法林岳之レビュー

EDGESTデザインの洗練されたボディに
最強カメラと楽しさを凝縮したプレミアムモデル

スマートフォンが市場の半数近くまで普及し、最近では2回目、3回目の買い換えを迎えるユーザーも出てきた。すでにスマートフォンを利用してきたユーザーは、次の買い換え機種を検討するにあたり、単純にパフォーマンスだけでなく、デザインや機能、個性など、自分なりの「こだわり」を持っているはずだ。

今回auから発売された「AQUOS SERIE SHV32」は、従来モデルから好評を得てきたEDGESTデザインの洗練されたボディに、スタミナと美しさを兼ね備えたIGZO液晶ディスプレイを搭載し、新たに世界最高のスーパースロー映像を楽しめるハイスピードカメラを搭載するなど、多くのユーザーの「こだわり」に応えられるプレミアムなモデルとして仕上げられている。この夏、注目のスマートフォンAQUOSをひと足早く実機を試すことができたので、その仕上がりをチェックしてみよう。

AQUOS SERIE SHV32

変わりつつあるスマートフォン選びのポイント

ほんの数年前まで、スマートフォンは新しいモノが好きな先進的なユーザーが選ぶとされていたが、今や市場の半数がスマートフォンに移行し、店頭で販売される端末も大半はスマートフォンになりつつある。これをお読みの読者は、スマートフォン、もしくはタブレットなどを自分で購入し、なかには数回買い換えた経験を持つ人も多いはずだが、新規にスマートフォンに移行するユーザー、あるいはスマホ買い換えのユーザーから「どの機種がおすすめ?」「どこをチェックすればいいの?」といった質問を受けることも増えているかもしれない。

スマートフォンが登場したばかりの頃、多くのユーザーは新機種を選ぶ基準として、パフォーマンスやプラットフォームのバージョンなどを重要なチェックポイントとして挙げていた。確かに、今日においてもパフォーマンスやプラットフォームのバージョンは重要だが、現在はデザインやディスプレイ、バッテリー容量、実使用時間、カメラ、おサイフケータイなど、実用面での性能が重視される傾向にある。これに加え、最近ではほとんどのスマートフォンがスレート形のボディを採用し、デザインや基本機能が似通ってしまうこともあり、他社製品にはない独自の機能や新しい楽しみ方、面白さに期待する声も多い。デザインだけでなく、機能や使い勝手にも個性が求められているわけだ。

今回、auから発売されたシャープ製スマートフォン「AQUOS SERIE SHV32」(以下、SHV32)は、昨年6月発売の「AQUOS SERIE SHL25」、今年1月発売の「AQUOS SERIE mini SHV31」の流れをくむモデルで、これまでのスマートフォンAQUOSで積み重ねられてきた数多くの機能やユーザビリティを継承しながら、「EDGESTデザイン」の洗練されたボディに、独自の便利機能やお楽しみ機能を搭載することで、今まで以上に「楽しめる」スマートフォンとして進化を遂げている。スペックについてもバランスの良さがよく考えられており、すでにスマートフォンを使い込んできたユーザーはもちろん、はじめてのユーザーや操作に慣れていないユーザーでも安心して選べるモデルに仕上げられている。ただ単にハイスペックを追求するのではなく、使いやすさや持つ楽しさもよく考えられたプレミアムなモデルだ。

アクセントのある個性的なデザイン

シャープ製スマートフォンのデザインとして、すっかり定着した感のある「EDGEST」(エッジスト)は、本体前面のディスプレイの上側と左右を狭額縁で仕上げることで、本体におけるディスプレイの占有面積を抑え、ともすれば「画面だけを持ち歩く」感覚を実現するデザインだ。

今回のSHV32もEDGESTデザインを継承しているが、側面や周囲のフレームに新しい個性を取り込んでいる。カラーバリエーションはホワイト、グリーン、ピンクの3つがラインアップされており、ホワイトとピンクは前面パネルにもカラーリングが施され、各色ともフレーム部分にラインを入れている。これにより、本体前面から見たときの印象が各色とも異なり、他機種とも違ったアクセントのある個性を演出する。

カラーバリエーションはグリーン、ホワイト、ピンク エッジに鮮やかなラインが際立つ

側面部分もわずかにラウンドさせた形状を採用し、右側面に備えられた電源キーや音量キーは突起を少なくしながら、メタリックな輝きを活かした仕上げとなっている。ただの平べったい板ではなく、上質なデザインと手当たりが良く、持ちやすい形状にまとめられている。ちなみに、左側面にはキャップレス防水のmicroUSB外部接続端子、その少し上側にはストラップホール、上部には3.5φのステレオイヤホン端子、microSDメモリーカード/au ICカードスロットが備えられている。

