IDC Japanの市場調査によれば、今年(12年)第一四半期のスマートフォンの出荷台数は、前年同期比で7割近い伸びを示しており、携帯電話のシェアのおよそ65%を占めているという。これは、単純に考えても携帯電話を購入・買い替える人の半数以上がスマートフォンを選択しているということであり、労働世代に限定するならば、その比率も一気に跳ね上がると想定できる。
ところが一方で、スマートフォンを購入したものの、1本もアプリをインストールしたことのないユーザーも相当数に上るといわれている。これは、日本で販売されているスマートフォンにさまざまなアプリケーションがプリインストールされ、日本人のニーズを満たしていることも一因で、あらゆるジャンルを網羅したソフトをあらかじめプリインストールした国内メーカーのパソコン事情にも通ずるところがあるのではないかと思われる。
いずれにせよ、本来は、「何にでも使える」ことが最大の売りであるスマートフォンであるが、一方で、ユーザーの「深く考えず、簡単に使いたい」という背反したニーズも非常に強いことを示しているのではないだろうか。
前置きが長くなったが、7月21日に発売される「AQUOS PHONE CL IS17SH」は、そうしたユーザーのわがままなニーズへのひとつの回答なのではないか。そんなことを思わせる1台だ。
シャープのKDDI向け2012年夏モデルは、全モデルで最新のOS、Android™ 4.0を搭載する。Android 4.0というのは、これまでのスマートフォンで中心に使われてきたAndroid 2.X系と、おもにタブレットで使われてきたAndroid 3.X系を統合したもので、さまざまな機能の追加が行われている。Android 4.0の搭載によるユーザーにとっての最大のメリットは、実行速度の向上という形で現れている。
当然、IS17SHにも、このAndroid 4.0が搭載された。また、IS17SHでは、前モデルのIS13SHと同じCPUを採用しているものの、内蔵メモリーは1GBと倍増されている。これらの結果、IS13SHと比較しても機敏で快適な動作を実現している。
加えてIS17SHは、シャープがFrog Designと共同開発した独自ユーザーインターフェイス(UI)「Feel UX」を搭載している。実際に使ってみて感じたのは、Feel UXの最大のポイントが、AndroidのAndroidっぽさを失うことなく、利便性を高めたことにあると思う。とかく独自UIといえば、簡単さを追求するあまり、操作性の一貫性を失って、かえって使いづらくなったりすることもよくあるが、Feel UXには、そういった点がない。これは特筆に値する。それでは、Feel UXを含め、実際のIS17SHを詳しく見て行こう。
でははじめに、IS17SHの基本スペックを確認していこう。
メイン液晶には、見やすさにこだわった約4.2インチQHD(960×540ドット)液晶を搭載する。人肌や自然の緑の発色が美しいとの評判が高いNewモバイルASV液晶や、光の乱反射を抑えるリフレクトバリアパネルの採用などで、液晶は非常に見やすく高精度な印象だ。搭載CPUはQUALCOMM製のMSM8655で、1.4GHz駆動。本体重量は約132g、本体サイズは、幅約65×高さ132×厚さ8.9mmで、最厚部でも約10.9mmだ。
そして、液晶下部には常時表示が可能な「メモリ液晶」が設置されているのが目につく。シャープではメイン液晶と合わせてコンビネーション液晶(Combination LCD)と読んでおり、頭文字CLは、機種名の由来にもなっている。
メモリ液晶はモノクロ表示で、ケータイのサブディスプレイと同様に、時間や、メールの着信通知、不在着信などのさまざまな情報を切り替えて表示できる。この液晶は、いわゆる半透過型液晶を採用しており、メイン液晶が消灯していても表示が可能。メイン液晶点灯時には、このメモリ液晶上に、メニュー、ホーム、戻るボタンが表示される。また、本体を横画面で利用する場合は、メモリ液晶に表示されたアイコンも、90度回転するよう設計されている。慣れればどうということのない表示ではあるが、液晶の特性を生かした、初心者にもやさしい設計の目につく代表例といえるだろう。
メイン液晶を点灯すると、ロック画面が表示されるのは、Androidユーザーにはおなじみ。Feel UXでは、これを「ウェルカムシート」と呼び、ここにもシャープならではの工夫がほどこされている。まず、表示される壁紙は、左右のフリックで変更が可能。最大5枚までの壁紙を登録できるので、その日の気分や、利用シーンによって、好きに本体のイメージを彩ることが可能だ。
