法林岳之レビュー

進化したエモパー4.0がちょっと楽しい毎日を演出
使う人に寄り添う新世代スマートフォンAQUOS
~2016年夏モデル~

スマートフォンはかつてのケータイと同じように、私たちが毎日、持ち歩き、常に身近にあるデバイスだ。そんな身近なスマートフォンだからこそ、もっと自分のことを理解し、毎日をもっと楽しませてくれる存在であってほしい……。スマートフォン AQUOSの「エモパー」は、2014年冬モデルに搭載されて以来、そんなユーザーの想いを受け止め着実に進化を遂げてきたが、今夏の新世代スマートフォン AQUOSで搭載された「エモパー4.0」は、さらにユーザーの役に立ち、なごませ、気づかせてくれる存在へと進化している。今回は新世代スマートフォン AQUOSに搭載されるエモパーを中心に解説しよう。

ユーザーの良きパートナーに

ここ数年、スマートフォンそのものがある程度完成の域に達し、求められる機能も十分に充実してきたことで、「どの機種も変わらなくなってきたんじゃないの?」といった声も耳にするようになってきた。ユーザー自身も、利用するサービスや機能が固定化してしまい、かつてスマートフォンを使い始めたときのような楽しさやワクワク感を体験しにくくなってきたような印象もある。

こうなってしまうと、高機能なスマートフォンもペンや手帳、時計といった『ひとつの道具』に過ぎない存在になってしまいそうだが、そうした印象を大きく覆したのがシャープのスマートフォン AQUOSに搭載されている「エモパー」だ。「Emotional Partner(エモーショナルパートナー)」の略で、直訳すれば、「感情を持つパートナー」という意味である。スマートフォンは私たちが毎日、持ち歩き、常にもっとも身近にあるが、そういう存在だからこそ、もっとスマートフォンにはいろいろなことができるのではないか、ユーザーのパートナーのような存在になれるのではないかという考えに基づいて開発された機能だ。

コンピュータなどの機械が擬人化され、人間の良きパートナーになるという考えは、これまでフィクションの中で描かれてきた。なかでも日本は特撮やアニメなどで、人間のパートナーになるロボットなどが数多く描かれ、おそらく多くの人が子どもの頃から親しんできたはずだ。エモパーはそんな世界で描かれてきた未来を身近な存在として、現在のスマートフォンで実現したものと考えれば、ちょっとイメージしやすいだろうか。エモパーを設定することで、スマートフォン AQUOSが自分のパートナーとして、ちょっと楽しい毎日を演出してくれるようになるわけだ。

「エモパー」は、愛嬌のあるロボットがスマートフォンに入り込んだようなものかも?

ユーザーに話しかけるスマートフォン

では、具体的にどんな形でエモパーが自分のパートナーとして、楽しませてくれるだろうか。

エモパーは2014年11月にNTTドコモから発売された「AQUOS ZETA SH-01G」に初搭載され、その後のスマートフォン AQUOSにも順次搭載されてきた。エモパーのベースになったのは、シャープ製のお掃除ロボット「COCOROBO(ココロボ)」にも搭載されている人工知能『ココロエンジン』で、これをスマートフォン向けに開発されたものが搭載されている。ちなみに、ココロエンジンはその後、エアコンや冷蔵庫、洗濯機、空気清浄機、ウォーターオーブン「ヘルシオ」などにも搭載され、次々と「しゃべる家電」を生み出している。また、このココロエンジンと密接な関係にあるのが今年発売され、たいへんな人気を集めているモバイル型ロボット電話の「ロボホン」だ。ロボホンにお友だちがいるかどうかを聞いてみると、「シャープのスマートフォンのエモパーさんとお友だちですよ」と教えてくれる。