突起が少なくなだらかな電源キー/音量キー ステレオイヤホン端子とストラップホール 背面はシンプルに仕上げられている

ディスプレイは約5インチのフルHD対応IGZO液晶ディスプレイを搭載する。IGZO液晶ディスプレイのアドバンテージはすでにおなじみだが、高精細かつ明るい表示、高い省電力性能、タッチパネルの高精度化などの特長を持つ。これに加え、シャープがスマートフォンAQUOSで鍛え上げてきた省電力機能の「エコ技」を組み合わせることで、他製品を上回るスタミナ性能を実現する。今回は限られた試用期間だったが、2600mAhの内蔵バッテリーの減りは緩やかで、前夜に充電し忘れてもそれほど慌てなくても済む印象だった。

ちなみに、ボディ周りでは従来モデルでも好評を得た「グリップマジック」が搭載される。本体の左右側面の下側にグリップセンサーが内蔵されており、端末を手にするだけで、画面がオンに切り替わる。モーションセンサーにより、手に持っているときは画面がオンの状態を継続する「Bright Keep」、端末を机などに置いたり、ポケットに入れたときに画面を消灯できる機能も備える。一部の機能は出荷時設定がオフだが、設定画面の便利機能から切り替えることで、電力消費を抑えつつ、使いやすい環境を作り出すことができる。

5インチの大画面ながらボディは小ぶりで、グリップ感もやさしい印象。両側面にグリップセンサーを搭載しており、手で持っていることを検知

省電力性能と関わりが深いCPUについては、クアルコム製オクタコアプロセッサ「SnapDragon 810/MSM8994」を搭載する。14nmという最新のプロセスルールで製造されたもので、高い処理能力と省電力性能を兼ね備えている。

映像の美しさについては、新開発のバックライトとカラーフィルタを組み合わせた「S-PureLED」(エスピュアレッド)により、光の三原色のすべての色再現性を向上させている。元々、シャープ製端末の液晶パネルは美しく、発色も良いとされてきたが、さらに磨きがかけられている。ただ、ディスプレイの表示は用途によって、適した表示が違ってくるため、「おススメ画質モード」という機能を搭載することにより、テレビ画面や映像コンテンツを再生するときは、より色鮮やかな表示に自動的に切り替わる。ビデオパスなど、スマートフォンで楽しめる映像コンテンツが豊富なauユーザーにとっては、うれしい機能のひとつだ。

S-PureLED採用でさらに色再現性が向上したディスプレイ

決定的瞬間を最大限に楽しめるスーパースロー映像

スマートフォンの数ある機能の中で、誰もが重要視しているのがカメラだろう。なかでも日本のユーザーはケータイ時代から撮った写真を送るという使い方に慣れ親しんでおり、現在もFacebookやTwitter、Instagramなど、SNSを通じて、写真を使ったコミュニケーションを図っている。

今回のSHV32にはメインに1310万画素、サブに210万画素のCMOSセンサーを採用しているが、カメラの生命線であるレンズには、「GR certified」を取得したF値1.9で 広角28㎜相当(35㎜フィルム換算)のレンズを採用している。

auモデルでは初となる「GR certified」を取得したレンズを搭載

このGR certifiedレンズは、リコーのハイエンドデジタルカメラ「GR」シリーズの開発メンバーによる画質改善認証プログラム「GR certified」で求められている「中心から周辺まで均質で高いコントラストと解像力を持つレンズであること」「デジタル画像補正を必要としないほど歪曲収差と色収差が極めて少ないこと」という条件をクリアしている。スマートフォンカメラはレンズ口径が限られているうえ、厚さの制約が大きいため、写真の周辺歪みが出たり、色に影響が出たり、ぼやけてしまうようなことが起きやすいが、GR certifiedレンズはこれらの影響を最小限に抑えるように作られているわけだ。画像処理についても「レンズの性能を最大限生かした、自然かつ鮮鋭の高い画像処理であり、きめ細やかなノイズ低減処理であること」「各種レンズの収差を補正するデジタル画像補正は行わないこと」が挙げられており、レンズを通して撮影した画像そのものが美しく、不自然な画像処理で補正しないことが求められている。これらの条件をクリアすることで、GRシリーズの開発メンバーから『お墨付き』をもらえたというわけだ。

