スマートフォンのための新しいエンターテインメント

 各社から魅力的なモデルが登場し、ケータイからスマートフォンへの移行が急速に進んでいる。特に、昨年末からはその移行にも一段と弾みが付いてきた印象だ。

 スマートフォンには今までのケータイとは違ったさまざまな魅力があると言われている。インターネットのWebページが快適に閲覧できるのはもちろん、インターネットで提供されるさまざまな最新のサービスをいち早く利用できるなどのメリットがある。アプリについても世界中の開発者が参加しているため、今までのケータイでは考えられなかったようなユニークなアプリ、実用的なアプリなど、多彩なアプリを楽しむことが可能だ。

 そして、スマートフォンの楽しみとして、もうひとつ忘れてはならないのがエンターテインメントだ。たとえば、YouTubeなどの動画投稿サイトには、世界中から興味深い動画が数多く投稿される。これまでのケータイでも動画は見ることができたが、画質が今ひとつだったり、画面サイズが大きくないなど、十分に楽しめない面があった。しかし、スマートフォンの多くはフルタッチの画面を採用しているため、ディスプレイサイズが大きく、迫力ある動画コンテンツを楽しむことが可能だ。

 ただ、こうしたスマートフォンで楽しむ動画コンテンツは、主に3Gネットワークを経由して視聴するため、電波状態によって視聴が不安定だったり、長時間にわたって、大量の動画コンテンツを視聴していると、回線が混雑してしまい、ネットワーク制限に掛かってしまうなどの不安もあった。スマートフォンで動画コンテンツが楽しめるとは言え、通信で楽しむがゆえの制限などもあったわけだ。

 これに対し、スマートフォンでも搭載されるモデルが増えてきたワンセグは、こうした制限を受けることなく、視聴することができる。改めて説明するまでもないが、ワンセグが携帯電話の電波とは別の「放送」のための電波を利用しているため、一度に大勢の利用者が視聴しても当然のことながら、ネットワークなどが影響を受けることはない。通信で楽しむ動画コンテンツのように、ユーザーが個別に見たいコンテンツをオンデマンドで楽しむような使い方はできないが、広いエリアのユーザーに対し、一斉に大量のデータを送り届けるには、やはり、放送に一日の長がある。ただ、ワンセグはハイスペック化が進んだ現在のスマートフォンでは、解像度などの仕様面で必ずしも十分とは言えないうえ、番組もほとんどが地上デジタル放送と同じ内容となっているため、スマートフォンならではの動画コンテンツを楽しめる状況にはない。

 そんな中、スマートフォンのための新しいサービスとして、注目を集めているのがmmbiが提供するスマートフォン向け放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」だ。NOTTVはアナログテレビ放送終了に伴い、空きができた「V-High」と呼ばれる帯域を使い、モバイル向けに提供されるマルチメディア放送「モバキャス」に対応したスマートフォン向け放送局で、2012年4月から関東一円をはじめとした15都府県でサービスが開始される。テレビ放送のような高品質かつ高画質の「リアルタイム放送」と「蓄積型放送」が提供されるが、これにスマートフォンの通信機能を組み合わせることで、通信と放送を連携させた新しいエンターテインメントサービスが実現される。つまり、通信と放送が持つそれぞれの「いいとこ取り」をしたサービスとして、注目を集めているわけだ。

 このNOTTVを楽しめるスマートフォン第1弾として、NTTドコモから発売されたのがシャープ製端末「docomo NEXT series AQUOS PHONE SH-06D」だ。シャープと言えば、これまでのケータイはもちろん、スマートフォンでもいち早くAndroidプラットフォームを採用したモデルの開発に着手し、ハイスペックと使いやすさをバランスさせた各社向けのモデルは、市場はもちろん、業界内でもたいへん高い評価を受けている。その一方で、液晶テレビ「AQUOS」をはじめ、Audio&Visualの世界でも常に市場をリードし続けてきたメーカーとして、広く知られている。NOTTVという今までにはなかった新しいジャンルのエンターテインメントを楽しめる端末は、通信と放送というそれぞれのジャンルで十分な実績を持つ同社だからこそ、取り組むことができたとも言えるわけだ。

