フルHDよりも解像度が高い、1920×1200ドットの液晶パネルを採用した「FlexScan S2243W-HX」
Webブラウザを2つ表示したところ、横にウィンドウを並べても、内容が重ならずに表示されている点に注目してほしい

 CPUのスピードに加えてメモリ・HDDの容量など、PCの快適性を左右するスペックは数あるが、その一つとして重視したいのがモニターの解像度だ。画面が広ければそれだけ多くの情報を一度に表示することが可能になり、何度もスクロールさせたり、あるいはウィンドウを切り換えたりといった手間を省ける。デジタルカメラやビデオカメラで撮影した静止画や動画を、精細に表示可能な点も高解像度モニターのメリットだ。

 ただ解像度が向上すると、それに伴ってモニター自体のサイズも大きくなってしまうため、これまでなかなか導入に踏み切れなかったユーザーも多いのではないだろうか。そうしたユーザーにぜひチェックしてほしいのが、ナナオから登場した「FlexScan S2243W-HX」である。

 FlexScan S2243W-HXの大きな特徴は、22.0型と比較的コンパクトなモニターでありながら、WUXGAと呼ばれる1920×1200ドットでの表示を実現していること。この解像度で一般的な24.1型モニターの表示面積と比べると、なんと約16%もの小型化になっているのだ。

 さらに22.0型モニターで一般的な1680×1050ドットという解像度と、FlexScan S2243W-HXの解像度である1920×1200ドットを比較すると、情報量に約1.3倍もの違いが生じる。特に横方向に200ドット以上広いため、余裕を持って複数のウィンドウを並べて表示できる。

 昨今増えつつあるフルHD解像度(1920×1080ドット)のモニターと比較しても、縦方向に120ドット分の余裕がある利点は大きい。わずか120ドットと考えるかもしれないが、Webブラウザーやワープロソフトなど、縦方向にスクロールする機会が多いアプリケーションでは、見通せる範囲の広さとして如実に表われる。また、表示画面の縦方向の長さは、ほぼA3判サイズの短辺と同一なため、DTP用途などにおいては完成品をイメージしながら作業がしやすくなる。

 高精細であることも、FlexScan S2243W-HXの大きなメリットだ。22.0型で1680×1050ドットの解像度を持つ一般的なモニターでは、画素ピッチは0.282×0.282mmとなる。画素ピッチとは1ドットを表わすのに用いられる面積で、小さければ小さいほど精細な画像および映像を得られる。同じサイズで1920×1200ドットの解像度を持つFlexScan S2243W-HXの場合、この画素ピッチは0.247×0.247mmとなっており、デジタルカメラで撮影した写真、あるいはフルHDなど高解像度の映像をきめ細かく表現されるわけだ。

川添的注目ポイント

 今回実際に試用していて、個人的に特にそのメリットを感じたのは実はゲームだった。昨今のゲームにおける表現力の向上は目覚ましいものがあるが、それを十分に実感するためには高解像度の液晶モニターは必要不可欠。FlexScan S2243W-HXの高精細さは、個々のゲームにおけるグラフィックスのこだわりまで十分に堪能できた。高解像度、そして高精細であることは、ビジネス用途だけでなくホビーユースにも大きなメリットをもたらしてくれる。

 液晶モニターを選択する際、ぜひ注目したいポイントとして表現できる色の範囲(色域)、あるいは色の再現性も挙げられる。当然広範囲の色を再現することができて、なおかつ再現性が高ければ、オリジナルの写真や動画が持つ雰囲気を損なわずにモニター上で鑑賞することができるからだ。

 FlexScan S2243W-HXはアドビ システムズが1998年に提唱した「Adobe RGB」と呼ばれる色域の規格において、95%もの色域をカバーしている。ちなみにこれは同様の規格である「sRGB」の色域を大幅に超えている。この広い色域により、一般的なモニターでは難しい鮮やかなグリーン、あるいは抜けるような澄み切った青をしっかり表現できる。

10bitガンマ補正により、色再現性を向上させている

 色再現性を高めるために搭載されているのが、「10ビットガンマ補正」の仕組みである。現在の液晶モニターはRGB各色を8ビット、つまり256階調で表現しており、256×256×256=約1677万色の表示が可能だ。FlexScan S2243W-HXでもこれは変わらないが、ただ入力された8bitの信号をそのまま出力するのではなく、10bit(1024階調)の信号に置き換え、最適な8bit信号に変換した上で表示するという処理を行なっている。これによって8bitの信号をそのまま出力するモニターに比べて高い階調特性を実現し、本来の色を引き出すことを可能にしているわけだ。

