法林岳之レビュー

美しいEDGESTデザインと
プロが認めたカメラ性能に加え
エモパーで使う楽しさを演出する

ここ数年、スマートフォンはスペックや機能、デザインなど、さまざまな面において、大きな進化を遂げてきた。プロセッサが高速になり、ディスプレイも大きく、見やすく、高解像度化し、カメラの性能も向上し、いわゆる「三種の神器」と呼ばれる機能や防水など、日本仕様をほぼ当たり前になりつつある。しかし、スマートフォンの可能性は必ずしもスペックや機能の有無だけで語れるものではないはずだ。NTTドコモから発売されたシャープ製スマートフォン「AQUOS ZETA SH-01G」は、スマートフォンとしての最高峰の性能を追求しながら、「エモパー」という新しいパートナーを得ることにより、今までのスマートフォンにはない新しい可能性を求めたモデルだ。ひと足早く実機を試すことができたので、その仕上がりをチェックしてみよう。

いつもアナタのそばにいるスマートフォン

スマートフォンが登場したばかりの頃、CPUが何GHz、メモリは何GB、プラットフォームのバージョンがいくつ、ディスプレイサイズは何インチといったスペックが注目される傾向が強かった。スマートフォンの完成度が高まってきたと言われるここ1〜2年、そういったスペックとは別に、スマートフォンを構成する他の要素に注目することが増えてきた印象を受ける。たとえば、デザインやカラーバリエーション、ボディの仕上げが注目されたり、他製品にない便利な機能、あるいは各携帯電話会社やサービスプロバイダが提供する新サービスなどが話題になることが多いようだ。スペックが重視されななくなったわけではないが、やはり、「スマートフォンを使うこと」「スマートフォンで楽しめること」「できること」が重視されるようになってきたようだ。

同時に、スマートフォンは一人ひとりのユーザーの生活に密着する存在にもなりつつある。起きてから、仕事や学校に出かけ、デスクに向かっているとき、電車やクルマで移動中、打ち合わせや会議の最中、家に帰り、食事を取り、テレビを観たり、友だちと連絡を取ったり……。そんな毎日が過ぎていく中、いつもボクらの手元にはスマートフォンがある。ケータイも毎日のように使っていたが、インターネットやメール、SNS、音楽、ゲーム、カメラ、エンターテインメントなど、多彩な活用ができるスマートフォンは、さらに利用頻度が高く、自分の身の周りにあるモノの中で、もっとも身近で、もっとも手放せないアイテムになりつつある。まるでスマートフォンが単なるハードウェアではなく、日々の生活を共にするパートナーのような存在になってきた印象だ。

もし、そんな存在のスマートフォンがアナタに向けて、話しかけてきたら……。ちょっと突拍子もないアイデアを本当にスマートフォンの中で体現したのが今回発売されたシャープ製端末「AQUOS ZETA SH-01G」だ。AQUOS ZETA SH-01Gには「エモパー」と呼ばれる機能が搭載されており、ユーザーの利用シーンやシチュエーションに合わせ、ユーザーに話しかけてくるのだ。かつて、クルマやコンピューターを擬人化し、ユーザーに話しかけてくるというシチュエーションは、数多くのSF映画やテレビドラマの世界でも表現されてきたが、単なるハードウェアという存在を超え、テクノロジーが使う人に寄り添い、助け、サポートする存在になっていくことが描かれていた。あの世界観はもう決して、フィクションではなく、そろそろボクらの手元に届こうとしている。エモパーはまさにその先駆けになることを目指して開発されたものだ。24時間、365日、常に自分の近くにあるスマートフォンがまるで相棒(バディ)のような存在だからこそ、もっとユーザーを楽しませ、サポートできるものとして、生まれてきたわけだ。

カラーごとに異なる質感のボディ

発表以来、各方面ではエモパーが注目の的となっているAQUOS ZETA SH-01Gだが、まずは基本となるボディとハードウェアについて、チェックしてみよう。

NTTドコモ向けに供給されるシャープ製スマートフォンは、2014年夏モデルからネーミングを「AQUOS ZETA」に改め、ボディ形状もAQUOS ZETAとしてのオリジナリティのあるものが採用されている。一般的にスマートフォンはほぼフラットなスレート形状を採用しているが、AQUOS ZETA SH-01Gは従来モデルに引き続き、ボディ側面をわずかに張り出させ、断面が六角形のようになる「ヘキサグリップシェイプ」と呼ばれる形状を採用する。たとえば、机の上などに置いてあるとき、ボディ周囲のわずかな張り出しが指のかかりを良くして、手に持ちやすくしている。ボディ周囲には独特の処理を施したプリズムフレームがあしらわれ、光の反射で美しく輝くデザインとなっている。