2012年4月からサービスが開始される「NOTTV」 docomo NEXT series AQUOS PHONE SH-06D

高精細かつ大画面の4.5インチHD液晶ディスプレイを搭載

リアルタイム放送の視聴以外にも、蓄積型放送のシフトタイム資料もできる

 NOTTVが楽しめる初めてのスマートフォンとして、いよいよ発売されたSH-06Dだが、端末本体の魅力を語る前に、少しNOTTVについて補足しておこう。

 前述のように、現在国内で販売される多くのケータイやスマートフォンには、地上デジタル放送をベースにした「ワンセグ」が搭載されている。ワンセグは地上デジタル放送で使う13セグメントの帯域の内、1つのセグメントをケータイやスマートフォン、カーナビゲーションといった携帯端末向けに放送するというしくみのものだ。これに対し、NOTTVは2011年7月のアナログテレビ放送終了に伴って空いた「V-High」と呼ばれる帯域を使い、ワンセグの方式を拡張した「ISDB-Tmm」という方式で放送サービスを提供する。このISDB-Tmmではワンセグと同様の「リアルタイム放送」だけでなく、放送内容を端末に保存する「蓄積型放送」も提供され、電子書籍やアプリなども蓄積型放送を経由してスマートフォンにダウンロードされる。放送で使われる映像の仕様については、ワンセグがQVGA相当(320×240ドット/320×180ドット/15fps)だったのに対し、NOTTVのリアルタイム放送では720×480/30fpsが採用され、蓄積型放送ではさらに高品質なフルHD相当(1920×1080ドット/60fps)での送信も可能になる。つまり、ワンセグとは比較にならないほど、高品質なコンテンツを楽しめるわけだ。

 NOTTVのサービスは2012年4月に開始され、当初は東京スカイツリーがカバーする関東一円、愛知、三重、大阪、京都、奈良、兵庫、福岡、沖縄の15都府県でサービスが提供される。そして、2013年3月末までには、北海道、宮城、関東周縁部、静岡、新潟、長野、石川、和歌山、岡山、広島、香川、愛媛、熊本、佐賀、鹿児島の14道県まで、エリアは拡大し、世帯カバー率は2012年4月の約60%から約76%まで拡がる予定だ。気になる料金は月額420円で、「ドコモケータイ払い」とクレジットカード払いのいずれかを選ぶことができる。初回申し込みから30日間は無料で視聴することが可能だ。

 NOTTVで視聴できる番組も多岐に渡っている。Jリーグやプロ野球などの「スポーツ」や、ミュージッククリップなども楽しめる「音楽」をはじめ、生活に役立つ情報などを提供する「情報・バラエティ」、国内外の人気ドラマが楽しめる「ドラマ」、「アニメ」、「映画」、「趣味・教養」などを楽しむことができ、さらに24時間のニュースチャンネルも放送される。しかもこれらの多くの番組を視聴しながら、TwitterやFacebookなどのソーシャルサービスに投稿することで、今までのテレビにはなかったインタラクティブな視聴スタイルを可能にする。

 今回は4月からの開局を控え、試験電波による放送を視聴してみたが、画質についてはこれまでのワンセグと違い、非常にクリアで高画質であるという印象を受けた。もちろん、視聴可能エリアは限られているが、これだけの画質がモバイル環境で楽しめるのは、なかなか魅力的と言えそうだ。特に、Jリーグ中継などがスタジアムでも視聴できれば、今までにない観戦スタイルで楽しめるだろうし、海外ドラマや映画などのコンテンツをちょっとした空き時間に視聴できるのもなかなか面白そうだ。

SH-06Dは720×1280ドットのHD表示が可能な4.5インチ液晶を搭載。視差バリア方式の3D表示も対応する

 こうした魅力的なサービス内容のNOTTVを快適に視聴するために、SH-06Dは国内外のスマートフォンでもトップクラスのハイスペックを実現している。まず、ディスプレイは720×1280ドットのHD表示が可能な4.5インチのNewモバイルASV液晶を採用する。4.5インチというサイズはスマートフォンでトップクラスの大画面であり、HD表示も2012年のスマートフォンの主流になると言われている。NOTTVのように、高品質な映像コンテンツを迫力ある画面で視聴できることも魅力だが、HD表示に対応しているため、Webページなどを閲覧するときにも小さな文字までハッキリと見やすく表示できるのも見逃せないメリットだ。視差バリア方式による3D表示にも対応しており、裸眼で3D対応コンテンツを楽しむことができる。3D対応コンテンツは、インターネット上で公開されているものやNOTTVで提供されるものをはじめ、ワンセグや写真などの2Dコンテンツを3D表示に変換して楽しむことも可能だ。

