FlexScan EV2334W-T
(左)Power Resolution OFF、(右)Power Resolution ON。画面はCAPCOM「ストリートファイターIV」より。背景の木々の描画や、キャラクターの衣服・髪の毛の描画などに注目

 FlexScan EV2334W-Tのキャッチフレーズは「今度のEIZOにはPowerがある。」だ。このキャッチフレーズのPowerとは、「動画にPower!」、「静止画にPower!」、「Power offでEco!」の3つを示しているのだが、このうち「動画にPower!」の核となるのが「Power Resolution技術」だ。これは、入力された映像信号にナナオ独自のチューニングを施すことによって、画像の解像感を強調するとともに、細部までクリアな映像を表示するというもの。Power ResolutionをON(度合いは3段階で調整可能)にすることで、画像内の境界線部分や、細かな模様が描き込まれた背景部分などがくっきりと表示されるようになり、解像度が1段高まったかのような印象を受ける映像が表示されるのだ。

 Power Resolutionの効果はコンテンツによって異なるが、特にゲームやアニメ映像で発揮されるということで、実際にHDMIで家庭用ゲーム機を接続してPower Resolutionの効果を確認してみた。OFFの状態と比較してキャラクターと背景との境界線がくっきりするとともに、背景の描写も緻密になったような印象を受け、特にOFFの状態ではややぼやけて見えるレンガ状の壁や草が生い茂った地面、キャラクターの衣服など、ONの状態では元々はこんなに緻密に描き込まれていたのか、と思ってしまうほどの違いが確認できる。しかも、単なる境界線部分の強調処理では、ジャギーが増えたり、ギラギラとしたノイズが強調される場合があるが、Power Resolutionではそういったこともなく、かなり自然な映像が得られる点も特徴だ。加えて、画面全体に対して均一に解像感を高める処理を施しているのではなく、空の雲など、なめらかな表現が適した部分には処理がかからないといった配慮もあり、Power Resolutionを利用しても非常に自然な映像が表示されるのである。

 そして、Power Resolutionを利用しても、映像表示の遅延が全くといっていいほど発生しない点も忘れてはならないポイントだ。

 一般的にこの手の高解像度処理では、一度フレームバッファに映像を取り込み、1フレームごとに画像処理を施した上で実際の表示を行うために、どうしても映像信号の入力から実際の表示までにタイムラグが発生してしまう。テレビ番組などの映像を表示させる場合には、そういったタイムラグは全く気にならないものの、ゲームではコントローラの入力タイミングと映像の表示タイミングが少しでもずれると、快適なプレイが損なわれてしまう。

 しかし、Power Resolutionは、映像信号をバッファに貯めず、リアルタイムに処理を施すことで、遅延が全く発生しないように配慮されているのだ。もともとFlexScan EV2334W-Tでは、フルスクリーン表示の場合、入力信号が実際に画面に表示されるまでの遅延が1フレーム以下と、遅延が最小限に抑えられているが、Power ResolutionをONにしても遅延は1フレーム以下のままなのである。実際に、家庭用ゲーム機を接続して、入力タイミングにシビアなゲームをプレイしてみたが、Power ResolutionをONにした状態でも、全くと言っていいほど遅延を感じることはなく、非常に快適なプレイが可能だった。プロレベルのゲームプレーヤーでも納得の表示性能が実現されていると言っていいだろう。

 
Power Resolution OFF
 
   
左から「Power Resolution 1」、「Power Resolution 2」、「Power Resolution 3」。Power Resolution 効果は3段階から選べる

 Power Resolutionと並ぶ、FlexScan EV2334W-Tの新機能が「Power Gamma設定」だ。こちらは、ゲームに適した専用のガンマ設定を用意することによって、立体的でメリハリのある映像を表現する機能のことだ。  ゲームでは、全体的に暗めの映像となっていることが多く、中にはモニターでガンマ設定を高めて利用しているという人もいるかもしれない。ただ、無闇にガンマ設定を高めてしまうと、確かに暗部ははっきり見えるようになるものの、明部が明るくなりすぎるとともに階調が飛んでしまい、その部分が何も見えなくなってしまうといったことがある。

 しかし、Power Gammaを利用すれば、明部の階調飛びを抑えつつ、中間階調のコントラスト感を高める処理が施される。例えば、外光が差し込むトンネル内などのシーンでも、外の明るい部分の階調もしっかり保ったままで、光の届かない暗部のコントラストが高まり、くっきりと表示されるようになる。こちらも、実際にゲームをプレイしつつ確認してみたが、確かに暗部はくっきりと、また明部もはっきり表示され、立体感が高まるとともに、メリハリのある映像になったという印象を強く受けた。

 もちろん、ゲームによっては、ガンマ設定を高めることによって、雰囲気が失われてしまう場合もある。ただ、Power Gammaなら、不自然に明るくなりすぎることもなく、階調飛びも抑え、ゲームプレイ時には、Power Resolutionと同時にPower Gammaも積極的に利用したいと感じた。

 ちなみに、FlexScan EV2334W-Tには、「Text」「Game」「Cinema」など、コンテンツによって最適な表示モードを簡単に選択できる機能がある。「Game」モードを選択すると、Power ResolutionとPower GammaがONになった状態に設定されている(もちろんユーザーの好みに合わせて個別に設定変更することも可能だ)。

 
 
(左)Power Gamma OFF、(右)Power Gamma ON。画面は「バイオハザード5」より。特に背景の暗い部分が見やすく表示されている
23.0型、フルHD解像度のパネルを採用
バージョンが1.1となるEIZO EasyPIXは、新たにEV2334W/EV2333Wに対応する