光学手ブレ補正にも対応しており、うす暗い室内などでも被写体の様子がきちんとわかるように撮影ができる。ちなみに、光学手ブレ補正は静止画撮影だけでなく、動画撮影のときにも効果を発揮する。人物を撮影するときの顔検出機能も搭載する。

スマートフォンのカメラで、ここのところ、注目を集めている機能と言えば、やはり、インカメラによる自分撮りだ。SHV32は従来モデルよりも広角に撮影でき、バックの景色を活かした自分撮りや複数人のグループショットも手軽にインカメラで撮影することが可能だ。パノラマ撮影の技術をインカメラに応用した「インカメラワイド」の撮影にも対応しており、5〜6人が横に並んだ状態でもグループショットを撮ることが可能だ。 複数枚の写真を合成して大人数を1枚で自撮りできる「インカメラワイド」

ちなみに、インカメラ撮影時のワンタッチセルフタイマーも搭載され、2秒後と5秒後を選ぶことができる。この他にも従来モデルから好評を得てきたHDR撮影、フレーミングアドバイザー、全天球撮影なども継承されている。

今回のSHV32のカメラ機能で、もっとも注目されるのがハイスピードセンサーカメラによるスーパースロー映像だろう。SHV32は、FWVGAサイズで秒間210フレーム、フルHDサイズで秒間120フレームという動画撮影が可能で、撮影した映像を再生するときにはフレーム補間技術を組み合わせることで、FWVGAで秒間2100フレーム、フルHDで秒間1200フレームというスーパースロー映像を楽しめるというわけだ。

SHV32で撮影できるスーパースロー映像

最近、カメラの撮影機能として注目されている「タイムラプス撮影」にも対応しており、交通機関などで移動中の風景、星座の動き、流れる雲などを撮影して、ちょっと今までとはひと味違った映像を楽しむことも可能だ。

もっと話せるパートナー「エモパー2.0」

プライベートから仕事まで、さまざまなシーンで活用できるスマートフォンは、24時間365日を共にする存在だが、そのスマートフォンを擬人化し、本当のパートナーのようなにしたのが「エモパー」だ。エモパーはシャープがお掃除ロボットの「COCOROBO(ココロボ)」などに搭載する人工知能「ココロエンジン」のノウハウを活かして開発されたモノで、擬人化したスマートフォンAQUOS内のキャラクターがさまざまなシーンでユーザーを楽しませたり、喜ばせたり、いろいろなことを気づかせてくれる。昨年11月、NTTドコモ向けのAQUOS ZETA SH-01Gに搭載されたのを皮切りに、昨年12月ソフトバンク向けのAQUOS CRYSTAL Xx、今年1月のAQUOS SERIE mini SHV31に相次いで搭載され、着実に『ファン』を増やしてきた。かく言う筆者もエモパーの不思議な面白さと存在感にすっかりハマってしまった一人だ。

今回のSHV32に搭載された「エモパー2.0」は、その名の通り、ひとつのメジャーバージョンアップを遂げており、従来よりも格段に楽しめる内容となっている。

まず、これまでもエモパーは天気予報やユーザーが登録したスケジュールなどを参照し、そのシーンに見合った内容を話しかけてきたが、エモパー2.0ではユーザーに関連する話題を話しかけることができる。たとえば、気になるテレビ番組やニュースを登録しておけば、そのキーワードに関連する話題について、話しかけてくるわけだ。

また、これまでのエモパーは、基本的に自宅でマナーモードをオフにしたときに音(声)を出してしゃべり、外出時はロック画面に文字を表示して話しかけたり、ユーザー自身が端末を振ったときのみ、音を出してしゃべるという仕様だった。今回のエモパー2.0では外出時でもイヤホンが接続されているときは話しかけてくるという設定も可能で、通勤や通学中、「いつもの○○駅ですね」「○○周辺のご当地グルメは△△だそうですよ」と話題を提供してくる。

さらに、エモパーが自宅で天気予報やスケジュールなどを話したとき、ユーザーが「ほかには?」と話しかけると、最初に話しかけた話題とは別の話題、あるいは関連する話題を話させることもできる。エモパーの言葉を聞き逃したときは、「もう一度」と話しかけると、直前に話した内容をもう一度、聞くことも可能だ。

エモパーに「聞き返す」ことができるように

そして、こうしたコミュニケーションを重ねた結果、エモパーが現在、どういう状況なのかを表わす「エモパーの気持ち」という機能も用意される。パーセンテージで表示され、同じ画面にはエモパーが気にかけていることなどがいっしょに表示される。