 ※NOTTVの2D放送は3D表示に変換できません

 ディスプレイサイズが大きくなることで、実際の利用シーンでは対環境が気になるところだが、SH-06Dに搭載されている液晶ディスプレイは屋外でも見やすいように、バックライトの明るさを制御するアウトドアビューに対応する。特に、NOTTVのように、屋外で視聴するコンテンツが多い環境には役に立つ。街中での利用でものぞき見を防止するための「カラーベールビュー」に対応し、ステータスバーをタップしたときに表示されるステータスパネル内でワンタッチで切り替えることができる。

安心して利用できるハイスペック

 SH-06Dはディスプレイサイズが大きいだけでなく、中身もしっかりとハイスペックを追求している。CPUはTexas Instruments製デュアルコアCPU「OMAP4460」1.2GHzを搭載する。これまでの多くのスマートフォンではシングルコアCPUが中心だったが、SH-06DはデュアルコアCPUの搭載により、アプリの起動からデータの読み込み、アプリの切り替えなど、さまざまな操作をストレスなく、利用することができる。実際の操作感もサクサクで、昨年末に発売され、好調な売れ行きを記録しているAQUOS PHONE SH-01Dと同じように、非常に快適に使うことができる。

エコ技機能を搭載し、高品質な表示とロングライフの両立を実現

 大画面ディスプレイにハイパフォーマンスのCPUとなると、ユーザーとしてはバッテリーの消費が気になるところだが、シャープでは昨年末に登場したモデルから独自の「エコ技」という機能を搭載することにより、高品質な表示とロングライフの両立を実現している。エコ技はディスプレイの省電力化を可能にするバックライト制御をはじめ、複数のアプリを起動したときのムダな電力消費を自動的に抑制することにより、全体的なバッテリー消費を抑える機能だ。エコ技には「通常モード」「エコ技モード」「お助けモード」の3つの動作モードが用意されており、自分の好みに合わせて、3つのモードをワンタッチで切り替えることができる。たとえば、電池残量が50%を切ったら、自動的にエコ技モードの切り替えたり、自分のライフスタイルに合わせ、各機能の動作を切り替えることで、全体的な電力消費を抑えるといった設定もできる。ちなみに、SH-06Dは緊急地震速報にも対応しているが、緊急地震速報を受信すると、長時間、充電ができなくなることを考慮し、エコ技の「お助けモード」に切り替えるかどうかを確認するメッセージが表示されるなど、他の機能との連動も実現されている。

 SH-06Dのエコ技の効果については、シャープによると、エコ技設定「通常」から「技あり」モードに切り替えることで待受時間が最大約190%アップするという。NOTTVのように、多彩な動画コンテンツが楽しめるスマートフォンにとって、エコ技のようなワンタッチかつ自動的に電力消費を抑える機能が搭載されていることは、非常に心強い。

 また、SH-06DはIPX5/7の防水、IP5Xの防じんに対応しているが、パッケージには本体カラーに合わせた卓上ホルダが付属しており、充電のたびに外部接続端子のキャップを開ける必要がなく、安心して、防水防じん性能を維持できるようにしている。この付属の卓上ホルダは他の一般的なスマートフォンの卓上ホルダと違い、NOTTVの受信感度を向上させるアンテナを搭載しており、本体をセットすると、NOTTVやYouTube、ワンセグ、ピクチャー、ブラウザのアイコンが並ぶチャージングメニューが表示され、これらのアプリをすぐに起動できるようにしている。あらかじめ設定した内容で写真や動画を再生するチャージングシアターを起動することもでき、ちょっとしたフォトスタンドのような使い方もできる。

 さらに、日本のスマートフォンには必須と言われるワンセグ、おサイフケータイ、赤外線通信にも対応しており、ケータイから移行しても今までと同じように使うことができる。パケット定額サービスの上限は変わるが、テザリングにも対応しているため、モバイルノートPCを持ち歩いているユーザーにとっても便利だ。

本体カラーに合わせた卓上ホルダが付属する 本体をセットすると、NOTTVやYouTube、ワンセグなどの起動アイコンが並ぶチャージングメニューが表示される 卓上ホルダには、NOTTVの受信感度を向上させるアンテナが搭載されている