壁紙の下には、「インフォエリア」が設けられている。ここには、音楽プレイヤーの操作ボタンや、天気、株価といった表示が可能で、このエリアを左右にフリックすることで、画面を切り替えることができる。こうした機能を、ロックを解除することなく確認できるのはとても便利だ。ロック解除は、ロックアイコンを下にスライドすることで行うが、アイコンを上にスライドすると、カメラ、電話、メールの起動アイコンが現われ、これらの機能を直接起動することができる。
ロック解除後に現れるのが「3ラインホーム」と呼ばれる、いわばFeel UXのメインとなる“ホーム画面”。これは、横方向にフリックで切り替えられる画面表示で、「アプリケーションシート」「ウィジェットシート」「ショートカットシート」で構成される。
それぞれの画面は、Androidのホーム画面と同様に並べ替えなどのカスタマイズが可能だが、Feel UXにおけるアプリケーションシート、ショートカットシートでは、アイコンをフォルダ構成し、管理することも可能だ。実際には、ドラッグしてアイコンを重ねることで、重ねたアイコン同士をグループとして、ひとつのアイコンサイズで表示。こうして作成したフォルダには、新たに名前をつけることもできる。限られたスマートフォンの画面サイズのなかで、アイコンを整理できるこの機能は非常にありがたい。
3ラインホーム表示中は、メイン液晶下部(メモリ液晶のボタン上部)に、常に電話、メール、ブラウザ、そして、履歴ボタンが表示されている。特に、履歴ボタンでは、最近起動したアプリケーションの一覧を即座に呼び出すことができる。履歴は、ホームボタンを長押ししても起動が可能で、よく使うであろうこの履歴機能が、この位置に配されているのは、とても使い勝手がいい。
もうひとつ、ブラウザで動作する「クイックツールボックス」も、便利な機能だ。これは、ブラウザ起動時に、画面の端から指をスライドすると、「戻る」「ブックマーク」など、よく使われるメニューが出現するもの。これによりウェブページを見ているときに、本体を持ち直すことなく片手でブラウザを快適に操作できる。
このように、Feel UXは、IS17SHを楽に使いこなしたい人も、ヘビーに楽しみたい人にも親和性の高い、使い勝手重視のUIであるということが、おわかりいただけたと思う。なお、IS17SHには従来のSHシリーズを踏襲した「SHホーム」というホームアプリも搭載されている。切り替えは、端末設定の「ホーム切替」で即座に可能。従来のAndroid端末のホーム画面に慣れていて、IS17SHでもそのままのホーム画面を使いたい人は、こちらを利用するのもいいだろう。
IS17SHが搭載する「エコ技」機能は、まさに機種専用にカスタマイズされたオリジナルアプリであるだけに、難しいことを考えずに、省電力を実現できてしまう。「エコ技」機能には、「標準」「技あり」「お助け」の3モードがあり、状況に合わせて画面をタップするだけで簡単に切り替えられる。「標準」は、その名のとおり通常利用時に、「技あり」は、バッテリーをより長く持たせたるために、省電力で使いたいときに、そして、「お助け」は、緊急時にとにかくバッテリーを長持ちさせたいときに使用する。
各モードには編集機能もあり、たとえば、Wi-Fiの動作モードや、Bluetoothなどの機能のオン・オフを設定可能で、瞬時に出荷時設定にも戻せる。また、画面オフ時にもデータを取得するSNS系アプリを終了させることなく自動制御することにより、バッテリーの消費を抑制。さらに、省エネ効果をグラフで確認することも可能となっている。
このほかIS17SHはスマートファミリンクにも対応しており、AQUOSブルーレイで録画した番組をIS17SHで視聴したり、本体で撮影した写真や動画を、シャープの液晶テレビAQUOSに映し出すこともできる。
また、気軽にスマートフォンを扱いたいというニーズへの配慮として、IPX5/IPX7防水に加え、新たに防塵にも対応した。料理しているときや、外で雨が降っているときなど、さまざまなシーンで手が濡れていることを気にせずそのままIS17SHを利用できる。
ここまでIS17SHを見てきて感じることは、本機は日常生活のなかで、情報、AVデバイスとしてスマートフォンを使いこなすといった、いわばスタイリッシュな層向けの1台であるということだ。必要十分な機能と、コンビネーション液晶という独自のデバイスで、“簡単、便利なスマートフォン”を実現したIS17SH。スマートフォン利用のすそ野を大きく広げる1台になると確信できる製品といえよう。
(小黒直昭)