FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~流用した機密費の出所は?

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●周回遅れのサバイバル
  日本国内には1万1,000もの旅行会社があり、“口銭”稼ぎにしのぎを削っている。

  もともと過剰状態なのだから、当然のことながら競争は厳しい。おまけに格安ツアーを売り物にした新興勢力が台頭。さらには、航空会社のチケット発券手数料の引き下げやネット直販の普及などで収益環境はますます悪化している。

  合従連衡の気運も高まらず、どうやって共倒れを防ぐのかと思っていたら、業界2位の近畿日本ツーリスト(9726)と第3位の日本旅行がようやく合併で合意。きょう正式発表、と日経が報じている。

  同様の記事は読売にも掲載(準トップ)されており、こちらの方は、JR西日本系のTiS(第11位)を加えた3社が「2段階で3社合併することで最終合意した」と報じている。ともあれ、他業界に比べ出遅れた分だけ再編の速度は、・・・速まるだろう。

  ◇“真っ当”な経済記事を最初に紹介したのは、当サイトが経済ニュースを中心とするサイトだから。読者の目下の最大関心事は、何と言っても公金ネコババ事件だろう。

  領収証不要の外交機密費(外務省報償費)を個人口座で管理、私腹を肥やしていたとされる外務省幹部の「外交機密費流用疑惑」の続報が、読売と毎日の1面トップに掲載されている。

  注目すべきは、毎日の記事。外務省幹部の銀行口座に入っていた約4億円の公金のほぼ全額が、実は外交機密費ではなく、官房長官が金庫を管理する官房機密費(内閣官房報償費)だったというのだ。

  事実なら、ビックリ仰天。新聞記事の見出しも、今後は「外交機密費流用疑惑」から「官房機密費流用疑惑」に変えなければならない。

  くだんの幹部は官房機密費をどうやって懐に入れたのか。毎日によれば、「首相の外遊時に官邸を訪ねて費用を現金で受け取り、それを入金していた」。賄賂の授受のように、官房長官室で現ナマを受け渡していたというのだから、驚く。

  外交機密費以上にタブー視されてきた官房機密費にまで問題が及ぶことになれば、事態の収拾は容易ではない。

  民主党が疑惑解明チームを設置、徹底追及の構えを見せているが、この外務省幹部が官房機密費を扱い出したのは1993年10月。ちなみに当時の政権は、民主党の面々も加わった細川連立政権で、官邸の金庫番である官房長官を務めていたのは同党の大御所、熊谷弘代議士だった。

  ◇朝日の1面トップは、KSD事件の続報。財団法人「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD)から政界に渡った資金は、20億円を超えるという。

  受託収賄罪で逮捕された小山孝雄容疑者(参院議員)のほかにも、賄賂を受け取った議員がいる可能性はあるが、職務権限と対価の因果関係が立証できなければ捕まえようがない。東京地検の捜査に期待したいところだが、政治アナリストの北光一氏が月曜日の「日本の政治を読む」で断じていたように「トカゲの尻尾切り」で終わるのか。

  ◇産経は災害活動時の自衛隊の「協力義務」に関する記事、東京のトップは橋本龍太郎行革担当相の講演内容。

  【経済・IT】
  ●吹き荒れるか「フュージュン旋風」
  国内の市内通話を全国一律20円に設定して話題を集めたフュージュン・コミュニケーションズが、他社の半額程度の格安電話料金で国際通信事業にも参入する、と東京が報じている。米国への平日昼間3分間の料金は90円。マイラインへの登録、もう少し様子を見た方が良さそうだ。

  ◇ネット証券のサバイバル戦略も活発になっている。イー・ウイング証券と日本オンライン証券が17日、4月1日付で合併し「カブドットコム証券」として再スタートを切ると正式に発表。一方で、DLJディレクトSGF証券に続き、マネックス証券が30日から個人投資家向け施設夜間取引所「マネックスナイター」をスタートさせることを明らかにした(産経)。

  ◇持ち合い株の解消売りの影響を緩和するための「株価対策」を検討している自民党が、企業同士が市場を通さず、持ち合い株を等額交換できる制度の解禁について検討を始めた、と読売が報じている。読売は1面と経済面トップでこのニュースを大々的に扱っているが、最初に報じたのは毎日(17日朝刊)。後追いである。

  ほかにも、「金庫株」の解禁など様々な対策が検討されており、亀井静香政調会長は「株価は市場に任せておけ、とバカなことを言う人が自民党にもいるが、冗談ではない!」と意気軒昂だが、政治主導の株価対策が成功したためしはない。

  朝日が「反対」、読売が「賛成」の論陣をきょうの社説で展開しているので、読み比べていただきたい。

  【トピック】
  ●「公務多忙」につき・・・
  きのうの森喜朗首相と番記者のやり取りから。

  「伊吹防災担当相だけでなく、やはり総理にも行っていただきたかったという声がありますが?」「・・・」

  歴代首相が出席してきた兵庫県主催の阪神大震災追悼行事を、森首相が「公務多忙」(福田康夫官房長官)などを理由に欠席したことについて、東京と毎日が批判的な記事を掲載している。

  きのうの首相動静を見る限り、「公務多忙」は理由にならず、今月下旬にスイスのダボスで開かれる「世界経済フォーラム年次総会」(ダボス会議)の勉強に時間を割きたかったというのが真相だろう。

  では、首相は出席すべきだったのか?

  「1月17日だけ黙祷を行うことで、災害防止に対して真摯であるように見せるのは、ポーズ以外の何ものでもない」。社会面に掲載された田中康夫長野県知事の発言だ。

  たしかに、ポーズだけの黙祷は無意味である。儀礼的に追悼行事に出席するなら、行かない方がましだが、6,000人を超す死者を出した阪神大震災を風化させないためには、この国の防災の最高責任者としてたとえ1年に1度だけでも現地に赴き、黙祷を捧げようという気持ちがあっていい。

  森サン、アナタにこんなことを言っても、心は既に“一流の政財界人”が集うダボスに向いており、「馬耳東風」か。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm

2001/01/18 09:11