今までのケータイとは違い、ユーザーの好みに応じて機能を追加できるなど、自由な使い方ができるスマートフォン。ただ、この『自由』にはいくつかの責任も伴い、ユーザー層によっては、スマートフォンの自由が足かせになってしまうケースもある。今回、NTTドコモから発売された「スマートフォン for ジュニア SH-05E」は、ジュニア世代のユーザーが安心して使えることを考えて、開発されたスマートフォンだ。ひと足早く、実機を試すことができたので、SH-05Eの仕上りをチェックしてみよう。

 

スマートフォンを使いたいジュニア世代

 わずか数年の間に、普及が進んだスマートフォン。読者のみなさんの周囲でもスマートフォンを持つ人がかなり増え、スマートフォンやアプリについての話題も増えてきているはずだ。NTTドコモも幅広いユーザーのニーズに応えるため、多彩なラインアップを揃え、今年1月には昨年10月の2012年冬モデルに続き、春商戦へ向けた新モデルを発表した。

 そんな春商戦へ向けたモデルの中で、新しいジャンルへ取り組むモデルとして、注目を集めているのが「スマートフォン for ジュニア SH-05E」だ。これまでスマートフォンと言えば、基本的に筆者や読者のみなさんのような『実働世代』や『学生』、『シニア』といった年代のユーザーを対象にしたモデルが展開されてきた。これに対し、NTTドコモでは子どもたちが使うケータイとして、「キッズケータイ」をラインアップしているが、ひと口に「子どもたち」とは言ってみても小学生から高校生くらいまで、かなり幅広い世代が存在する。また、子どもによって、成長の度合いや利用する環境も異なるため、ひとつのケータイで、すべてのニーズを十分に満たすことができない部分もあった。なかでも小学校高学年から中学生にかけての『ジュニア世代』は、大人が使う持ち物への関心が高く、当然のことながら、ケータイよりもスマートフォンを持ちたいと考える子は多い。ある調査によれば、元々、70%台だった小中学生のスマートフォンの利用意向は、この1年ほどの間に、80%台半ばまで増え、高校生は90%台後半まで、増えているという。

 しかし、保護者の視点で考えると、スマートフォンはインターネットからアプリまで、あまりにも自由に使えてしまうため、いくらジュニア世代のニーズが高いとは言え、なかなか与えにくいというのが実状だろう。また、料金面で考えてもケータイであれば、通話料やメールによるパケット通信料程度なので、負担は少ないが、スマートフォンともなれば、パケット定額サービスの契約が必須になり、月々の負担額はグッと増えてしまう。

 とは言うものの、子どもたちのことを考えれば、小学校低学年を対象にしたケータイに物足りなさを感じてしまうところも理解できる。子どもにケータイやスマートフォンを持たせるかどうかという議論もあるが、家族との連絡や友だちとのコミュニケーションなどに役立つことは確かであり、将来的なことを考えてもこうしたデジタルツールに早くから慣れ親しんでおいた方がいいという意見もある。

スマートフォン for ジュニア SH-05E
スマートフォン for ジュニア SH-05E

 今回発売されたSH-05Eは、こうした小学校高学年から中学生までを視野に入れたスマートフォンだ。基本的にはAndroidプラットフォームを採用したスマートフォンとして開発されているが、ジュニア世代が安心してスマートフォンデビューできるように、フィルタリングをはじめ、アプリや時間帯による利用制限、防犯ブザーなど、安心して使えることを考えた機能を搭載した新しいカテゴリーのスマートフォンとして作られている。スペックもジュニア用だからと言って、必要以上に抑えることはなく、大人が使う最新モデルと比較してもまったく遜色のない仕様となっており、子どもたちもストレスなく使うことができるはずだ。

 

コンパクトで持ちやすいボディに大人向けに匹敵するハイスペック

 これまで、国内外で販売されてきたスマートフォンにはない新しいカテゴリーのモデルとなるSH-05E。子どもたちが使いやすく、大人たちのモデルとどのように差が付けられているのかが気になるところだ。