前モデルから引き続く「ヘキサグリップシェイプ」。前面側と後面側のフレームの素材感の違いも注目

ボディカラーは従来モデルに引き続き、三辺狭額縁によるEDGESTデザインを採用しているが、今回は4つのカラーバリエーションの内、Indigo、Coral、Cyanの3色は本体前面にボディカラーが回り込むデザインを採用し、Whiteについては前面をボディカラーと対照的なブラックで仕上げている。

カラーバリエーションについては、ボディ背面の仕上げにこだわり、質感の違いを演出している点も注目される。たとえば、Indigoは背面に滑りにくいドット上のラバーテクスチャー、Coralは汚れにも強いサラサラの質感、ホワイトは光沢感が美しいグロス調、Cyanは微細なドットと光沢を組み合わせた個性的な触り心地といった具合いだ。特に背面は指紋の跡などを気にするユーザーが多いが、いずれも跡が目立たず、キレイに使える印象だ。

ディスプレイは1920×1080ドットのフルHD表示が可能な約5.5インチのIGZO液晶ディスプレイを採用する。本体前面に占める画面の割合は約81%で、2014年夏モデルのAQUOS ZETA SH-04Fと同じだが、AQUOS ZETA SH-01Gの方がディスプレイサイズが0.1インチ大きい。画面サイズが大きくなると、持ちやすさや操作性などに影響があると心配する人もいるが、ボディ幅が76mm、厚みが8.9mmに抑えられているうえ、ヘキサグリップシェイプの持ちやすさとも相まって、ごく自然に持ち、使うことができる印象だ。ちなみに、操作系については、ホームボタンから左右斜め方向にフリックしたときに画面をひと回り小さく表示する「画面縮小モード」が従来モデルから継承されているほか、利用頻度の高いホームボタンなどのナビゲーションキーを狭い間隔で表示して片手でも親指が届くようにしたり、ロック画面のロックナンバー入力画面を左右に寄せるなどの工夫を加えており、ストレスなく使うことができる。

狭額縁大画面で持ちやすい

省電力性能については、従来モデルよりもチューニングされたIGZO液晶ディスプレイに加え、シャープ製端末でおなじみのエコ技を採用し、バッテリーも3300mAhと大容量のものを搭載する。今からちょうど2年前、同じシャープ製スマートフォンで「2日間使える」のキャッチコピーでAQUOS PHONE ZETA SH-02Eが話題になったが、あのモデルがバッテリーが2320mAhだったことを考えると、今回のAQUOS ZETA SH-01Gにはコンパクトなモバイルバッテリー1つ分のバッテリー容量が追加されている計算になる。使い方にもよるが、「スマートフォンは電池の持ちが……」という心配も過去のものになりつつあり、ゲームや動画なども存分に楽しめる環境が整っている。

また、本体側面にはグリップセンサーが内蔵され、従来モデルで好評を得た「グリップマジック」も継承されている。たとえば、本体を持つだけで画面がONに切り替わったり、ポケットに入れたAQUOS ZETA SH-01Gを握ると、着信履歴があるときにバイブで知らせてくれたり、横になって操作するときに画面回転を自動的に抑えたりと、ユーザーが端末を「持つ」「握る」という動作と連動させることで、使いやすく制御している。この筆者自身も従来モデルから愛用しているが、手放せない機能のひとつとなっている。

手にすることが楽しくなるエモパー

さて、AQUOS ZETA SH-01Gでもっとも注目されるのは、冒頭でも説明した「エモパー」だろう。「スマートフォンやケータイは、ただの機械でしかない」と捉える人がいるかもしれないが、時計にしろ、クルマにしろ、パソコンにしろ、自分にとって、お気に入りの持ち物には愛着がわいてくるものだ。エモパーはそんな愛着をちょっと後押ししてくれるような楽しい機能だ。

