FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~2時間50分の徒労

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●隔靴掻痒の外務省報告書
  外務省の元幹部がネコババした「公金」って何?

  報告書には、こんな簡単なことも書かれていない。100人を超える記者で溢れる会見場の熱気もあったのだろう。河野外相と外務省幹部の記者会見は、「2時間50分という異例のロングランとなった」(毎日)。

  が、外相と阿部知之官房長の回答は、曖昧かつ要領を得ない。当然である。肝心なことは最後まで隠し通すつもりでいたのだから。

  かくして、マラソン会見は報道陣と外務省の我慢比べ、成果の乏しい消耗戦に終わった。

  新聞各紙は、きょうの朝刊に報告書の全文を掲載しているが、きのう(夕刊)の要旨で十分。きょうは会見の全やり取りを掲載すべきだった。読者の怒りを駆り立てるには、その方が効果的だからだ。

  機密費流用疑惑をトップで報じているのは朝日、毎日、産経、東京。朝日によれば、自民党の外交関係合同会議は、外務省の報告書の了承を見送ったという。

  理由は、「調査が甘すぎる」。完全黙秘に近い形で幕引きを図ろうとした外務省と首相官邸の収拾策が、“身内”に却下されたわけである。

  このニュースをトップに持ってきた朝日のセンスは評価できるが、社説はいただけない。

  「こういう時こそ、政治主導の出番ではないか。首相自らが、内閣官房や外務省に機密費に関する資料を公表するよう指示し、制度の見直しに取り組んではどうか」

  25日にスイスのダボスで開幕した「世界経済フォーラム」(ダボス会議)のことしか眼中にない森喜朗首相には、文字通り「馬耳東風」の忠告。紋切り型の、つまらない社説である。

  ◇金融庁が生命保険会社の監督体制の見直し案がまとまった。日経によれば、財務の健全性を示す「ソルベンシー・マージン(保険金の支払い余力)比率」に国内債券や外国有価証券、非上場株式の含み損益を反映させ、「比率が経営状況を正確に映すようにする」という。

  保険会社が支払い余力を甘めに算定できないようにし、「健全生保」と「危ない生保」を見分ける客観的な判断基準とされている同比率への信頼を回復させようというわけだ。

  ◇読売は、KSD事件の続報。

  【経済・IT】
  ●“川下”に走る商社
  丸紅(8002)がダイエー(8236)への資本参加方針を固め、伊藤忠商事(8001)も西武百貨店とプライベートブランド(PB)商品の共同開発を発表するなど、「大手商社が流通業界との関係強化を図る“川下戦略”に走っている」(毎日)。

  流通の中間段階に位置し、中継ぎの口銭稼ぎで生きてきた商社が“川下”に手を伸ばす理由は、「BtoB」「BtoC」の直接取引が進みビジネスの機会が減少しているからだ。が、卸売業の商社がそう簡単に小売業に馴染めるものではない。毎日も「“異種交配”で花開く時期があるにしても、しばらく先になりそうだ」との見方を示している。

  ◇自動車大手5社の2000年の生産・販売・輸出実績によると、トヨタ自動車(7203)の世界生産台数が初めて500万台を突破した。500万台突破は、米国のGMとフォードに続いて3社目。やっぱりトヨタは強い。

  ◇東京によれば、イランのアザデガン油田開発への支援を検討している石油公団が、既にチームを組んでいるインドネシア石油と石油資源開発のほかに、サウジアラビア・カフジ油田の利権失効でお先真っ暗のアラビア石油(1603)にも参加を求める方針を固めた。

  アラ石については、以前から同油田プロジェクトへの参加が取り沙汰されており、株価も参加を見込んだ動きを示していた。報道通りの展開となれば、株価はさらに上昇する可能性があるが、アザデガン油田の埋蔵量や原油の質などに疑問を呈する向きも・・・。

  【トピック】
  ●女性用も・・・
  大正製薬(4535)が、男性向け発毛剤「リアップ」を女性にも使えるようにするための臨床実験を開始した。

  米国では、男性用と同じ成分の製品が販売されている。日本でも薄毛に悩む女性が増えており、女性も使えるとなれば、「リアップ」の売り上げはさらに伸びるだろう。

  ◇この女性は薄毛とは無縁? 毎日の1面に吉永小百合の写真が掲載されている。毎日芸術賞の特別賞を受賞したそうだが、お手盛りの記事などどうでもいい。小百合サン。相変わらず美しいですな。

  この写真に見とれ、原稿の執筆が遅れてしまった。

  [メディア批評家 増山 広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/01.htm

2001/01/26 09:02