PHSならではの優位性

 現在、ショップの店頭の主役と言えば、やはり、スマートフォンやタブレットだ。アプリによるカスタマイズをはじめ、インターネットで提供されるさまざまなサービスとの連携など、今までのケータイにはなかった多彩な活用を体験することができる。

 しかし、スマートフォンやタブレットがすべての面において万能かというと、必ずしもそうではない。最近はシンプルなスマートフォンもいくつか登場してきたが、機能と安心感のバランスが難しいうえ、どうしてもパケット通信料の負担が増えてしまうため、必ずしもスマートフォンでなくても構わないだろうという指摘もあるくらいだ。

 また、ケータイでもシニアやシルバーと呼ばれる世代向けの端末がいくつも登場し、着実に人気を得てきたが、携帯電話というシステムであるがゆえに、通信料や通話料が高いというイメージが強く、実働世代の親や祖父母などに持ってもらおうとしたものの、なかなか使ってもらえないというケースもよく見かける。

 今回、ウィルコムから発売されたシャープ製端末「かんたんケータイ WX02SH」は、シャープがこれまでケータイやスマートフォンなどで培ってきたノウハウを活かしながら、PHSというシステムにおいて、見やすく、使いやすく、安心して使えるように作り込まれたモデルだ。改めて説明するまでもないが、ウィルコムが提供するPHSは元々、音声通話の音質がクリアなうえ、通話や待受時の消費電力が低く抑えられているため、長時間の利用が可能という特長を持つ。端末の電磁波が微弱であるため、人体や医療機器への影響が少ないとされ、全国4000以上の医療機関に導入実績があり、どこでも安心して使えるというメリットもある。

「かんたんケータイ WX02SH」。カラーはワインレッドとネイビーの2色展開

 また、ウィルコムは月額1450円の「新ウィルコム定額プランS」、月額2900円の「新ウィルコム定額プラン」を提供し、ウィルコム宛ての音声通話を無料、メールも無料で利用できる環境を実現している。そして、2010年12月から「だれとでも定額」の名称で、月額980円を支払うことで、他社ケータイ、一般加入電話、IP電話など、いずれの電話に対しても通話料が無料というサービスを提供し、人気を得ている。1回あたり10分以内、月に500回以内という条件はあるが、国内であれば、どこにかけても無料で通話できるという魅力は幅広いユーザーに支持され、ウィルコムの契約数のV字回復を後押しする要因となっている。

 これらのウィルコムの持つアドバンテージは、以前からシニアやシルバーと呼ばれる世代の人たちにとって、有効だと言われてきたが、WX02SHはそのアドバンテージを活かすことができる端末であり、本誌を愛読してくれているような実働世代の人たちの親の世代にも安心して持たせることができる端末と言えそうだ。

コンパクトで持ちやすく、見やすい

 見やすさと使いやすさを考えて作られたWX02SHだが、実際の使用感はどうなのだろうか。

 まず、ボディはスタンダードな折りたたみデザインだが、その外見からもわかるように、2012年夏に発売された「PANTONE WX01SH」をベースにしている。さらに、そのベースとなっているのは、ソフトバンクがシャープと共に、国内市場に送り出してきた人気モデル「PANTONE」シリーズのケータイということになる。つまり、デザインはケータイと比べて、まったく遜色のない定番的なデザインであり、手にフィットするコンパクトで持ちやすい形状に仕上げられている。

 ディスプレイは約2.9インチのワイドQVGA液晶を搭載するが、表示されるテキストやアイコン、グラフィックはいずれも視認性が考慮された大きなものが採用されている。それもむやみに文字だけを大きくしたという印象ではなく、見やすさと美しさのバランスがしっかりと考えられている。トップパネルにはサブディスプレイとして、約0.7インチの有機ELディスプレイが搭載されており、日時や着信の情報などが表示される。

ボディはスタンダードな折りたたみデザイン 本体幅は約50mmで、手にフィットするコンパクトで持ちやすい形状
サブディスプレイには、日時や着信の情報などが表示される。
また、脇にはインフォメーションライトを搭載する

 ボタン類は基本的にソフトバンク向けのPANTONEシリーズからWX01SHにも継承された押しやすいアークリッジキーが受け継がれているが、ダイヤルキーなどのキープリントを大きくして、表記する言葉も平易なものを使うことで、わかりやすくしている。エントリーのユーザーでも利用頻度の高いメールとカメラについては、ダイヤルキーの左右下に独立キーを配することで、それぞれの機能をすばやく起動できるようにしている。

 そして、キーでもっとも特徴的なのは、方向キーの周囲に備えられた4つの「楽ともボタン」だ。4色に塗り分けられた4つのキーには、よく連絡する相手を登録することができ、これと同じグラフィックが画面上に表示され、そこには登録した相手の名前などを表示できるようになっている。ちなみに、楽ともボタンに何も登録されていないときは、電話帳を参照するか、直接登録するかを選ぶ画面が表示されるため、わかりやすい。

