今回は、最新版のEIZO EasyPIXを、FlexScan SX2762W-HXで試してみた

 EIZOのホームページをみていたら、カラーマッチングツールの「EIZO EasyPIX」がアップデートされており、“Ver.2.0”になっていた。前回紹介したFlexScan SX2762W-HXは、EIZO EasyPIX同梱モデルが用意されており、なんとプラス5,000円でEIZO EasyPIXが手に入ってしまうのだ! あとからEIZO EasyPIXだけを買おうと思ったら、19,800円なのだ。これは絶対、対応モニターを買うときにセットで買うしかない! そこで今回は、前回レビューしたFlexScan SX2762W-HXを使い、最新版のEIZO EasyPIXの実力を試してみることにした。

 「カラーマッチング」……もうすでにご存じだと思うが、簡単にいうとPCモニター表示とプリンター出力などの色が同じように見えるように調整することだ。したがって、きちんと調整をしておかないと、同じ写真データでも、画面上で作りこんだ色と完成品の出力の見た目の雰囲気が全く違うということになりかねないのだ。以前、自分が撮った写真を自分のパソコンで確認し、出版社に届けたら、担当者から「色が違う!」とか、「明るい部分の階調が出てないぞ」「暗い部分がつぶれてるぞ」とお叱りがくることがあった。そのときは、わざわざ私のパソコンとモニターを持って行ったり、Photoshopなどの画像処理ソフトで「RGB」の数値を確認させて納得してもらった。もちろんモニターの性能が最重要で「PCケチってもモニターケチるな!」なのだが、写真を正しく表示させるために、モニターを最適に調整することも必要なのだ。

 それだけではない。残念なことにPCモニターは消耗品だ。といっても、PCよりは長く使えるのだが、表示が徐々に変化しているのだ。ご存じのように、モニターの光源は蛍光管だったりLEDだったりする。その光源が経年劣化したりと、ずっと一定ではないのだ。だからこそ、いつまでも同じ状態に保つためにEIZO EasyPIXを使った、定期的な調整がどうしても必要になってくるのだ。さっそく、FlexScan SX2762W-HXを、EIZO EasyPIXを使って調整してみたので報告しよう。

「EIZO EasyPIX」のセット内容

 EIZO EasyPIXのセット内容は、「測色センサーEX1」「EIZO EasyPIX Software」「製品マニュアル」という構成だ。ソフトウエアの「EIZO EasyPIX Software Ver.2.0」は2月9日に公開されたばかりで、「生まれたてのほやほや」なのだ。さらに、「FlexScan SX2762W-HXPX(EIZO EasyPIX同梱モデル)」も2月28日に発売になったばかりである。

 
これが測色センサーEX1だ
 
「測色センサーEX1」の裏にある測光部には測光窓が多数ある。内部にある多数のディテクタエンジンでモニター面の色や光を検出し、目的の色や明るさに近づけるのだ

 ソフトウェア「EIZO EasyPIX Software」のインストールは、同梱のディスクから行う。手順は至って簡単だ。なお、「EIZO EasyPIX Software Ver.2.0」だが、、EIZOのホームページから、常に最新バージョンを無償ダウンロードできるので、ときどき確認すると良いだろう。

   
まずはじめに、同梱のソフト「EIZO EasyPIX Software Ver.2.0(CD-ROM)」を光学ドライブに挿入する。
 
インストールは指示通りに進めれば何の問題もない。プログラムを置く場所などは変更できる。初心者は指示どおり進めるだけでいい。セットアップウィザードが開いたら「次へ」を選択する。
 
アプリケーションのインストールをするか聞いてくるので「インストール」を選択する。
   
インストールが終わり、自動でEIZO EasyPIXが起動するかと思ったら、こんなメッセージが!
 
すっかりUSBを繋ぐのを忘れていた。さっそくパソコンと「FlexScan SX2762W-HX」を同梱のUSBケーブルで接続し、再起動してから始めることにした
 

 まず「測色センサーEX1」をパソコンに繋がずにソフトを立ち上げて見ると、目視で白の調整をする「マッチング」モードのみが現れた! 早速試してみることにする。

   
3つの調整結果が保存できそうな小さな画面が開いた。最初なので「はじめから調整する」を選ぶ。
 
ここでは「測色センサーEX1」を繋げていないために、マッチングのための調整モードのみ現れる。「次に進む」を選択する。
 
画面右にある丸いGUIを使い、マッチングしたいプリンタの用紙の白と、画面の白が同じになるように調整する。目視でやる場合はこれで終了。調整結果に名前を付けて保存するのだ。

 確かに、環境光による白い紙の見え方をモニターで再現でき、ホワイトバランスはとれたようだ。しかし、階調の調整は行われない。また、作成されるプロファイルはモニターの経年変化が反映されないため、長期間使用したモニターでは、どうしてもマッチング精度が低下してしまう。高精度なカラーマッチングを目指すなら、やはり測色センサーをつないでモニター調整したい。そこで、次は「測色センサーEX1」を使い、完璧を求めてカラーマッチングしてみよう。