 まず、ボディは成長過程の子どもたちでも持ちやすいように、幅63mmのコンパクトなサイズにまとめられている。背面とボディ周囲をラウンドさせ、前面から見てもボディカラーが周囲に見えるようにアクセントが付けられ、シンプルで飽きの来ないデザインに仕上げられている。もっとも大きなディスプレイを搭載するフラッグシップモデルの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」と比較すると、ひと回り小さく、春モデルで登場した「AQUOS PHONE EX SH-04E」よりもコンパクトだ。アクティブな子どもたちが使うこともあり、当然、大人が使う一般的なスマートフォンの定番機能でもあるIPX5/7の防水、IP5Xの防じんに対応しており、安心して使うことができる。卓上ホルダも付属する。

  • 幅63mmのコンパクトなサイズにまとめられたボディ
    幅63mmのコンパクトなサイズにまとめられたボディ
  • 背面とボディ周囲をラウンドさせ、しっかりホールドできる
    背面とボディ周囲をラウンドさせ、しっかりホールドできる

  • IPX5/7の防水、IP5Xの防じんに対応


 ディスプレイはコンパクトなボディながら、約4.1インチの高透過CG Silicon液晶を搭載する。従来の約4.5インチのCG Silicon液晶に比べ、約20%も液晶パネルの透過率が高く、小さな字などもハッキリと見え、視認性に優れる。後述する学習アプリなどを利用する観点からもしっかりしたディスプレイが搭載されていることは望ましい。

 背面には裏面照射型CMOSセンサーによる1210万画素カメラが搭載されており、高い色再現性を実現する画像処理エンジン「ProPix」が組み合わせられている。連撮モードやエフェクト撮影、HDR撮影などの撮影機能も充実しており、本体を横向きに構え、ボリュームキーを押して、シャッターを切ることもできる。上位モデルとほとんど変わらないレベルのカメラが搭載されているため、SH-05Eを使っていくことで、写真を撮る楽しみを覚えていくことになるかもしれない。

  • 約4.1インチの高透過CG Silicon液晶を搭載。前面から見てもボディカラーが周囲に見えるようにアクセントが付けられている
    約4.1インチの高透過CG Silicon液晶を搭載。前面から見てもボディカラーが周囲に見えるようにアクセントが付けられている
  • 背面には1210万画素のカメラを搭載
    背面には1210万画素のカメラを搭載
  • 暗いシーンでの撮影や簡易的なライトとして使用できる、モバイルライトを搭載
    暗いシーンでの撮影や簡易的なライトとして使用できる、モバイルライトを搭載
Blue、White、Pinkの3色が用意される
Blue、White、Pinkの3色が用意される


 モバイルネットワークについては、NTTドコモが提供するXiに対応しており、受信時最大75Mbpsの高速データ通信が利用できる。Wi-Fi(無線LAN)機能が搭載されていないため、ブラウザなどの利用もすべてNTTドコモのモバイルネットワークを経由して、アクセスすることになる。その結果、spモードのフィルタリングが必ずかかることになり、好ましくないコンテンツなどへの接触を根源から避けることができる。

 逆に、友だちとのデータのやり取りなどに便利な赤外線通信、ワイヤレスヘッドホンなどが利用できるBluetoothが搭載されているほか、USBケーブルでパソコンと接続すれば、「MediaJet」と呼ばれるアプリケーションを使うことで、音楽データを取り込んだり、データ共有を使うことができる。ちなみに、音楽再生については、Dolby Mobile v3に対応しており、臨場感のあるサウンドを楽しむことが可能だ。

 CPUはQUALCOMM製Snapdragon S4 MSM8960/1.5GHzが採用され、8GBのROMと1GBのRAMが搭載されている。ROMの容量は大人向けのハイエンドモデルよりも少ないが、アプリの追加に制限があることを考えれば、この容量でも実用上、まったく問題はないだろう。音楽データや写真などを保存しておくときに利用するメモリーカードは、microSDXCメモリーカードに対応しており、本体の電池パックを外すと、メモリーカードスロットにアクセスできる。

  • ステレオイヤホンを利用すると、バーチャル5.1chサラウンドで臨場感あふれるサウンドが楽しめる
    ステレオイヤホンを利用すると、バーチャル5.1chサラウンドで臨場感あふれるサウンドが楽しめる
  • 本体下部にはストラップホールを備える
    本体下部にはストラップホールを備える
  • SH-05Eのホーム画面
    SH-05Eのホーム画面
  • アプリ一覧画面。Googleサービスに対応していないため、GmailやGoogle Playといったあぷりは搭載されていない
    アプリ一覧画面。Googleサービスに対応していないため、GmailやGoogle Playといったアプリは搭載されていない