「スマホがしゃべる」というシャープならではの試み「エモパー」

シャープは人工知能「ココロエンジン」を搭載した家電製品を開発し、お掃除ロボットの「COCOROBO(ココロボ)」などが高い評価を受けているが、このココロエンジンのノウハウを活かし、AQUOS ZETA SH-01Gがユーザーに話しかけてくる機能として開発されたのが「エモパー」というわけだ。たとえば、出かけるときにAQUOS ZETA SH-01Gを手に持つと、今日の天気を音声で伝えつつ、「雨が降るそうですよ。傘を忘れないでください」と教えてくれたり、自宅に帰ってくると、「お疲れさまでした」と声をかけながら、「お腹が空きました。充電して欲しいです」と、おねだり(?)もしてくる。ちなみに、ユーザーがAQUOS ZETA SH-01Gを購入し、使っていく内に、自宅や職場の場所も把握し、自宅に居るときは音声で話しかけ、外出時や勤務中は画面の文字表示で話しかけてくるので、外出時なども気にすることなく、楽しむことができる。もちろん、自宅に居るときも常にしゃべり続けるというわけではなく、ユーザーがAQUOS ZETA SH-01Gを卓上に置いたときなどに声をかけてくる。近くで行なわれているイベントなどの情報を教えてくれるなど、なかなか話の内容もバリエーションに富んでいる。このあたりの動きはシャープが公開しているエモパーの利用シーンをまとめた動画を見てもらえると、イメージしやすい。

エモパーには女性の「えもこ」、男性の「さくお」、ぶたの「つぶた」という3つのキャラクターが用意されており、それぞれに話し方も個性も異なる。ユーザー自身については、エモパーが話しかけるときの呼び名としてつかうニックネームを登録するほか、性別や誕生日、自宅や職場及び学校の場所などを登録する。これらの内、自宅と職場及び学校は、前述のように、使っていく内に数日で認識するが、位置を修正することもできる。登録した情報はセキュアに管理されているため、第三者が見たり、他の場所に送信されることもない。エモパーはAQUOS ZETA SH-01Gに電源がONになっているとき、常に動作していることになるが、非常に少ない電力でユーザーの行動を理解できるように、センサー制御ICを利用しており、実際に利用した印象でも多くの電力を消費しているイメージはなく、まったく気にならないレベルと言えるだろう。

実際に、筆者が使ってみたところ、当初、予想していたよりも大人しい(?)反応で、エモパーがしゃべることがうるさく感じるようなことはまったくなかった。むしろ、試用時間があまり長くないこともあってか、ちょっと物足りなかったかもしれないくらいのレベルだった。最初の内は突然、話しかけられてしまい、ちょっと小恥かしい感じもあったが、何かの拍子にしゃべってくれると、ちょっとうれしく、使う時間が増えていくに連れ、「こんな状態には反応しないのかな?」とエモパーの反応に期待を持つことも増えた。筆者は普段、端末をマナーモードに設定し、帰宅後もマナーモードを解除しないことはほとんどだが、エモパーはマナーモード中でも話しかけるように設定できる。もう少し長く使ってみないとわからない部分もあるが、いろいろなシーンでユーザーを楽しませてくれそうな機能のひとつであることは間違いなさそうだ。

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GR certifiedを取得した高画質基準の新設計カメラ

AQUOS ZETA SH-01Gの機能で、もうひとつ注目しておきたいのがカメラだ。スマートフォンに搭載されるカメラは、撮影した画像をSNSなどに投稿できることもあり、今までのケータイのカメラとは違ったクオリティが求められるようになってきた。シャープもこれまでさまざまな形で、誰でも簡単にキレイな写真を撮影できるように取り組んできたが、スマートフォンのカメラの領域を超えるべく、今回のAQUOS ZETA SH-01Gでは新たな高画質基準の新設計カメラを搭載している。

それがリコーのデジタルカメラ「GR」シリーズの開発メンバーによる「GR certified」の取得だ。リコーのGRシリーズと言えば、高級コンパクトデジタルカメラでも常に高い評価を得てきたシリーズであり、筆者の周りにいるデジタルカメラに詳しいジャーナリストやプロのカメラマンも認めるモデルだ。

「GR certified」プログラムをクリアした高品質なレンズと画像処理に加え、光学手ブレ補正機構も搭載するカメラ

そのGRシリーズを開発してきたメンバーが設定したものが画質改善認証プログラム「GR certified」であり、AQUOS ZETA SH-01Gはこれをクリアしている。具体的にGR certifiedではどのようなことを求められたのかというと、レンズについては「中央から周囲まで均質で高いコントラストと解像力を持つこと」「デジタル補正を必要としないほど、歪曲収差と色収差が極めて少ないこと」、画像処理については「レンズの性能を最大限に生かし、自然かつ鮮鋭の高い画像処理であり、きめ細やかなノイズ低減処理であること」「各種レンズ収差を補正するデジタル画像補正は行なわないこと」が求められたという。こう書いてしまうと、あまりリアリティがないかもしれないが、デジタルカメラと違い、スマートフォンは樹脂製のレンズを採用するうえ、奥行などのサイズも限られているため、シャープの開発陣は認証プログラムのクリアにかなりの手間と時間を費やしたという。