 「測色センサーEX1」を使うことで、用途別に用意された3つの調整モードと、自分で調整目標を自由に指定できる「上級者向け」から、目的にあった調整方法を選択できるようになる。

   
まずはじめに、「測色センサーEX1」をパソコンのUSBコネクターに繋げる。これで、見えなかった調整モードの選択ボタンが見えよるようになり、センサーを使ったマッチングができるようになる。
 
「FlexScan SX2762W-HX」には、USBハブの機能も搭載しているので、モニターのUSB downポートに「測色センサーEX1」を繋いでもよい。
 
「測色センサーEX1」を繋いだ状態での「マッチング」モード選択画面

 「測色センサーEX1」を繋いだ状態で選択できる調整モードには、「マッチング」「写真鑑賞」「Webなど一般」「キャリブレーション(上級者向け)」の4つがある。

 「マッチング」は、室内の環境光下で見るプリント用紙の白色を基準に、モニターの白を調整するモードだ。「写真鑑賞」は、自然光やストロボ光下に近い色の見え方へ調整を行うモード。「Webなど一般用途」は、一般的な液晶モニターや各種デバイスの色味に合わせて調整が行える、Webぺージでの写真の共有や閲覧などに適したモードだ。そして、「キャリブレーション(上級者向き)」は、Ver.2.0から新しく追加されたモードで、多くの設定項目から自分の求める調整目標を数値で設定できるようになっている。  では、それぞれの項目の手順を簡単に紹介しよう。

「マッチング」

   
まず、環境光下でプリント用紙の白色を「測色センサーEX1」を使い測定する
 
次に測定した色合いと明るさを、プリント用紙とモニター上の白が同じになるように目視で微調整する。右の丸いGUIにあるポインターを動かすことでモニター表示の白を調整することができるのだ。調整が完了したら、「次の手順へ」を選択する
 
センサー取り付け位置が表示されるので、そこに「測色センサーEX1」を設置する。
   
モニターをやや斜め上に向かせ、「測色センサーEX1」の測定部がモニター面にぴったり合うように設置。浮いてないことを確認し、「次の手順」を選択すると、測定が始まる。
 
測定は、画面上に白、灰色、黒、赤、青、緑、などの色のパッチを表示することで行われる。所要時間は約2分30秒だったので、ソフトウェア・キャリブレーションでの調整に比べると、はるかに短い時間で完了できたことになる。調整完了後、調整名を保存して終了だ。
 

「写真鑑賞」と
「Webなど一般用途」

「写真鑑賞」か「Webなど一般用途」を選ぶと、白い画面が表示され、自分が閲覧したいモニターの明るさを設定できるようになる。次に「測色センサーEX1」をモニターにセットして測定・調整を行う。明るさの調整以外は、上記と同様に自動で行われ、最後に調整名を保存して終了となる。

「キャリブレーション(上級者向き)」

   
「キャリブレーション(上級者向き)」を選択すると出てくるのがこの画面だ。まずは右上にある「プリセット調整目標」の中から、使用用途を選択すると、用途に適した調整目標が設定される。それを元に、自分の好みの設定値に変えればよい。設定項目は「輝度」「色温度」「色再現域」「ガンマ」の4項目だ。
 
次の手順は、ほかのモードと同様に「測色センサーEX1」による測定となる。
 
調整が終わると、「調整名」を決めて入力し、「適用し終了」を選択すれば終了だ。

 「EIZO EasyPIX」を起動すると表示されるメインコントロールパネルは、初期設定で自動的にタスクバーに収納されている。メインコントロールパネルの画面左側には、調整済みの設定を3つ保存できるタブがあり、タブを選択すれば、保存した調整設定にモニターを2~3秒で変更できる。以下は、私が使用する環境に沿って設定してみた3つの設定だ。

   
(1)は「キャリブレーション(上級者向け)」を使いキャリブレーションした。調整名を「Photoshop(Adobe RGB)」に。設定は、輝度:80.0cd/m2、色温度:5500K、色再現域:Adobe RGB、ガンマ:2.2にした。主にPhotoshopでの画像処理などに使う設定だ。
 
(2)も同じく「キャリブレーション(上級者向け)」を使いキャリブレーションした。調整名は「Web(sRGB)」に。設定は、輝度100.0cd/m2、色温度:6500K、色再現域:sRGB、ガンマ:2.2にした。Webページを見たり、原稿執筆やExcelなどの作業、そしてWeb用の写真レタッチなどはこの設定で行う。
 
(3)は「マッチング」を使いキャリブレーションした。調整名は「プリンターマッチング」に。設定は、色合い:(30,56)、明るさ:54%にした。

 カラーマッチングはしてみたが、設定色温度と実際の環境光との温度差などで、色が違って見えることがある。それを補うのが「微調整」で、定期的に設定した目標値にキャリブレーションを行い、モニターを最適な状態に保つのが「再調整」だ。

 「EIZO EasyPIX」では、起動後のメインコントロールパネルから、一度設定した調整項目に対して「微調整」と「再調整」を行うことができる。「微調整」を選択すると、目視による「白色調整と明るさ」の補正作業が行える。「測色センサーEX1」による再キャリブレーションで微調整は完了する。「再調整」は「測色センサーEX1」によって、過去に設定した目標値への再調整を行う。

