がりに転じる気配がない。

  このため、メリル・ジャパン内では、「会社側は、『統合後も法人、リテールの各社長がダブルでトップに就任する上に、給与もそれぞれ別々の体制でいく』と説明しているが、いつまで続くか疑わしい」(別の債券関係者)との不安が広がり、今年のボーナス支給を境に大量の人材が流出するのでは、との憶測につながっている。

  ●発言権増すリテール部門
  しかし日本には、本国で後発組の「法人部隊」が最初に進出。本国のような証券会社ではなく、投資銀行の色彩が濃い。また、法人部門の社員には、自分たちが日本市場を開拓してきたとの自負が強く、今回の統合では「収益を上げてもいない部門の発言権が増大する」(同)と、リテール部門に対するアレルギーが強い。これが人材の大量流失観測の根底にあるわけだ。

  こうした事態をライバル各社が放っておくはずもなく、「水面下で相当数のディール(移籍交渉)が進行している」(ヘッドハンター)。ボーナス支給を境に、先のFAランキングを大きく狂わすような人材流出劇が、メリルリンチを舞台に展開される可能性は否定できない。

■URL
・メリルリンチ日本証券
http://www.mljs.co.jp/
・メリルリンチ・ジャパン
http://www.mlj.co.jp

(相場英雄)
2001/01/31 12:23