また、AQUOS ZETA SH-01Gのカメラは光学手ブレ補正にも対応する。これまでも光学手ブレ補正に対応したモデルはリリースしてきたが、今回は水平、垂直のブレに加え、斜め方向のブレにも効果を発揮し、ズーム中の撮影や動画撮影にも対応する。一般的にデジタルカメラなどでは、手ブレ補正は「シャッタースピードで○段分」という表現で効果を表現するが、一般的なデジタルカメラが3~4段分であるのに対し、AQUOS ZETA SH-01Gの手ブレ補正は4~5段分に相当する効果があるという。実際に夜景などを手持ちで撮ってみたが、従来モデルなどに比べ、ブレも少なく、美しい写真を撮ることができた。

SH-01G 実写ギャラリー

カメラの撮影機能としては、従来モデルから好評を得ている「リアルタイムHDR」はファインダーで効果を確認しながら撮影できるようになったほか、撮りたいシーンに合わせたガイドが表示される「フレーミングアドバイザー」も利用頻度の高い「料理」の写真はさらに寄って美味しそうな写真を撮れるように改良されている。

新しい機能としては、世界的に「セルフィー」と呼ばれる自分撮りが流行っていることもあり、インカメラのワイド撮影やワンタッチでのセルフタイマー設定を可能にしている。特にこれからのシーズンは、人と会うことも多くなり、記念にグループショットなどを撮影することも増えそうだが、そんなときにAQUOS ZETA SH-01Gが役に立つわけだ。この他にも一度に近景、中景、遠景の3枚を撮影し、合成することで、撮影後に背景のぼかしを調整できる「後から背景ぼかしモード」、一度に複数枚を撮影して合成することで、通常の撮影よりもさらにブレを抑え、ノイズの少ない写真を撮影できる「HQ(高品位)モード」、連写で撮影したときのマルチ表示対応などが追加されている。

ライバルメーカーのスマートフォンも含め、カメラは各社とも開発に力を注いでいるが、スマートフォンのカメラに必要とされる便利な機能に加え、高級コンパクトデジタルカメラのリコーGRシリーズの高画質基準で新たに設計されたAQUOS ZETA SH-01Gのカメラは、一歩抜きん出たレベルに進化したと言えそうだ。

エモパーで、カメラで、
美しさで楽しめるAQUOS ZETA SH-01Gは買い!

AQUOS ZETAをはじめとするシャープ製スマートフォンは、従来からスペックを追求するだけでなく、EDGESTデザインの存在感や美しい液晶ディスプレイ、高い省電力性能に加え、実際にユーザーが使っていくうえで、「なるほど!」と思えるような使いやすく、気の利いた機能を数多く搭載してきた。しかし、これらの機能もスマートフォンを手にしてみなければ、なかなか実感することができず、ユーザーが意識しなければ、せっかくの便利な機能が活かされないことも考えられる。ともすれば、何気なく使うだけになってしまいそうだが、シャープは、AQUOS ZETA SH-01Gに搭載された「エモパー」により、ユーザーがスマートフォンを楽しみながら、新しい発見をしながら、愛着を持って使うという、今までにない世界を体験させてくれようとしている。リコーGRシリーズの高画質基準で設計されたカメラも今までのスマートフォンのカメラの領域を超え、撮ること、撮った写真を見せることが楽しくなる世界へ進もうとしている。いつも自分の手元にあり、まさに生活から仕事まで、自分と共に過ごす相棒のような存在のスマートフォンをもっと便利に、もっと楽しく、もっと親密に使うことができるAQUOS ZETA SH-01Gは、ぜひ多くのユーザーに体験してもらいたいモデルだ。

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執筆: 法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話やスマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8.1」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-01F 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるゼロからはじめるタブレット超入門 Android 4対応」「できるポケット au Androidスマートフォン 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるWindowsタブレット Windows 8.1 Update対応」など、数多く執筆。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。ホームページはこちら