 プラットフォームはAndroid 4.0を採用しているが、基本的にGoogleサービスには対応していないため、Google Playからアプリをダウンロードしたり、コンテンツを購入することはできない。これは言うまでもなく、子どもたちがあまり意識をしないで、悪意のあるアプリを追加してしまったり、コンテンツを次々と買ってしまうといったことを避けるためだ。ちなみに、筆者が国民生活センターや各地の消費者センターなどで取材をしたとき、コンテンツに料金がかかることを意識せず、子どもが買ってしまったというケースが多く聞かれたが、その意味からもこうした制限がしっかりと掛けられているのは、保護者としても安心できる。

 

 

安心して使えることを考えた機能

  • [利用制限設定]のメニュー。電話・メールの制限や、アプリの利用制限が設定できる
    [利用制限設定]のメニュー。電話・メールの制限や、アプリの利用制限が設定できる
  • [利用・通話時間制限]のメニュー。利用を制限する時間帯の設定や、1日の利用可能時間などを設定できる
    [利用・通話時間制限]のメニュー。利用を制限する時間帯の設定や、1日の利用可能時間などを設定できる
 ジュニア世代の子どもたちが使うモデルでありながら、大人が使うモデルに匹敵するハイスペックを実現したSH-05Eだが、子どもたちが安全に使うための取り組みはどうなっているのだろうか。

 まず、電話やメールについてだが、電話帳に登録した相手との間だけでの発着信や、メールの送受信ができるように、機能制限する設定ができるようになっている。AndroidスマートフォンにはGmailやEメールアプリが標準で用意されているが、SH-05Eは前述の通り、Googleサービスに対応しない仕様となっているため、spモードメール以外のメールアプリは用意されておらず、必ずspモードのフィルタがかかることになる。

 次に、アプリについては、子どもたちが不必要なアプリをインストールしたり、実行したりすることを避けるため、これらを制限する機能が用意されている。また、スマートフォンの使いすぎを防ぐ観点からも時間帯による起動制限もできるため、昼間から夕方にかけてはゲームで遊んでもかまわないが、夜間から深夜はゲームを起動させないといった制限ができる。ちなみに、くり返しになるが、このモデルはGoogleサービスに対応していないため、Google Playからアプリをダウンロードして、使うことはできない。この時間帯による制限は、ゲームなどのアプリの起動だけでなく、通話などについても制限することができる。スマートフォンやケータイを持つと、どうしても友だちと何度も電話をかけてしまうことがあるが、夜間や深夜についてはアプリと同じように制限をかけて、ムダな通話をしないように設定ができる。

 同様の制限として、インターネットの利用も制限ができる。インターネットの利用については、たとえば小学生の間は完全に制限しておき、中学生はspモードのフィルタリングのかかった範囲内で許可するというように、家庭の方針に合わせた設定ができる。

 SH-05Eにはジュニア世代の子どもたちが安心してスマートフォンを使える工夫だけでなく、いざというときのことを考えた機能も用意されている。まず、NTTドコモが提供する「イマドコサーチ」に対応しているため、保護者が子どもたちの現在地を確認したり、子どもたちが電源を切ったときに位置情報を送信するといった使い方ができる。そして、万が一のときは、本体側面のサイドキーを長押しするだけで、防犯ブザーが鳴動し、あらかじめ登録しておいた1件の緊急連絡先に自動的に電話を発信するように設定できる。

  「イマドコサーチ」を利用することで、子ども(SH-05E)の現在地を確認できる   「イマドコサーチ」を利用することで、子ども(SH-05E)の現在地を確認できる   サイドキーの長押しで、防犯ブザーを鳴らすことができる
 
「イマドコサーチ」を利用することで、子ども(SH-05E)の現在地を確認できる サイドキーの長押しで、防犯ブザーを鳴らすことができる

 

スマートフォンを楽しく使うための機能も搭載

 安心して使うための機能をしっかりと備えたSH-05Eだが、使うことを制限するばかりでは子どもたちも面白くないだろうし、そもそもスマートフォンを持たせる意味合いが薄れる。せっかくスマートフォンを持つのだから、スマートフォンならではの楽しみ方も体験して欲しいところだ。