押しやすいアークリッジキーを採用 ダイヤルキーなどのキープリントも大きくし、わかりやすくしている。メールとカメラは独立キーとして配されているほか、方向キーの周囲には押すだけで電話発信またはメール送信ができる「楽ともボタン」が備えられている

 また、待受画面には楽ともボタン以外に、時計やアンテナ、電池残量などのアイコンも表示されるが、これらも全体的にサイズが大きい「でかピクト」を採用するうえ、メールなどの受信画面も大きく読みやすいフォントが採用され、メニュー画面や電話帳なども文字やアイコンを大きくするなど、全体的に視認性を強く意識した見やすい画面デザインとなっている。

 画面デザインだけでなく、音声通話についてもケータイから継承された機能が搭載されている。たとえば、「くっきりトーン」では声の高音部分を強調した音質になるため、相手の声を聞きやすくすることができる。「スロートーク」は通話相手の声がゆっくりと聞こえるようになる。切り替えは通話中に方向キーの右を押すことでくっきりトーン、左を押すことでスロートークがそれぞれ有効に切り替えられる。PHSは元々、音質がいいとされているが、より聞こえやすくなるのは幅広い年齢層のユーザーにとって便利だろう。

待受画面 メニュー画面 受信メール表示画面 通話中に方向キーの右を押すと「くっきりトーン」、左を押すと「スロートーク」に切り替えられる
「くっきりトーン」を有効にすると、高音を強調し、相手の声をくっきり聞き取りやすくする 「スロートーク」を有効にすると、通話相手の声がゆっくり聞こえるようになる

便利な機能も充実

 使いやすさや見やすさを考慮したWX02SHだが、シニアやシルバーと呼ばれる世代のユーザーが使える範囲内で、実用的な機能が充実している。

「くっきりトーン」を有効にすると、高音を強調し、相手の声をくっきり聞き取りやすくする 「スロートーク」を有効にすると、通話相手の声がゆっくり聞こえるようになる

 たとえば、SHシリーズはケータイでもスマートフォンでも必ず辞書機能を搭載し、評価を得てきたが、WX02SHにも「明鏡モバイル国語辞典」「ジーニアスモバイル英和辞典」「ジーニアスモバイル和英辞典」「家庭の健康べんり事典」の4つが搭載されており、これに加え、「ウィキペディア」などを参照できる「ネット辞書」を使うこともできる。

 また、辞書をはじめ、電卓やカレンダー、アラームといった便利な機能は、決定ボタンを押して表示されるメニュー画面からも個々の機能は呼び出せるが、慣れていないユーザーには何階層かをたどらなければならないため煩わしく感じられてしまう。そこでWX02SHは、方向キーの上を押すだけで、こうした機能がすぐに起動できる「便利メニュー」が用意されており、すぐに各機能を起動できる。

 ところで、WX02SHのような機種は、前述のように、本誌読者のような実働世代の人が自分の親や祖父母といった世代の人に持ってもらうようなケースが多いが、持たせたのはいいものの、その後、まったく使ってくれないということのないように、簡単に使うための安心機能も充実している。たとえば、1日に1回、WX02SHを操作したとき、あらかじめ登録した家族や友人に自動的にメールを送る「元気だよメール」、あらかじめ指定した連絡先からの受信メールを開くと、読んだことを知らせる「読んだよメール」などがそうだ。そして、万が一のとき、周囲に知らせるための緊急ブザーも本体右側面に備えており、サイドキーを長押しすることで、大きな音を鳴らして、周囲に緊急事態を伝え、登録した家族などの連絡先に電話と周辺地図を示したメールを送る「緊急ブザー」機能も搭載されている。

「元気だよメール」の受信メール 本体右側面のサイドキーを長押しすると、大きな音で緊急ブザーを鳴らすことができる

使いやすさと見やすさを求めるユーザーにおすすめ

 ここ数年のスマートフォンやタブレットの成長ぶりには目を見張るものがあるが、その一方で、スマートフォンやタブレットのような製品を必要とせず、堅実に使いたいと考えるユーザーが増えている。今回紹介したかんたんケータイ WX02SHは、まさにそういったユーザーのためにおすすめできるモデルだ。いたずらに高機能を追い求めるのではなく、堅実に使いやすい機能を搭載し、そこにケータイで培われたノウハウを活かすことで、非常に完成度の高いモデルに仕上げている。この春へ向けて、シニアやシルバーと呼ばれる世代の人たちが選ぶ、もしくは持ってもらうのであれば、WX02SHはぜひオススメしたいモデルだ。

プロフィール

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE sv SH-10D スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2012年8月31日発売)、「できるポケット SoftBank AQUOS PHONE 006SH スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2011年6月30日発売)などのスマートフォン関連も数多く執筆。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。

関連情報

関連記事