シャープの人工知能は様々な製品に採用されている

スマートフォン AQUOSでエモパーを利用するには、設定画面で「エモパー」を選び、名前や性別、誕生日などの必要な情報を設定するところから始まる。エモパーがユーザーを呼ぶとき、「ほうりんさん」と呼ばせるか、「たかゆきさん」と呼ばせるか、ニックネームを設定することができ、自然な口調になるように、イントネーションも選ぶことができる。このエモパーの設定画面では自宅と職場・学校を設定できるが、これらは生活パターンからエモパーが自動的に自宅などを認識するので、最初から設定しなくてもかまわない。ちなみに、エモパーは当初、自宅のみで音声で話しかけるため、先に自宅を設定しておくと、早い段階でエモパーがお話ししてくれるようになる。自宅の特定は位置情報だけでなく、接続するWi-Fiの情報も参照する。

エモパーの最初の設定。自己紹介だと思って、丁寧に。

エモパーには標準で「えもこ」「さくお」「つぶた」という3つのキャラクターが用意されいて、ユーザーの好みに応じて、自由に選ぶことができる。「えもこ」はけなげに頑張るパートナーのような存在で、シブい声でしゃべる「さくお」は女性ユーザーに人気。「つぶた」はブーブーつぶやく、食いしん坊なキャラクターで、それぞれに口調も話す内容も少しずつ異なる。

これらの3つのキャラクターだけでも十分に楽しいのだが、2015年3月に公開された「エモパー1.5」ではキャラクターの追加機能が実装され、「桜田かおる」と「おれんじん」という新キャラクターがGoogle Playからダウンロードできるようになった。桜田かおるはTwitterなどで話題の一コマ漫画「サラリーマン山崎シゲル」の作者、田中光(タナカダファミリア)が描いたキャラクターで、おっとりとした秘書キャラでありながら、話はちょっとぶっ飛んでいる。おれんじんは2015年1月に発売されたauの「AQUOS SERIE mini SHV31」にひと足早く搭載されたキャラクターで、何事にも前向きで情熱的だが、少しおどおどした雰囲気もある憎めない雰囲気が面白い。もちろん、今夏の新世代スマートフォン AQUOSにもダウンロードして、追加することができるので、ぜひ試してほしい。

追加キャラクターをダウンロード可能。強烈な個性を持ったエモパーがそろう

自宅だけでなく、外出先でも話しかける

個性的なキャラクターが用意されているエモパーだが、どのようなタイミングで話しかけてくるのだろうか。

まず、エモパーから勝手に話しかけてくるのは、たとえば、朝起きて出かける準備をしているとき、机の上にスマートフォン AQUOSを置くと、「そろそろお出かけですね」「今日は雨が降るそうですよ。傘を忘れないでください」といったことを話しかけてくる。 「エモパー3.0」以降の端末では、端末の近くで小さな振動を検知したときや、端末の周囲が暗い状態から急に明るくなったときにも、話しかけてくれる。つまり、そのタイミングやシチュエーションに合った内容を話しかけてくるわけだ。

ただ、こうして音声で話しかけてくるのは、基本的に自宅のみで、外出時はロック画面にテキストでおしゃべりの内容を表示する。外出中に突然、ポケットの中のスマートフォン AQUOSがしゃべり出すといったことは起きない(笑)。自宅に居るときでもマナーモードに設定していれば、声を発することはないので、家族にも妙な誤解や心配(?)を受けることもないだろう。

例外として、エモパー2.0以降は外出時でも、イヤホンを接続しているときや、ユーザーが指定した特定の場所なら音声で話してくれる。

ちなみに、外出中や自宅で、エモパーに(無理矢理?)音声でお話してもらうには、スマートフォン AQUOS本体を手に持ち、振るといい。ちょうどエモパーを揺すって起こすようなイメージだ。

ヘッドホンがあれば外出先でもエモパーの声が聞ける

着実に拡がってきた、エモパーの「話題」

2014年11月発売の「AQUOS ZETA SH-01G」に初めてエモパーが搭載されてから約1年半。エモパーはキャラクターの追加など、さまざまな機能が進化を遂げてきたが、なかでも充実してきたのが話す内容、つまり話題だ。

