ミニレビュー

三菱UFJの新キャッシュレス「MUFG Wallet」。スマホ初「Visaのタッチ決済」

MUFG VISAデビットカード。三菱UFJ銀行の口座があれば発行できる

三菱UFJ銀行がスマートフォン向けのウォレットアプリ「MUFG Wallet」をリリースした。QRコード決済ではなく、同行のデビットカード「MUFG VISAデビット」に紐付く形でサービスを提供する点が特徴だ。

MUFG VISAデビットは、三菱UFJ銀行の口座所有者向けに提供するデビットカード。

デビットカードは、銀行口座に直結して支払いを即時に口座から引き落とすため、クレジットカードよりも家計管理がしやすく、使いすぎの心配がない、口座を持っていれば15歳以上の誰でも作成できて手軽といったメリットがあり、欧州などでは一般的だ。しかし、国内では従来、決済ネットワークとして独自の「J-Debit」を使っていたため、あまり普及しなかった。

最近は、VISAなどの国際ブランドのネットワークを利用し、同ブランドのクレジットカード対応店やオンラインサービス、海外の同ブランド対応店と多くの場所で利用できるようになってきた。そのため銀行各行が積極的に展開している。

三菱UFJ銀行では、VISAとJCBのデビットカードを提供しているが、MUFG WalletではまずVISAのデビットカードへの対応を図った。JCBに関してはGoogle Payに対応しているため、そちらを使うといいだろう。

現時点でMUFG Walletは、基本的に「既存会員向けサービス」だ。口座開設やカード発行はアプリからは行なえないが、すでに口座を持っていてMUFG VISAデビット所有者であれば、新規のアカウントを作成することもなく、すぐに利用開始できる点はメリット。

ただし、Androidのみの対応で、iOSには非対応だ。

MUFG Visaカードを登録。シンプルな機能

MUFG Walletのメイン画面

アプリをダウンロードしてインストールすると、まずはAndroid標準の「タップ&ペイ」のフォアグランドアプリの優先設定をするように促される。国内ではほとんど触ることのない設定だが、デフォルトではオフになっており、起動時に警告が出たら、Androidの「設定」→「接続」→「NFC/おサイフケータイ設定」などと進み、「タップ&ペイ」の項目から「フォアグラウンドアプリを優先」「起動中のアプリでタップ&ペイ」などを選択する。

Pixel 3向けのAndroid 10は設定項目がややこしく、設定の「アプリと通知」→「特別なアプリアクセス」→「タップ&ペイ」と進み、「デフォルトのアプリを使用」を「別の決済アプリが起動されている場合を除く」にする。

まずはフォアグランドアプリの優先設定を促される。スマートフォンによって異なるが、「設定」で「タップ&ペイ」と検索をすれば見つけやすいだろう
Galaxy Noteでの設定画面。この「MUFG Wallet」の設定は特に関係はないようだ。基本的にはGoogle Payにしておくといいだろう
右上の縦向きの三点リーダーから「フォアグランドアプリを優先」をオンにする。これで、前画面の設定によらず、MUFG Walletが起動していればそれを優先する

この設定が必要ということは、MUFG Walletはスマートフォンのロックを解除し、アプリを起動した状態でないと決済できない、ということ。実際に試してみても、アプリを起動していないとリーダー側が反応しない。

Androidのタップ&ペイ設定には、MUFG Walletを有効設定する項目があるが、この設定の有無にはかかわらず、やはりアプリを起動しておく必要があるようだ。

FeliCaを使ったおサイフケータイやGoogle Payは、スマートフォンを単にタッチするだけで決済できるのに比べると、アプリを起動しなければならない点は面倒なところではある。

初期起動時は、まずはカードの登録画面になる。現時点ではMUFG VISAデビットのみとなっているが、複数カードの登録も可能となる。今後MUFGカードなどのクレジットカードへの対応も行なわれるだろう。