 「オーバードライブ回路」の搭載も、FlexScan S2243W-HXの特徴の一つだろう。PCの処理性能の向上やストレージ容量の拡大、あるいはブロードバンド環境の普及により、PCを使って気軽にさまざまな動画コンテンツを視聴できるようになった。ただ、以前の液晶モニターは応答速度に難があり、被写体が素早く動くような映像では残像が残り、表示品質が高いとは言い難かった。

 こうした問題を解決するために、多くの液晶テレビに搭載されるようになったのがオーバードライブ回路である。これは中間階調域の応答速度を向上させることによって残像感を軽減し、クッキリと見やすい映像の表示を実現するというもの。FlexScan S2243W-HXはこのオーバードライブ回路を搭載することにより、さまざまな映像コンテンツを高画質で楽しめる。とくにフルHDなど高解像度の映像をオリジナルサイズで再生する場面で、このオーバードライブ回路の効果をはっきり実感できるはずだ。

川添的注目ポイント

 もはやナナオお馴染みと言える、カラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」に対応しているのも心強いポイント。これを使えば、プリンターとモニターの色合わせが簡単かつ、わかりやすく作業でき、画面上の写真の色味とプリントアウトの色味が違うといった悩みも、手軽に解決できるのだ。EIZOのWebサイトで無償で提供されているが、さらにオプションで提供されているパッケージ版を利用すれば、専用の測色センサーを利用してより簡単なカラーマッチングと色環境の維持が可能だ。

 解像度や表示品質に加え、使い勝手にも注目したい。とくに製品によって差が生じるのが、モニター位置の調整範囲だ。

 液晶モニターによっては、高さ調整をパーツの付け外しによって行なうため細かな調整ができなかったり、あるいは左右回転(スウィーベル)や上下の角度(チルト)の調整範囲が狭い、あるいはまったくできないといったことがある。このため場合によっては最適なポジションにモニターを設置することができず、身体に不要な負担をかけるといったことにもなりかねない。このように位置調整の機能は、液晶モニターにおいてきわめて重要なポイントなのだ。

 FlexScan S2243W-HXでは、「FlexStand」を採用することにより液晶モニターの柔軟な位置調整を実現している。まず高さ調整は、可動部の最大昇降幅が225mmで、チルト操作との組み合せによって液晶モニター自体を机などに接地することも可能だ。目や肩、首への負担の軽減につながる、見下ろす位置にモニターをセッティングできるのは大きな利点だ。

 
FlexStandでは、モニターの高さをこれだけ変えられる
ワープロやWebブラウザーで長い文書を見るときに、即座に縦回転できるのは便利

 さらにスウィーベルは左右各172゚、チルトは上方向に30゚調整できる。とくに左右に大きく回転できるのは便利で、座る位置に合わせて液晶モニターの向きを気軽に変えられる。さらに縦回転にも対応しており、モニターを縦位置にすることが可能だ。Webブラウザーやワープロソフトなど、縦に長い文書を表示したり編集したりする際に役立つのはもちろん、背面にある各種端子のケーブルを抜き挿しする場面でも重宝するだろう。

 モニターを最適な位置に動かせるということは、言い換えれば自分も好きな位置から見られるということ。たとえばリラックスして映像作品を楽しむといった場合などは、椅子の背もたれに身体を預けながら液晶モニターを見たい。こうした場合はモニターの位置を少し高めにした方が見やすい。一方、集中して長時間作業する際は、首への負担を軽減するために見下ろす位置で使いたい。つまり、FlexStandの柔軟な位置調整によって、ユーザーの姿勢の自由度がグッと高まるというわけだ。たかがスタンドと思うかもしれないが、柔軟性が高ければPCとの向き合い方は大きく変わる。その意味でFlexStandの持つ魅力は極めて大きい。

川添的注目ポイント

 調整範囲の広さだけでなく、力を入れずとも軽く動かせる点にも注目したい。もし調整に力が必要だったり、そもそも大きな手間が掛かるようであれば、場面に応じて位置を調整しようなどと思わず、そのままの位置で使い続けるだろう。しかし、このFlexStandは非常にスムーズに位置調整ができるので、その時々の状況に応じて気軽にポジションを変更できる。可動範囲が広いことと相まって、さまざまな状況に対応できる柔軟性を実現しているということだ。

 画面の調整項目が豊富に用意されているのも、FlexScan S2243W-HXの大きな強みとなっている。輝度やコントラストといった一般的な項目は当然カバーされているほか、「Pictureモード」、「sRGBモード」、「Movieモード」、「Textモード」などの表示モードが用意されており、利用するアプリケーションなどに応じて輝度やガンマ、色温度をワンタッチで最適化できる。なおアプリケーションごとに最適な表示に自動的に切り換えることも可能だ。