 そこで、SH-05Eには、子どもたちが利用できる便利なアプリをプリインストールしている。まず、定番としては、NTTドコモがスマートフォン向けに提供する「dメニュー」だが、ジュニア向けdメニューが別途、用意されている。NTTドコモの人気サービスのひとつである「しゃべってコンシェル」にも対応しており、スマートフォンに話しかけるだけで、さまざまな疑問に答え、情報を検索することができる。

 実用的なアプリとしては、「地図アプリ」「おこづかい帳」が便利だ。地図アプリは現在地を知るだけでなく、「ドコモ地図ナビ」(月額315円)を申し込むことで、乗り換え案内やナビゲーション機能なども利用できる。おこづかい帳は支出の分類などにも対応し、月ごとに集計を出すことができる。

 学習に役立つアプリとしては、小学校5・6年生向けの「テンクエスト小5・6お試し版」、中学生向けの「出るナビ 中学歴史 お試し版」がプリインストールされている。気に入れば、製品版のアプリにアップデートすることもできる。さまざまな学習に役立つ「辞書」は、他のSHシリーズで好評を得ている国語・英和・和英辞典が搭載されており、電子辞書並みの内容をいつでも検索できる。さらに、時間割アプリも搭載されており、登録した時間割をウイジェットでコンパクトに表示させることもできる。

  • ジュニア向け「dメニュー」
    ジュニア向け「dメニュー」
  • 「ドコモ地図ナビ」を申し込むことで、乗り換え案内やナビゲーション機能も利用できる「地図アプリ」
    「ドコモ地図ナビ」を申し込むことで、乗り換え案内やナビゲーション機能も利用できる「地図アプリ」
  • 支出の分類に対応し、月ごとに集計できる「おこづかい帳」
    支出の分類に対応し、月ごとに集計できる「おこづかい帳」
  • そのほかにも、学習アプリや、ゲームアプリもプリインストールされている
    そのほかにも、学習アプリや、ゲームアプリもプリインストールされている
  • スマートフォンを使う上でのマナーやルールを、楽しく学ぶことができる「アニメで学ぶケータイあんぜん教室」
    スマートフォンを使う上でのマナーやルールを、楽しく学ぶことができる「アニメで学ぶケータイあんぜん教室」


 そして、勉強のあとの遊びについては、「モンスターハンター(モバイル版)」や「つみネコ」をはじめ、「MY NUMBER PLACE」や「どうぶつしょうぎ」といった頭を使う知的なゲームも用意されており、スマートフォンらしい楽しみ方を体験することができる。

 さらに、スマートフォンを使っていくうえで、ぜひ知っておきたいこと、覚えておきたいことを楽しみながら学習できる「アニメで学ぶケータイあんぜん教室」もインストールされている。スマートフォンを使う上でのマナーやルールを、保護者といっしょに遊びながら楽しく学ぶことができる。

 最後に、気になる料金についてだが、NTTドコモではSH-05Eユーザーを対象に、月額2980円でパケット通信が最大500MBまで使い放題になる「Xiパケ・ホーダイ for ジュニア」の提供を開始している。元々、アプリなどの制限があるため、すぐに500MBを超えるようなことはないだろうが、超えた場合でも送受信時の通信速度が128kbpsに制限されるのみなので、安心して使うことができる。

 

「スマートフォン for ジュニア SH-05E」を持って、新生活に飛び出せ!

 ケータイやスマートフォンは非常に便利な道具だが、保護者としては使いすぎや思わぬトラブルに巻き込まれることなどが心配で、なかなか素直にすすめにくいような心境になってしまう。しかし、これからの時代を考えれば、こうしたデジタルツールを使いこなすことは非常に重要だと言われており、連絡の取りやすさや安全などの面を考えても持たせた方がいいという指摘も多い。SH-05Eは、まさにこうした今の時代のジュニアユーザーが安心して楽しめるように作られたモデルだ。使いやすさと機能制限による安心感をバランス良く兼ね備え、保護者が安心してすすめられるスマートフォンとして、仕上げられている。今年の春からの新しい生活を控え、ジュニア世代のユーザーがスマートフォンやケータイを持つことを検討しているのであれば、ぜひおすすめしたいモデルだ。

法林岳之法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE sv SH-10D スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2012年8月31日発売)、「できるポケット SoftBank AQUOS PHONE 006SH スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」(2011年6月30日発売)などのスマートフォン関連も数多く執筆。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。