SHV32に初期状態で搭載されているエモパーのキャラクターは、「えもこ」「さくお」「つぶた」の3つだが、熱血キャラの「おれんじん」、不思議キャラの「桜田かおる」もあとから追加することができる。いずれもハッキリとした個性のあるキャラクターなので、自分と相性のいいキャラクターをいろいろ試してみるのも楽しいだろう。

auの最新サービスにも対応

アクセントの効いたボディデザイン、GR certified対応のカメラ、シャープ独自の「エモパー」など、しっかりと個性を持つSHV32だが、auの最新サービスに対応するなど、スペックや使い勝手も今まで以上に進化しており、幅広いユーザーが安心かつ便利に活用できる環境を整えている。

まず、ネットワークについては、au 4G LTEの受信時最大225Mbps、WiMAX2+の受信時最大220Mbpsという2つの高速データ通信サービスに対応するほか、対応端末同士で高音質通話やシンクコール、ボイスパーティが利用できる「au VoLTE」にも対応する。au VoLTEは春モデルのAQUOS SERIE mini SHV31をはじめ、夏モデルのAndroid搭載フィーチャーフォンのAQUOS K SHF32など、着実に対応機種が増えてきており、au VoLTEならではの楽しみを体験しやすくなりつつある。

通信関連では無線LANがIEEE802.11a/b/g/n/acに準拠するが、Qualcommが開発した「MU-MIMO(MultiUser-Multi Input Multi Output)」に対応するため、MU-MIMO対応の無線LANアクセスポイントの設置された環境では、複数の端末が接続してもSHV32のスループット低下を抑えることができる。

さらに、4G LTEとWi-Fiの両方が利用できる環境下において、Wi-Fiの電波状態が低下してきたときは4G LTEのネットワークにシームレスに切り替えられる「スムーズチェンジモード」にも対応する。au 4G LTEはもちろん、Wi-Fiにおいても快適な通信環境が得られるわけだ。

また、日本語入力については、新たに「S-Shoin」(スーパーショイン)と呼ばれる日本語入力ソフトウェアを搭載する。かつてシャープが販売していたワープロ「書院」の名前を継承し、ケータイ時代も「ケータイShoin」という日本語入力システムが搭載されていたが、スマートフォン向けにもそのノウハウが活かされた日本語入力が搭載されることになった。実用上のメリットはもう少し使い込んでみないと見えてこない部分もあるものの、スペックでは従来の約3倍に相当する予測変換候補を搭載するほか、フリック入力時の入力ミス補正、定型文表現など、実用的な強化が図られている。

定型表現を予測変換

シャープ製端末独自の機能としては、すでにソフトバンク向けのAQUOS CRYSTALなどにも搭載されていた「Swipe Pair」が搭載された。対応端末同士を2台並べ、画面をなぞるように操作するだけで簡単にペアリングができ、ペアリングした2台の端末の画面をつないで、一枚の写真を大きな画面で表示することができる。Swipe Pair対応スマートフォンAQUOSを持つ友だちや家族といっしょに楽しみたい機能のひとつだ。

2代のSHV32を並べて写真を大きく表示

SHV32で撮影した写真をはじめ、メールなどでやり取りしているPDFファイルや文書を印刷したいときは、「PrintSmash」という機能を使い、Wi-Fi経由でコンビニエンスストアのコピー機でプリントすることが可能だ。外出中にビジネス文書をプリントしたいときなどにも便利な機能だ。

多くのユーザーの「こだわり」に応えられるSHV32は買い!

スマートフォンは、ユーザー層の拡がりと共に、ニーズも多様化してきた。しかし一方で、デザインや機能が似通うことも多くなり、多くのユーザーは自分なりの「こだわり」と「期待」に応えてくれるスマートフォンが探し求めている。

今回、auから発売されたSHV32は、ユーザーのこだわりと期待にしっかりと応えてくれるモデルだ。これまでのスマートフォンから機種変更するユーザーはもちろん、はじめてスマートフォンに移行するユーザー、他のプラットフォームから移行するユーザーでもスムーズに入り込むことができ、今まで以上に楽しめる環境が整った端末だ。なかでもGR certifiedの最強カメラ、世界最高レベルのスーパースロー映像、不思議なコミュニケーションが楽しめるエモパー2.0は、いずれもスマートフォンAQUOSならではのもの。もっとスマートフォンを快適に、楽しく活用したいユーザーに、ぜひ一度は試して欲しいモデルだ。

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執筆: 法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話やスマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8.1」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-01F 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるゼロからはじめるタブレット超入門 Android 4対応」「できるポケット au Androidスマートフォン 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるWindowsタブレット Windows 8.1 Update対応」など、数多く執筆。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。ホームページはこちら