 キャッチフレーズの2つめ「静止画にPower!」は、採用されている液晶パネルと、最高の表示品質を得られる機能のことだ。  FlexScan EV2334W-Tには、フルHD解像度(1,920×1,080ドット)表示に対応する、VA方式の23.0型ワイド液晶パネルが採用されている。  最近では、23.0型クラスのフルHD表示対応液晶モニターが2万円台と安価に販売される例が増えているが、そういった低価格液晶モニターでは、ほとんどがTN方式の液晶パネルを採用している。TN方式の液晶パネルは、安価ではあるものの、視野角が狭く、見る角度が少し変わっただけで画面の色合いや明るさが変化するという大きな欠点がある。

 それに対し、FlexScan EV2334W-Tに採用されているVA方式の液晶パネルは、視野角が水平・垂直ともに178度と非常に広いだけでなく、見る角度が大きく変わっても色合いや明るさの変化がほとんど発生しない。真横に近いような角度から画面を見ても、色合いが全くといっていいほど変化しないのは、さすがVAパネル採用の液晶モニターだと感心させられる。

 そして、デジカメ写真やWeb観賞など、表示させるコンテンツに応じたカラーマッチングを簡単に行える「EIZO EasyPIX」の最新版に対応している点も見逃せない。

 EIZO EasyPIXは、FlexScan用の表示調整ツールとしてすでに販売されているが、今回バージョンが1.1となり、センサーを利用したカラーマッチングに加え、センサーなしで簡易マッチングができる機能も追加されている(ソフトウェアは2009年11月25日にEIZOウェブサイトでダウンロード提供開始)。センサーを利用したカラーマッチングといえば、プロカメラマンや映像クリエイターなどをターゲットとし、表示品質を最大限追求した「ColorEdge」シリーズで実現されているが、FlexScan EV2334W-Tでは、EIZO EasyPIXの直感的な操作でカラーマッチングを実践できる。もちろん、液晶パネル自体の発色性能に違いがあるため、ColorEdgeと同等の表示性能が得られるわけではない。とはいえ、モニター表示とプリントの色合わせなど、簡単にカラーマッチングが行えるという点は、デジタル一眼レフを利用して写真を撮影するのが趣味という人にとって、大きな魅力となるはずだ。

チルト・スウィーベル・高さ調節が可能なTriStandを採用
 
接続端子は、DVI-D、D-sub、HDMIをそれぞれ1系統ずつ備える
正面にボタン類、スピーカーが並ぶ。明るさセンサー、人感センサーは中央に配置される

 3つのPowerの最後となるのが、「Power offでEco!」。これは、ナナオの液晶モニターを利用している人ならピンと来るかもしれないが、明るさセンサーを利用して、周囲の明るさに応じてバックライト輝度を自動調節する「Auto EcoView機能」と、人感センサー「EcoView Sense」を利用して、モニター前から人がいなくなると、自動的に電源をオフにする機能を組み合わせた省エネ設計のことだ。これらは、FlexScan EV2334W-Tで初めて搭載された機能というわけではなく、EIZOブランドの液晶モニターとしてはおなじみのものだが、エコ性能に注目が集まっている現在、他の液晶モニターに対するアドバンテージであることは間違いない。

 そして、FlexScan EV2334W-Tは、最大消費電力が約45Wとクラストップレベルの低消費電力を実現しているという点も見逃せない。いくら液晶モニターが省電力性に優れるといっても、大型になればなるほど消費電力も増える。そういった中で、最大45W程度の消費電力に抑えられている点は、エコに貢献できるのはもちろん、電気代を低く抑えられるという点からも魅力となるはずだ。

 映像の解像感を強調する「Power Resolution」と、メリハリのある映像を再現する「Power Gamma」、1フレーム以下の遅延などにより、ゲームプレイに最適な表示能力を実現するだけでなく、表示品質に優れるVA方式の液晶パネル採用、センサーを利用して簡単にカラーマッチングが行えるEIZO EasyPIX最新版への対応で、静止画もプロレベルの品質で楽しめ、さらに低消費電力かつ豊富な省電力機能でエコ性能にも優れると、様々な魅力が実現されているFlexScan EV2334W-Tだが、実はもう1つ、とっておきの魅力が残されている。なんと、これだけのスペックを実現しながら、EIZOダイレクトでの直販価格で49,800円と、5万円を切る価格で販売されるのである。このコストパフォーマンスは他を圧倒している。

 確かに、絶対的な価格だけを見れば、TNパネル採用の低価格製品には負ける。しかし、VA方式の液晶パネルを採用するとともに、ゲームや動画、静止画など、様々な用途に対応できる優れた表示品質や機能を備えていることを考えると、FlexScan EV2334W-Tの方に圧倒的な魅力があるのは間違いない。これだけの表示品質を持つ製品が、5万円を切る価格で購入できるとは、本当にいい時代になったものだとつくづく感心させられる。とにかく、ゲームをバリバリ楽しめる液晶モニターを探している人はもちろん、動画や静止画も高品質に表示させる液晶モニターを探している人にも自信を持っておすすめしたい製品である。

(平澤 寿康)

(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2008,2009 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)CAPCOM CO., LTD. 2009 ALL RIGHTS RESERVED.
●今回紹介したモニター

FlexScan EV2334W-T

VA方式の液晶パネルを採用し、ゲームや動画、静止画など、様々な用途に対応できるモニター。低消費電力かつ豊富な省電力機能でエコ性能にも優れる。

販売価格:¥49,800(税込)

関連リンク

■FlexScan EV2334W-T
http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cEV2334W/

■EIZOダイレクト
http://direct.eizo.co.jp/

■株式会社ナナオ
http://www.eizo.co.jp/

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