楽しく使うための機能も充実

オートフォーカス対応800万画素カメラを採用

 NOTTVが楽しめるSH-06Dだが、それ以外のエンターテインメントをはじめ、スマートフォンとしての楽しさが体験できる機能も充実している。

 背面に備えられたオートフォーカス対応カメラは、800万画素CMOSイメージセンサーを採用し、静止画はもちろん、高画質の1280×720ドットのハイビジョン動画も撮影することができる。撮影した静止画や動画はすぐに保存され、すぐにブログやソーシャルサービスへ投稿することができる。静止画については、iモード携帯電話をはじめ、フィーチャーフォンに送るときやブログに投稿するとき、最大サイズで送信すると、ファイルサイズが大きすぎ、受信できなかったり、うまくブログに投稿できないといったことがあるが、SH-06Dは他のSHシリーズのスマートフォン同様、最大サイズで撮影した写真をリサイズできる編集機能が搭載されているため、常に適切なサイズの写真を送信したり、投稿することができる。

 撮影機能もフィーチャーフォンに搭載されてきた高機能カメラを継承しており、シーン自動認識、24種類のシーン設定、個人&ペット検出、チェイスフォーカスなどが利用できる。笑顔フォーカスシャッターや振り向きシャッターで自然な表情の写真を撮ったり、魚眼カメラやミニチュアライズカメラを設定し、ちょっと雰囲気の違った写真を撮って、楽しむこともできる。

 Audio&Visual環境については、液晶テレビ「AQUOS」やブルーレイディスクレコーダー「AQUOSブルーレイ」と連携できるスマートファミリンクにも対応する。SH-06DをWi-Fiで同じ家庭内のLAN環境に接続しておけば、ホームネットワーク機能を利用し、専用メニューの設定ガイダンスに従って、簡単に設定や操作が可能だ。たとえば、AQUOSブルーレイで録画した番組をWi-Fi経由で転送し、離れた部屋からSH-06Dで視聴したり、SH-06Dで撮影した写真や動画をAQUOSの大画面にワイヤレスで送信し、みんなで楽しむといった使い方ができる。さらに、SH-06Dで撮影した動画をAQUOSブルーレイに保存しておき、SH-06Dのデータ領域を空けることもできる。

NOTTVを楽しみたいならAQUOS PHONE SH-06Dは買い!

 スマートフォンはアプリによるカスタマイズやインターネットで提供されるさまざまなサービスの連携など、今までのケータイにはない楽しさがある。なかでもYouTubeのような動画コンテンツは、スマートフォンの大画面を活かすことができるため、非常に人気が高い。ただ、その多くはパソコンでも楽しめるものであり、電波状態などによって、安定して視聴できないといったことも起こり得る。これに対し、V-Highという帯域を使って、2012年4月からサービスが開始されるスマートフォン向け放送局「NOTTV」は、リアルタイム視聴とシフトタイム視聴という新しい視聴スタイルをはじめ、ソーシャルサービスとの連携など、今までの放送や通信では体験できなかった新しいエンターテイメントを体験することができる。そして、NOTTVが楽しめるスマートフォン第1弾となるSH-06Dは、NOTTVという新しいエンターテインメントを存分に楽しむために開発されたモデルだ。しかも単にNOTTVを視聴できるだけでなく、スマートフォンとしての基本機能や日本仕様も充実しており、これからスマートフォンへ移行することを検討しているユーザーにも安心しておすすめできる。NOTTVの新しいエンターテインメントの世界をいち早く体験してみたいユーザーなら、「買い!」のモデルだ。

プロフィール

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 7」をはじめ、「できるポケット SoftBank AQUOS PHONE 006SH スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2011年6月30日発売)、「できるポケット docomo AQUOS PHONE SH-12C スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2011年6月16日発売)などのスマートフォン関連も数多く執筆。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。

関連情報

■docomo NEXT series AQUOS PHONE SH-06D 製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/next/sh06d/

■docomo NEXT series AQUOS PHONE SH-06D 製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sh06d/

■シャープ 携帯電話 NTTドコモラインアップ
http://k-tai.sharp.co.jp/lineup/docomo/

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http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20120313_518425.html

■ドコモ、モバキャス対応スマホ「AQUOS PHONE SH-06D」
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20120313_518425.html