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三井住友カードの次世代決済「stera」。リアルとECを繋ぐ

stera terminal

三井住友カードとビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)、GMOペイメントゲートウェイ(GMO-PG)は、次世代決済プラットフォーム事業「stera(ステラ)」を開始する。クレジットカードや電子マネー、QRコードなどの決済手段に対応し、実店舗とネットを一体化して処理できるワンストップシステムを提供。また、タッチ決済などに対応した新型端末「stera terminal」も2020年3月から展開する。

3社は2月に次世代決済プラットフォームの構築で合意しており、今回具体的な取り組みやサービス内容を決定した。steraはキャッシュレスに決済に必要な機能をワンストップで提供するプラットフォームで、決済にまつわる全体を一気通貫でカバーしていく。steraの語源は、舵を切る(steer)と時代(era)の造語。

GMO-PG 相浦一成社長、三井住友カード大西幸彦社長、Visa 取締役営業本部長 外山氏

一般的なカード決済は、加盟店における決済端末(実店舗)/EC向けマルチ決済システム(ネット)から、決済センターに情報が送られ、ネットワーク、決済事業者という流れ。ただし、決済センターだけでも50社以上あり、ネット通販と実店舗でセンターが別で、これを取りまとめるネットワーク(NTTデータのCAFISなど)も複数社があるなど、複雑化している。

この流れをシンプルにし、決済端末からセンター、ネットワーク、決済事業者までを一体運営し、一気通貫で提供するのが、steraのコンセプトだ。GMO-PGは決済センター領域を共同で担当し、ネットワークはVisaが提供する。

ECとリアル店舗の決済センターを一体化

センター機能については、三井住友カードとGMO-PGが共同で構築。クレジットカードや電子マネー、QRコードなどの決済手段に対応し、さらにセンター機能においても「リアル店舗とEC」を一体運営する。

従来のキャッシュレス決済の流れ
steraでは決済センターからネットワーク、決済事業者が一体で運営

日本ではこれまで、センター機能については、リアル決済とネット決済とで運営事業者が分かれており、別システムとして扱われることが多かった。そのため、2つのデータを照合・統合する手間が発生する他、データを即座にマーケティングに活かすといったことが難しかったという。

steraではリアル店舗の決済とネット決済のセンター機能を一体化することで、特にリアル・ネット双方の店舗を運営する事業者が、より柔軟にオムニチャネル(リアル・ネット連動)向けのソリューションを提供できるようになる。

そのため、日本のEC決済分野でトップのGMO-PGと協力し、EC向けは、GMO-PGの総合決済システム「PGマルチペイメントサービス」を、stera専用にカスタマイズして提供。さらにGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)の決済処理業務を切り出し、三井住友カードと合弁事業化し、GMO 51%、三井住友カード49%出資のGMOデータを設立。リアル決済処理事業を担当する。

コードや電子マネー、コンタクトレス対応の「stera terminal」

また、決済ターミナル「stera terminal」も独自に開発。一台でクレジットカードのほか、電子マネー、QRコードなどの決済手段の受け入れが可能となるオールインワン端末で、開発はパナソニック。「カード会社が端末の企画や開発段階から一緒になって作った端末は、おそらく初(三井住友カード 大西社長)」とのこと。

stera terminal

クレジットカードは磁気、IC、タッチ決済(NFC)などに対応。カメラでQRやバーコードを読み取れ、Felica等電子マネーも読み取れるなど、「ほぼ全ての決済手段に対応可能」とする。

利用者側には4型のディスプレイを、店舗側には7型のディスプレイを装備し、ボタンレスで展開。利用者側のディスプレイではPINコードの入力やサインに対応し、店員がカードに振れずに、カード決済が行なえる。

ユーザーがカードを自分で差して決済。コンタクトレスも
サインやPINコードの入力も可能

海外ではタッチ決済(コンタクトレス)が普及してきており、インバウンド旅行客などでコンタクトレスの需要が高まっており、インバウンド対応でも重要な役割を担うとする。

インバウンド対応も特徴

また、レシートプリンタも一体化されており、レジ周りの省スペース化も図れることも特徴。外形寸法は108×266×100mm。

OSはAndroid OSを採用し、オンライン上の操作だけで端末の機能追加も行なえる。

このしくみをアプリマーケットプレイスの「stera market」として展開。例えばアプリにより、POSレジ機能を追加したり、今後ニーズが拡大すると見込まれる免税対応のためのアプリなども提供予定としている。

stera terminalは、「いまの世の中の端末より大幅に低価格」としており、今後5年間で30万台の設置を目指している。

リアルとECを一体管理。Visaのネットワークを活用

また、リアル店舗とECの決済インフラをパッケージで提供。事業者は「stera dashboard」から、統合したデータを1つのダッシュボードで閲覧・ダウンロードできるようになる。

リアルとECの決済データの統合が可能となるため、決済手段に関わらず、売上金管理等の事務作業が一本化され、パソコンやスマホから簡単に集計結果等を把握できる。加えて、ダウンロードデータと店舗経理システムとの自動連携などで、決済事業者各社からの送付明細との個別突合作業が不要となり、業務効率化がも図れるという。

また決済データの統合により、従来リアル店舗とECそれぞれでの別々に必要だった集計・分析が不要となり、リアルとネットを統合した顧客の購買行動分析が行なえる。これによる、マーケティングの高度化・効率化も見込めるとする。

Visaはネットワークを担当。Visaが200以上の国と地域で処理をしている年間680億件超のトランザクションから導き出された不正取引の検知ロジックと、三井住友カードが培ってきた国内の決済事業運営ノウハウを掛け合わせた独自のプログラムからなる不正検知レーダーにより、日本特有の複雑な決済マーケットや商慣習に適応しながら、スケールメリットによるコスト競争力と、世界レベルのセキュリティを提供できるという。

steraで日本のキャッシュレスを加速

中小規模店舗のキャッシュレス決済には「Square」を積極的に展開している三井住友カードだが、steraは大規模から中小まで規模や業態を問わずに展開。特に実店舗のECの決済データ統合や、あらゆる決済手段への対応などのニーズは高く、そうした加盟店に対してsteraとstera terminalを進めていく。

三井住友カードのキャッシュレス戦略

決済センターやネットワークを一気通貫で手掛けることによるコスト低減も目論むが、手数料の削減よりは、オムニチャンネル対応による事業者のビジネス収益性の向上や、利便性などの付加価値向上を訴求。安心かつ便利な事業者向け決済プラットフォームとしてsteraを推進していく。