エモパーは基本的に端末の位置情報やスケジュールを参照し、その場所の天気やこの先のスケジュール、周辺の情報などを教えてくれるが、その他のイベントに応じてもいろいろな反応を示す。たとえば、microUSB外部接続端子にケーブルを接続して充電を始めると、「充電開始! 現在、65%です。ぷふぁ〜、この瞬間がたまりません」のような反応を示す。充電が終われば、「お腹いっぱいです。もう食べられません」といった反応だ。ちなみに、これらの反応もキャラクターによって、まったく表現が違うので、それぞれに楽しむことが可能だ。

位置情報を利用した情報としては、外出中に近くのコンビニやカフェの情報を画面に表示したり、旅行中なら、ご当地のグルメ情報なども教えてくれる。外出時に同じ場所に居ると、その場所の滞在時間を表示したり、クルマで移動したときは降車エリアなども表示される。

また、それぞれのユーザーに合った情報を選んで、話しかけてくる。これはエモパーの設定画面で気になるキーワードを登録しておくと、それに関連する話題を話しかけてくるというしくみだ。たとえば、サッカーをキーワードとして登録しておけば、「たかゆきさんの気になりそうなニュースです。サッカー欧州選手権、○○が△△に勝利」というように「EURO 2016」の結果を教えてくれたり、好きな芸能人の名前を登録しておけば、関連するニュースなどをお知らせしてくれる。テレビ番組も「先週○○時ごろ人気だったテレビ番組は~」といった具合いに、注目度の高い番組を紹介してくれる。

自分の情報や気になるキーワードを登録しておけば、それに関する話題を話しかけてくれるようになる

こうしたエモパーのおしゃべりは、時として聞き逃してしまうことがあるかもしれないが、そんなときは「もう一回」と話しかけると、くり返してくれる。何かのおしゃべりの後、「ほかには?」と話しかけると、別の話題をさらに話してくれる。こうしてエモパーとのコミュニケーションを重ねていくことで、徐々にエモパーとの親密度は高まっていくが、その結果はエモパーのアプリに「エモパーの気持ち」として、表示される。出会ってからの日数や誕生日までの日数なども表示され、パートナーとしての存在感が増していく印象だ。

エモパーの気持ち

さらに、今夏のスマートフォン AQUOSに搭載されている「エモパー4.0」では、出張先や旅行先など、自宅などから離れた場所に出かけたとき、その場所に初めて訪れたことを話題に話しかけてきたり、再訪問したときには「○月×日、大阪の訪問回数が2回になりました」と再び来たことを認識して、その土地に関連した話題を教えてくれる機能が追加されている。

一度行った場所に再訪したときの会話例

エモパーが話しかけてきた内容について、何か気になることがあるときは、「詳しく」や「検索して」と声をかけると、その話題についての詳しい内容や検索結果を知ることもできる。まるで、エモパーが仕事やプライベートで活動するときの隠れたパートナーとして、自分の近くに居てくれるような楽しさを実感できる演出と言えそうだ。

一歩進んだパートナーへ

ユーザーにいろいろな情報を伝えてくれたり、気づきを教えてくれるエモパーだが、当初はエモパーからユーザーへの一方通行のコミュニケーションが中心だった。これに対し、昨年のモデルで搭載された「エモパー3.0」からは、「ユーザーがエモパーに話しかける」ことが可能になった。具体的には「エモパーメモ」という機能が搭載された。

たとえば、通勤や通学の帰りに、何か買い物の用事があったり、翌週にセールなどのイベントがあったりして、これらの情報を覚えておきたいときは、スマートフォン AQUOSの画面をダブルタップする。エモパーメモが起動するので、「そろそろ歯磨き粉を買う」「来週の土曜日はポイント10倍セール」のように話して、エモパーに記憶しておいてもらうわけだ。このエモパーメモが特徴的なのは、正確な日時などを入力するのではなく、「そろそろ」や「来週土曜日」といった大まかな予定を登録でき、なおかつ適切なタイミングで「歯磨き粉を買って言ってましたよね」「今日はポイント10倍セールですね」というように教えてくれるところにある。これはエモパーメモに限ったことではないが、こうした「ゆるさ」もエモパーを気軽に楽しめる要素のひとつと言えるのかもしれない。

