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眼鏡だけど姿勢改善に役立つ「JINS MEME」 猫背可視化の衝撃

眼鏡だけど姿勢改善に役立つ「JINS MEME」、Androidで試してみた

国内だけで400店舗以上を展開するアイウェア販売店チェーンのJINSから、スマートフォン連携型眼鏡「JINS MEME」の第2弾モデルがリリースされました。およそ6年越しで登場する新モデルの魅力とは? 今回はAndroidアプリとの連携を試してみました。

見た目はフツーの眼鏡。ブリッジ部に「コア」

「JINS MEME」新モデルは、言わば“第2世代”にあたり、2021年10月に販売を開始しました。眼鏡とITの絡みと言えば、かつての「Google Glass」を思い出しますが、JINS MEMEのコンセプトは全く異なります。自分の身体状態をJINS MEMEに内蔵されたセンサーで計測し、姿勢や集中力の改善に役立てようという製品です。健康・ウェルネス系の製品と考えた方が良いでしょう。

そして重要なのが、レンズを度付きのものに交換できること。筆者は相当な近眼で乱視も少々入っているのですが、それでも十分対応できました。なおJINS MEMEはJINSの一部店舗および公式ECサイトで販売されています。価格は19,800円。初代モデルと比べてほぼ半額という価格帯も、本製品を語る上では重要なポイントです。

全くもってフツーの眼鏡

さて、眼鏡としてのフレームデザインは男女兼用の4種類で、それぞれ2つのカラーバリエーションが存在します。今回は、ボストン型のブラウンデミを試用しました。外観はリムやテンプルが少々太目ですが、そういったデザインの製品はそもそも存在しますし、まったくもってフツーの眼鏡です。

ただ、リムとリムを繋ぐブリッジ部分だけは、明らかに異色。一般的な眼鏡であれば、細めの針金といった風情ですが、JINS MEMEのブリッジは太く、さらに奥行きもあります。これがJINS MEMEの心臓部たる「コア」という部品で、ブリッジの裏側部分に固定されています。また鼻パッドはコアと一体構造になっています。

ブリッジ部が太いのがJINS MEMEの特徴
ブリッジ部の裏面
ブリッジ部を上から見ると、コア部の飛び出しがよく分かります

コアにはセンサー、無線、バッテリーなどのモジュールが内蔵されており、様々な数値の計測を担っています。なお眼鏡フレーム全体の重量は概ね20g台、コア部分が6gとなっていて、極端に重量バランスが悪いような造りにはなっていません。

実際に装着してみると、重さは気にならないものの、やはりブリッジ部の太さは目立ちます。特に筆者は前髪がないので、自分で鏡を見た限りでも結構な違和感を感じます。個人の印象としては、仕事などで初めて挨拶・面会する席での着用は避けた方が無難かと思います。相手がガジェット好きの方なら、話が盛り上がるかも知れませんが……。

JINS MEMEを装着して自撮り。正直、ブリッジが目立ちます
こちらは筆者が普段に見つけている眼鏡での自撮り

なお、JINS MEMEの利用には充電が必要です。専用の充電クリップをコア部で挟み込み、microUSBケーブル経由で約3時間充電すれば満タンになる仕組み。そして連続使用時間は最大約24時間(ジャイロセンサー使用時は約11時間)ですから、毎日の就寝時に枕元で充電するかたちとなるでしょう。

これが充電クリップ。microUSBケーブルを接続して使います
コアを充電クリップで挟むと、レンズ面がテーブルから浮く仕掛けになっています

アプリ利用が基本。Android版も公開

JINS MEMEはiOS/Android両対応ですが、本稿執筆にあたっては基本的にはAndroid版を利用しました。実際には、Google Playストアで配信されている「JINS MEME」アプリをインストールすることになります。

ちなみにこのAndroid版は、iOS版アプリ公開から約1カ月半後の11月下旬に公開され、年明けの2022年1月中旬時点では「ベータ版」の位置付けになっています。

アプリの利用は月額500円/年額5,000円のサブスク制で、初年度1年間は無料。決済にはGoogle Playの「定期購入」を使います。

Android版「JINS MEME」アプリの配信もスタート
サブスク料金の決済はGoogle Playから

利用にあたってはまずJINS MEMEとスマホ(アプリ)をペアリングさせますが、基本的にはアプリの案内に従って進めていくだけ。ペアリングボタンを長押ししたりする手間はありません。Bluetooth端末のセットアップは年々簡単になっていますが、JINS MEMEもまさにその流れを汲んでいます。

なお、JINS MEMEには緊急用のリセットボタン(ペン先等で押し込むタイプ)を除くと、ボタン類は一切なく、よって電源を任意に切るという概念もありません。一応、天地をひっくり返した状態で机上などに置いておくとスリープモードになって省電力にはなります。が、基本的には常時電源オン・気がついたらこまめに充電というサイクルを前提に考えたほうがいいでしょう。

