ミニレビュー

新AirPodsは音質が良くなった。ハンズフリーHey Siri対応で実用的に

あまりアピールされていない? 新AirPodsの進化点

Appleの左右分離型ワイヤレスイヤフォン「AirPods」の第2世代モデルが発表された。付属ケースのワイヤレス充電対応の有無により、2モデルが用意され、通常の充電ケースセット「AirPods with Charging Case」は17,800円、ワイヤレス充電ケースセット「AirPods with Wireless Charging Case」は22,800円。

AirPods with Charging Case

左右のイヤフォンをワイヤレス化したことで、完全ワイヤレスで利用できるAirPodsが第2世代にバージョンアップ。'17年発売の第1世代モデルからの変更点は、Appleによれば以下の通り。

・新しいH1チップにより、通話時間が第1世代に比べて最大50%長くなった
・iPhone、Apple Watchなどデバイスを切り替える場合、つながるまでの時間を短縮
・「Hey Siri」と呼びかけ、ハンズフリーでSiriから天気情報取得や音量調整など
・ゲームでのレイテンシ(遅延)を最大30%低減した
・Qi互換充電器からワイヤレスで充電可能に(ワイヤレス充電ケールモデル)

発売日に早速、ワイヤレス充電ケースモデルを購入した。

スペックだけ見ても、使い勝手は少し良くなりそう、ぐらいの淡い期待で購入したが、実際に使ってみると、ニュースリリースや製品ページではほとんど触れられていない、「大きな変化」が感じられた。

パッケージ
同梱品

音が良くなったぞ!

「大きな変化」とは「音質」。明らかに良くなったように感じるのだ。

初代AirPodsも2年近く使っていたので、設定や装着感などはほぼ同じ。すぐに使い始められるのだが、新AirPodsに変えて、Spotifyで音楽を再生開始すると、明らかに音量が大きく、また迫力を増したように感じられる。最初はiPhoneのボリューム設定を間違えたか? と思ったほど。

第2世代AirPods

iPhone側のボリュームを揃えて(最大音量から6段下げ)で、初代と新AirPodsを比較してみると、音量、音圧感が全く違う。初代AirPodsで最大音量にすると、声が割れ、かすれたように感じるのだが、新AirPodsでは最大にしても筐体がビビらず、音割れも発生しない。ヌケが良く、気持ちよいサウンドに感じられる。

ドナルド・フェイゲンの「IGY」を再生すると、新AirPodsのほうが音場が広く、より広い空間で音を聞いているような印象。初代AirPodsに切り替えると、高音がもっさりして、天井が低い部屋のような印象になり、気持ちよさに欠ける。新AirPodsのほうが音楽が楽しい。

新AirPodsでは、大音量時の高域がしっかり出て、ハイハットもかさつかず、スネアドラムのキレも良く、ロック系の曲がよりダイナミックに感じられる。音場が広く感じられるのでクラシックやジャズ系の音楽との相性も良くなった。

AirPodsの基本的なデザインは変わっていないため、地下鉄などの外部音が大きな環境では、周囲の音の影響を受けてしまうが、音量が上がったこともあり、十分に実用的に使える。

従来のAirPodsでは、音質にはさほど期待せず、主にラジオやPodcast、仕事をしながらの音楽鑑賞などに使っていた。新AirPodsでは音質向上により、より汎用的に使えるシーンが増えてくるように感じる。発表時のニュースリリース等を見た限りでは、音質が大きく変わると期待していなかったため、初代ユーザーとして驚かされたし、大いに歓迎したいポイントだ。

AirPodsはAirPods

音質の進歩は感じられたが、基本的な使い勝手や機能は、初代を踏襲している。

AirPodsは、耳栓のように耳穴に押し込む「カナル型」ではなく、耳穴にかぶせるような装着方法となっている。そのため、初代から人によって、「落ちやすい」という人と、「全然落ちない」という人がいた。ケーブルもないので、落とすと紛失のリスクが高いという点は課題だ。

装着感は従来と同様

耳穴の形状など個人差があるので意見が割れるが、個人的には前者の「落ちやすい」側。満員電車などでは怖くて使えていない。しかし、落ちにくく装着するコツはつかめているので、混雑していない電車など、移動時にもそれなりに使っている。

第2世代でも装着感については、特に変わっていない。

ただ、改善が無くて不満か? といわれるとそうでもない。長く使ってきて、「AirPodsはこういうもの」という利用シーンが自分の中で定着してきているため、大きく使い勝手やデザインを変えられるよりは、そのままでもよいのかな、と感じている。