 また、調整機能で注目したいのが「超低輝度モード(EyeCareモード)」の搭載である。これは目に大きな負担がかかる暗所での作業、あるいは明るいコンテンツを長時間見続ける業務などにおいて、疲れ目を抑制することを目的に搭載されている。さらに輝度調整は100:1の範囲で最大輝度から最低輝度まで調整可能であり、状況に応じて最適な輝度に調整できる。

 周囲の明るさに応じて輝度を調整する、「Auto EcoView」機能も組み込まれている。これは液晶モニター下部に搭載されている外光センサーを利用して明るさを判断し、適切な輝度に自動的に調整してくれるというもの。まぶしすぎ、あるいは暗過ぎることによる目への負担の増大を軽減してくれるうれしい仕組みだ。

 
外光に合わせていちいち調整するのは面倒だが、Auto EcoViewなら自動で調整してくれる

 目に優しいという観点で、もう一つ特筆したいのがノングレアパネルを採用していること。光の反射や写り込みが目立たないため、光の反射や映り込みがほとんど気にならない。こうした見えづらさも目への負担につながるため、特にモニターを見続ける機会が多いのであれば、ノングレアパネルであることのメリットはきわめて大きい。

 装備面を見ていくと、入力端子として用意されているのはDisplayPortとDVI-D、D-Sub 15ピンの3系統。特にデジタル入力が2系統装備されているため、2台のPCを接続したいといった場面でも画質に妥協する必要はない。LINE IN端子も装備しているため、PCのLINE OUT端子から出力した音声をFlexScan S2243W-HXを経由してヘッドホンで聞くといったこともできる。

 
DVI-DとD-Sub 15ピンに加え、新たな規格として広まりつつあるDisplayPortにも対応。さらにUSBハブとしての機能も備える

川添的注目ポイント

 地味に嬉しいのが、DisplayPortの対応だ。DisplayPortは映像信号に加えて音声信号も出力できるので、DisplayPort経由で入力された音声をヘッドホン端子やスピーカーから出力することができる。PCからの映像・音声出力を1本のケーブルでまとめられるのは便利だ。

 今回FlexScan S2243W-HXを実際に使っていて感じたのは、液晶モニターとしての基本性能の高さ、そして身体への負担を軽減するための細やかな配慮だ。

 基本性能の高さを特に感じるのは、デジタルカメラで撮影した写真、あるいはビデオカメラで録画した映像を再生する場面だ。たとえば風景写真において、木々の緑、あるいは空や海の青など微妙なグラデーションが的確に表現されており、撮影したときの風景がリアリティを持って再現される。画質調整項目も豊富に用意されているため、状況に応じて最適な色で鑑賞できるのも利点だ。

 身体の負担を軽減するという点で象徴的なのが、出荷時点でAuto EcoViewが有効になっていること。単純に見栄えを考えた場合、最大輝度で出荷したほうがユーザーに大きなインパクトを与えられる。ただ、当然明るすぎればユーザーの目に負担を強いることになってしまう。FlexScan S2243W-HXはあえて高輝度の状態で出荷せず、ユーザーが初めて触るときから最適な輝度で表示できるAuto EcoViewを利用することで輝度調整の手間を省き、さらに目への負担も軽減しているわけだ。

 さらに使い勝手のいいFlexStandを採用している点もぜひ特筆しておきたい。購入した最初に調整して以来、モニターの位置を変えたことはないというユーザーは多いと思うが、実際にさまざまな姿勢で使うことを考えれば、それに合わせてモニターの位置も変えるべきである。しかし面倒だからと同じ位置で使い続ければ、当然身体の負担として跳ね返ってくる。身体のことを思うのであれば、スタンドにもこだわって製品を選ぶべきであり、その意味でFlexScan S2243W-HXは極めて魅力的な製品なのだ。

 そして、これだけ高い次元で数々の機能を融合していながら、EIZOダイレクトでは税込5万9800円とお買い得な価格設定であるのも見逃せない。このコストパフォーマンスの高さも含めて考えると、文句なしに万人にオススメできる貴重な液晶モニターだ。

(Text by 川添 貴生)

●今回紹介したモニター

FlexScan S2243W-HX

22.0型の画面にWUXGA表示を実現。DisplayPortを含む3系統入力を搭載した広色域対応モニター。モニター位置の調整範囲が広いフレックススタンドを搭載した新モデル!

販売価格:¥56,800(税込)

関連リンク
■FlexScan S2243W-HX
http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cS2243W/?tab=0
■EIZOダイレクト
http://direct.eizo.co.jp/
■株式会社ナナオ
http://www.eizo.co.jp/
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