ペアリングはアプリ内で実施
ペアリングが完了すると、すぐにも瞬き時間や傾き検出がスタート

思わず感動、リアルタイムでの傾き度検出

ペアリングした後は、JINS MEMEを顔にかけているだけで自動的に測定が行なわれます。センサーは2系統あり、1つ目は3点式眼電位センサー。これによってまばたきと視線移動が検出されます。2つ目は6軸モーションセンサーで、身体の傾き具合が検出されます。

この2つのセンサーによって取得されたデータが統合的に扱われ、最終的にアプリ上では「Body」「Mind」「Brain」の3項目として確認できるようになります。

まず注目したいのは「Body」です。身体の傾き具合が前後・左右の2軸でそれぞれ1度単位で検出され、Excellent・Very Good・Good・Badの4段階で評価してくれます。アプリのメイン画面を開くと、この傾き具合がリアルタイムに表示され、例えばスマホを覗き込む時にやや前傾気味になると途端にBadとなり、歩く時のような視線に戻すとVery Goodに。また頬杖を付くと今度は左右傾きがBadになる等、ちょっとした姿勢変化が“見える化”されます。

Android版「JINS MEME」アプリのメイン画面。「Body」の項目が最も目立つ部分に位置しており、身体の傾きが一目で丸わかり。この状態で姿勢を変えれば、表記の値もリニアに変動します

このリアルタイム傾き度を見られるだけで、JINS MEMEには相当の価値があると思います。実際、Badの指標が出ている時は肉体感覚としてやや窮屈というか、肩が張るような印象がありますが、画面の指示に従ってVery Good~Excellentあたりにまで戻すと、身体的な無理が大分緩和された感じになります。慣れてくると、それこそスマホを使う時にどれくらい身体を起こした方がいいかといった微妙なラインが、JINS MEMEのアプリ画面を見るまでもなく、ある程度想定できるようになります。

とある日の統計値。この日は原稿執筆や写真撮影を断続的に繰り返していたのですが「時間別姿勢スコア」を見てみると、良い姿勢を1~2時間継続した後は、途端に姿勢が悪くなっていました。休憩すると回復するのが、なんともお見事な結果と言いますか…

筆者はもともと猫背の自覚があったものの、やはり「スマホを見ている時は身体を前に30度傾けている」と数字で現してくれたのには衝撃を受けました。また、デスクトップPCで原稿を執筆する際にもやや前傾になっていたことにも気付かされ、結果としてモニターの高さを少し上げてみる等、具体的な行動にも繋がりました。

また理屈的に言っても、Apple Watchをはじめとしたスマートウォッチがいくら高機能化しても、手首に巻いて使う以上、姿勢検知ができるようになるとは思えません。顔の部分に無理なく装着できるJINS MEMEだからこそ実現しうる機能と言えるでしょう。

JINS MEME装着中は、この姿勢データは常時測定され、1日単位・週単位などの形式で後から確認できます。アプリメイン画面の「Body」項目から直接遷移する「カラダヒストリー」からは、全装着時間に対してGood以上だった時間の割合が1%単位で表示されるほか、時間帯別のスコアも併せて表示されます。これらを活用すれば「昨日は妙に好成績だったけど、何でだろう?」といった要因推定もできるでしょう。

データの表示方法にはいくつか種類がありますが、過去データを見るには「カラダヒストリー」がシンプルで簡単
別メニューからは「ライフログ」を表示できますが、身体の傾きに関するさらに詳細なデータや、歩行時のブレなども参照可能

姿勢の悪い時間が続いた時には通知してくれる

アプリで確認できる項目の2つ目は「Mind」ですが、これはおもに瞬きの傾向から判定します。瞬きの感覚が通常より長いかで判定する「没入度」、瞬きの強さのバラツキをもとにした「安定度」、瞬きの強さで活性度を測る「バイタリティ」の3つからなります。

3つ目の「Brain」は集中度の指標で、やはり瞬きデータをもとにしています。仕事や読書等、なんらかの作業への集中度が「ZONE」「軽集中」「集中外」の3段階で判定されます。このポイントが高ければ「良い仕事ができたな」とか、あるいは「気が散って勉強に集中できなかった」だったり、その日の生活の充実度を判定できるでしょう。

瞬きの傾向から判定する「Mind」
「Brain」は、やはり瞬きの頻度から集中度を測定します

個人的には、前述の「Body」に比べると「Mind」「Brain」は効果を実感しづらいと感じました。ただしJINS MEMEの利用時間・期間が長くなればなるほどデータも貯まっていきますから、そうした過程の中で指標の意味付けも変わってくると思います。例えば9時~17時のきっちりしたルーチンワークを平日連続で行なうオフィスワーカーの場合は、Mindのスコアが高い日は仕事量も多いとか、なんらかの連関性は出てきそうです。