まずはカードの登録。複数カードの登録が計画されているようだが、現時点ではMUFG VISAデビットのみ
カード番号はカメラが読み取るので、日付とセキュリティコードを入力

カードの登録自体は簡単で、所有しているMUFG VISAデビットカードの券面をスマートフォンのカメラで撮影するとカード番号が読み取られるので、有効期限とセキュリティコードを入力する。

カードが認識されると、本人確認として口座に登録された電話番号への着信か、コールセンターへの電話が必要になる。着信の場合は、機械応答で6ケタのワンタイムパスワードが告げられるので、それを入力する。

UIは非常にシンプル。カードの券面が表示され、その下に「詳細」ボタンがある。タッチすると、利用明細の表示やカードの詳細情報などの設定が行なえる。明細は、試用した店舗と使った金額が表示されるシンプルなもの。詳しい明細は、MUFG VISAデビットの会員サイトにアクセスして確認する。

UIはシンプル
設定項目も最小限

他にはログインに指紋認証を使うかどうかの設定があるぐらい。アプリ起動には6ケタのパスコード入力か指紋認証の利用が必須となっている。スマートフォンのロックを解除してアプリを立ち上げないと決済ができないため、スマートフォンのロックに生体認証を設定していれば十分という考え方もあるが、まあ、指紋認証を設定していれば手間は最小限で済むだろう。

Visaのお店(タッチ決済対応)で使える。対応店舗の拡充に期待

決済にはNFCを使うため、日本では対応店舗が多くないのは弱点だ。大手ではローソン、マクドナルド、TSUTAYAなど、いくつかのチェーン店にとどまっている。ただ、最近のVISAはタッチ決済に積極的なので、今後さらに増加する可能性はある。例えばローソンでは、「VISAのクレジットカードで」といえば自動的にNFCの待ち受けになるので、アプリを起動した状態でタッチすれば決済が行なわれる。

最も頻繁に使えそうなのがローソン
決済は十分に早い

今回は試していないが、海外で使えるのはおサイフケータイにないメリットだ。海外ではNFCのタッチ決済(コンタクトレス)が普及し始めている。特に欧州では、国にもよるが広く普及しているので、使える場所が多い。基本的に決済にクレジットカードを指定すると自動的にNFCも使えるので、同様にタッチすれば支払いができる。英国の地下鉄やバスへの乗車も可能なほか、米国でも同様に対応店舗での支払い、ニューヨークの地下鉄などの一部交通機関での支払いも可能。

明細も表示される。150円のうち3円がキャッシュレス・消費者還元事業のため割り引かれて147円になっている

現時点で国内より海外の方が利用シーンが広いが、2020年の東京五輪ではVISAがスポンサーで、会場内ではVISAカードしか使えないことになるため、そうした場所では威力を発揮するだろう。これに合わせて海外からの観光客向けにNFC決済対応店舗が増えることも期待される。

おサイフケータイとは異なり、1つのカードを複数のスマートフォンで使える点もメリットだ。アプリ上の明細はそれぞれのスマートフォンにしか保存されていないが、複数端末を持ち歩く自分としては便利に感じた。AndroidスマートフォンはNFCを内蔵してタップ&ペイに対応したモデルが多いので、おサイフケータイに非対応のSIMフリー端末でも使える。

単純な利便性ではおサイフケータイやApple Payの方が上だが、コード決済に比べるとコード読み取りの必要がなく、アプリを起動してタッチするだけで済むので簡単。物理カードでも代用できるが、スマートフォン一つにまとめられるのはメリットだし、生体認証を使うので安全性も高い。

VISAのタッチ決済に対応したカードは、最近急増している。しかし、それをスマートフォンで利用する環境がなく、今回のMUFG Walletは、そうした状況に一石を投じるアプリでもある。仮にMUFG Walletが自社以外にも開放すれば面白いが、今後のサービス拡大に期待したいところだ。

小山安博