   
「EIZO EasyPIX」のメインコントロールパネルから、「微調整」と「再調整」ができる
 
「微調整」は、まずこの画面で白色の調整を再度行う。「マッチング」モードでの調整については、調整パネルの右下にある「デスクトップ画面を表示する」ボタンを選択可能になる。「デスクトップ画面を表示する」ことで、Photoshopなどカラーマネージメント機能を持つアプリケーションで任意の画像を開き、実際の印刷色と比較しながら調整目標を微調整することができる。
 
任意のアプリケーション上での表示と、プリントアウトしたものとを比較しながら白の微調整ができるので、プリントとモニター上の写真とを近い色に調整できるのだ。
 
「EIZO EasyPIX」使用前
 
「EIZO EasyPIX」を使い「キャリブレーション(上級者向け)」でカラーマッチングした

 右の画像は、「FlexScan SX2762W-HX」の「EIZO EasyPIX」使用前/使用後の画面写真だ。わかりづらいかもしれないが、今回試用した「FlexScan SX2762W-HX」は、もちろん新品で劣化しているわけではないので、違いは設定した色温度を変えた分の色合いの違いだけだ。「EIZO EasyPIX」使用後の方が、赤みが抜けているのがわかる。これは室内の環境光を考慮したホワイトバランスをとったためだ。これで部屋の環境でバッチリ写真の色調整ができるようになる。そして、「画像処理」や「Webページ閲覧」「原稿執筆」などなど、PCでの作業目的別に瞬時に画面設定を変更できるのはありがたい! もう少し設定タブがあるならば、昼の外光が入る時間用と、夜の室内灯での作業時間用も用意したいところだ。

 また、瞬時に設定を変えても、表示がすぐに安定するのは「FlexScan SX2762W-HX」が搭載しているEIZO独自の輝度・色度安定回路のおかげだろう。作品作りにおいて、「FlexScan SX2762W-HX」と「EIZO EasyPIX」は、どちらも欠かせない武器になるだろう!

FORISシリーズで唯一「EIZO EasyPIX」に対応する「FORIS FS2331」

 さらに、今回は「FlexScan SX2762W-HX」でEIZO EasyPIXを試してみたが、人気のモニター「FORIS FS2331」もEIZO EasyPIXに対応している。ちなみに私は、リビング用にWebはもちろん、ゲームや動画を楽しむPCモニターが欲しいのだが、現在「FORIS FS2331」が私の第1候補だ。なぜなら「FORIS FS2331」は、FORISシリーズで唯一「EIZO EasyPIX」に対応しているからだ。

 色に妥協したくない私としては、遊びの場所でも、家族が使うにしても、ちゃんとした色合いや階調で見たいからだ。できの悪いモニターを使うと気になって仕方がないし、それがずっと続くと思うとゲンナリなのだ。しかもEIZOダイレクトで購入すれば、FORIS FS2331は、本体価格に9,000円プラスの53,800円で「EIZO EasyPIX セット」になる。おっと「FlexScan SX2762W-HXPX(EIZO EasyPIX同梱モデル)」と「FORIS FS2331」単品を買えば5000円プラスでどちらもカラーマッチングできるではないか! と、2台買ってしまうことにちょっと触手が動き始めた今日この頃なのであった。

若林直樹

雑誌、広告等の仕事の傍ら、ライフワークとして自然や癒される空間を求めて国内外を旅している。撮影対象はICチップからアフリカ象まで幅広い。デジタルカメラは1995年からコンパクトからプロ機までテストレビューに携わる。自宅ではフェレットをこよなく愛し、我が家で生まれた5匹と暮らす。いつかフェレットの写真集を出そうと企み中。HPはhttp://homepage2.nifty.com/nao-w/
●今回紹介したモニター

FlexScan SX2762W-HXPX(EIZO EasyPIX同梱モデル)

27型カラー液晶モニター FlexScan SX2762W-HXに、EIZO EasyPIXのソフトウェアと専用センサー EX1を同梱したお得なセット商品。それぞれ個別に購入するよりも¥14,800お得。

販売価格:¥129,800(税込)

 
●今回紹介したモニター

FORIS FS2331 + EIZO EasyPIXセット

FORIS FS2331に専用のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」を組み合わせたお得なセット商品です。購入後、すぐにプリンタとモニター表示の色合せが行えます。

販売価格:¥53,800(税込)

関連リンク
■EIZO EasyPIX
http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cEasyPIX/
■FlexScan SX2762W-HX
http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cSX2762W/
■FORIS FS2331
http://direct.eizo.co.jp/shop/c/cFS2331/
■EIZOダイレクト
http://direct.eizo.co.jp/
■株式会社ナナオ
http://www.eizo.co.jp/
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■プロも絶賛! FlexScan SX2762W-HX ~10bit表示で新たなステージがはじまる~
http://www.watch.impress.co.jp/eizodirect/sx2762whx/
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