JINS MEMEアプリの特徴として、通知機能の充実にも言及しておきたいと思います。Apple Watchをはじめとしたスマートウォッチでは、座りっぱなしの時間が1時間以上続くと「健康のために立ち上がりましょう」などの通知が出るのが今や当たり前ですが、JINS MEMEにも同様、あるいはもう少し踏み込んだ仕様が盛り込まれています。

例えば、姿勢が悪い時間が一定時間以上(初期値では30分以上)続いた場合にスマホへ通知が届き、これをタップするとオススメのストレッチが通知されます。椅子に座ったままできるものを中心に、1~3分程度でできるコンパクトなものが多く、またアプリ上で直接、動画や解説音声が表示されるので、比較的気軽に試せます。

姿勢が悪い時間が連続すると、このような通知が届きます
オススメのストレッチを即実行してみるのも良いでしょう

ストレッチやヨガのやり方動画はアプリ内の「メンテナンス」タブにまとめられており、毎日○○時になるとアラーム的に通知してくれる「ルーティン」としても呼び出せるようになっています。在宅ワークなどで仕事のオン・オフが曖昧になりがちな方などは、積極的に使ってみるといいでしょう。

ストレッチやヨガのパターンが充実
「ルーティン」として登録しておけば、時間になったら知らせてくれます

コンセプトは大賛成。装着感・バッテリはもう一声

以上がJINS MEMEの利用感についての率直な感想です。実際に使ってみて、その製品コンセプトにはもう、両手を挙げて大賛同・大賛成します。

筆者個人は初代Apple Watchを皮切りに歴代のWear OS系スマートウォッチを6年以上連続して使っており、健康・フィットネス系のウェアラブル機器は腕時計・リストバンド型のもの以外はビジネス的に成立しないとすら思い込んでいました。ただ、眼鏡型のJINS MEMEは、脈拍こそ計測できないものの、逆にスマートウォッチではほぼ無理であろう「姿勢・瞬き検出」に特化したことで、上手い具合に棲み分け・共存ができそうな未来図を示してくれました。

原稿中でも触れましたが、猫背が長年の悩みである筆者にとって「姿勢データの見える化」はありそうでなかったもの。それまで漠然と「猫背気味だから気をつけよう」と思っていたところへ「スマホを見る時は身体が前に30度傾いているから、せめて15度に抑えよう」と、数値ありきで現状把握できるようになった意義は、本当に大きいと思います。

身体の傾きを数値でリアルタイム表示してくれるのは斬新だし、率直にいって“有り難い”機能だと思います

また、初代モデルと比べてデザインバリエーションが増え、センサーやバッテリーをブリッジ部に集約したことで、扱いやすさも格段に向上したと思います。ただそれでも、眼鏡は就寝中以外は常時かけっぱなしの道具ですから、装着感の更なる向上は必要でしょう。JINS MEMEは見た目的には一般的な眼鏡にかなり近いですが、フレームの都合上、顔の幅や形に対する調整の幅が限られています。これはFAQでも明言されており、明確なデメリットと言えるでしょう。可能であれば、取扱店で実際に試着してみることをオススメします。

そしてバッテリーも課題です。JINS MEME自体は1日1回の充電で十分なのですが(切れたとしても視力矯正はできる)、アプリとの通信がかなり頻繁に行なわれる仕様のため、スマホ側のバッテリーへの影響が大きいと言わざるを得ません。今回の試用にあたってペアリングしたPixel 5では、24時間で30%以上バッテリーを消費しており、正直なところ、スマホを1日2回充電するくらいの気構えでなければ、JINS MEMEの日中常用は難しいでしょう。ただAndroid版アプリでは、データ同期頻度を落としてバッテリー消費を抑えるオプションが存在するなど、改善に向けた努力は続けられているようです。

JINS MEMEは普通の眼鏡にかなり近づきましたが、それでもサイズ調整の幅などに制約があります
最大の弱みはバッテリーでしょう。JINS MEMEのバッテリーはともかく、スマホ側の消費も激しいのは難点です

バッテリー仕様の現状を踏まえると、JINS MEMEが最適なのはオフィスや自宅、あるいは車中など、しっかりした充電環境が整っている場所に長時間いられる方……ということになるでしょう。また、普段はコンタクトレンズを使っている方なら、視力矯正のないレンズをチョイスし、集中したい仕事中だけ、勉強中だけJINS MEMEを使ってもいいかもしれません。

いずれにせよ、通信しない時間を設定できるとか、アプリ側の機能をもう少し充実させる必要がありそうです。サブスクモデルで展開される製品だけに、今後の進化にも期待しましょう!

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。