個人的に、AirPodsの一番の魅力と思っている「開放感」もそのまま。

左右ユニットをつなぐケーブルが無く、軽量なため、装着時の圧迫感は全くない。装着時のストレスはほとんどなく、強いて言えば、前述の「落としてしまうかも」という不安ぐらいだ。

一方、遮音性能は弱く、外部の音をかなり拾ってしまう。なので、「電車の中で音楽をきちんと聴きたい」という用途にはあまり向いていない。

AirPodsの良いところは、音楽やラジオなどを聞きながら、外部とのつながりを保てるというところなのだ。

なので、オフィスでインタビューの録音を聞き直している時も、周りの人に話しかけられたら対応できるし、電話もとれる。普通のイヤフォンやヘッドフォンと違って、外部を完全に遮断しないので、「ながら作業」にとても相性がいい。

外観はほとんど初代から変更なし

イヤフォンの装着感だけでなく、充電ケースのデザインやサイズも、初代と第2世代AirPodsでほぼ共通。一緒に置いてしまうと判別がとても難しいので、両世代を持っている人は、混ぜないように注意したい(片方づつのAirPodsでは使えない)。

初代と第2世代をケースに混在させると、間違いを指摘してくれる

第2世代のCharging Caseは、ヒンジ部分のカラーが第2世代がシルバーとなるほか、LEDが外側に出ている点が初代との違い。イヤフォン部の判別は困難で、「色がくすんでいるほうが古い」ぐらいでしか、違いを見分けられない。

左が第2世代の「Charging Case」、右が第1世代のケース
従来のケースは充電状態を示すLEDが内部に
第2世代のAirPods with Charging Caseでは外側にLED

判別が困難な初代と第2世代AirPodsだが、機能面では進化しており、その中心となるのが新搭載された「H1チップ」だ。通話時間が第1世代に比べて最大50%長くなったほか、iPhoneからApple Watchなど、デバイス切替時の接続時間が短縮された。

実際にiPhoneとiPadを切り替えてみると、確かに接続の高速化は実感できる。10秒程度の切替時間が、6~7秒程度になっている。あまり気にしたことがなかったが、比べてみると従来機種は遅いな、と実感できてしまう。

接続性に関わるもう一つの強化ポイントは、ゲームでのレイテンシ(遅延)が最大30%低減したという点。こちらは、レイテンシが重要なゲームをプレイをしていないため、あまり実感はできていない。

あまり期待していなかったのだが、便利だと感じたのが、「Hey Siri」(ヘイシリ)と呼びかけるハンズフリーのiPhone操作。音楽再生開始は、ミュージック(Apple Music)以外は行なえないようだが、Spotifyでも再生中であれば、曲のスキップ/バックやボリューム操作が行なえた。

意外に重宝するのが、天気予報や移動先の検索。仕事をしながら、声だけで明日の天気などがわかるのがよい。「そろそろ帰ろうかな」と思った時に、「Hey Siri、今の天気は?」と声をかければ、傘が必要かがわかるし、iPhoneには明朝までの天気予報も表示される。

また、行先検索も実用的で、「新宿駅までの行き方を教えて」と尋ねれば、最寄駅から新宿駅までのルートを検索してくれる。iPhoneのアプリで調べればいいのだけれど、予定時間の前に、目的地までのおおよそのルートや時間を把握できるのが、結構便利だったりする。

従来もAirPodsの下部をダブルタップして、Siriを呼び出せたが、正直ほとんど使ったことがなかった。しかし、「声だけ」操作対応により、活用シーンは確実に増えそうだ。スマートスピーカーを生活上で使うようになってきて、音声操作への抵抗が減ったこともその要因かもしれないが、Siriによる音声アシスタントがより実用的になったと感じられる。

音質向上が嬉しい新世代AirPods

新AirPodsは、この2年で確立された「AirPods」というカタチや使い勝手はそのままに、音質や機能がきちんとアップデートされた、まさに「正常進化型」といえる。

初代AirPods発売から2年、多くの左右分離型のイヤフォンが発売され、より安価あるいは高音質という製品も存在する。しかし、「周囲の音を知覚しながら、音楽や声、通話も楽しめ、ケーブルの不満を一掃した」というAirPodsの魅力は、この第2世代でさらに高まっている。

Hey Siri対応により、音声操作も実用的で、相対的に弱点と言えた、音質もしっかりカバーされてきた。隙の無いアップデートだ。その点では、従来のAirPodsユーザーはその恩恵と魅力をすぐに実感できる製品だと思う。

臼田勤哉