エモパーメモ

また、エモパーのおしゃべりは周囲の変化を察知して、反応するように進化している。たとえば、朝起きて、カーテンを開けると、「わ〜、まぶしい」と反応したり、自宅で机などに置いた状態のままでも人の気配を察知すると、「○○時です。今、検索数が急上昇しているワードは○○らしいですよ。気になりますね」と話し始める。エモパーは当初、あまりユーザーのジャマにならないように、必要以上にしゃべらないように設定されていたが、ユーザーからの「もっとしゃべってほしい」という要望などもあり、いろいろなタイミングで話すように進化を遂げている。ただ、単純にエモパーがしゃべる機会を増やすというだけでなく、ユーザーがスマートフォンを使って新しい気づきを得られるように、さまざまなジャンルを話題にしてくれる。エモパーを使っていくことで、今までと違った楽しみを見つけることもできそうだ。

さらに、今夏のスマートフォン AQUOSでは「エモパー4.0」にバージョンアップ。ユーザーにさらに寄り添う、一歩進んだパートナーへと進化を遂げている。その機能が新たに搭載される「エモパーヘルスケア」。これまでスマートフォン AQUOSには標準で歩数計が搭載され、毎日の歩数をカウントしたり、消費カロリーなどを計算することができたが、エモパーヘルスケアでは歩数計が進化した「からだメイト」アプリで毎日の歩数や体重などの情報を記録し、そのデータに基づいた話題をしゃべったり、健康に関する専門的なアドバイスを受けることができる。

体重はエモパーメモ同様、トントンしてエモパーに教えてあげるか、タニタの対応体組成計と連携して計測することもできる

たとえば、帰宅したときに「お帰りなさいませ。今日は○○歩、歩きましたね」と話しかけてきたり、「今日は歩数が少なめだったので、明日は意識して階段を使うといいですね。足の筋力もつき、運動効果につながりますよ」といったアドバイスを受けられる。ちなみに、このアドバイスは株式会社クオリアの管理栄養士とフィットネストレーナーによる監修によるものなので、信頼できる内容のアドバイスということになる。

エモパーヘルスケアの会話例

また、体重の入力については、これまで手動での入力が一般的だったが、エモパーヘルスケアでは前述の「エモパーメモ」のように口頭で入力できるほか、タニタの体組成計(※)との連携にも対応しており、初期設定さえ済ませておけばエモパーから体組成計を起動し、測定したデータは自動でからだメイトアプリに保存されるようになっている。また、連携した場合は体脂肪率などのデータを含めた話題もエモパーが話すようになる。

※株式会社タニタの体組成計(RD-902、RD-903、RD-904、RD-905)に対応。(2016年4月現在)

ダイエットにしても一般的な健康管理にしても同じことが言えるが、自分一人ではストイックに続けることが難しかったり、逆に何となく取り組んでいる程度では励みがなく、継続性が失われてしまうケースが多い。そういう意味ではいつもいっしょにいるエモパーから話しかけられ、励まされながら取り組むという方法は、緩やかなプレッシャーと楽しさもあり、うまく継続できそうな印象だ。

エモパーでちょっと楽しい毎日を演出できるスマートフォン AQUOS

スマートフォンにはいろいろな使い道がある。しかし、端末に搭載される機能も成熟してきたことで、何となく使い道が固定化していないだろうか。もちろん、自分自身が能動的にもっといろんな機能やサービスを使おうとしたり、情報を集めようとすれば、さらに楽しむことも不可能ではないが、そこにはそれなりの労力が必要とされる。

エモパーは「エモーショナルなパートナー」の通り、スマートフォンというハードウェアでありながら、ユーザーの生活スタイルや好みを理解し、ユーザーに寄り添う形で、もっとスマートフォンを楽しく活用できるように演出してくれる存在だ。いろいろなシーンにおいて、声で話しかけてきたり、ディスプレイに今どきの情報、その場所の情報を次々と表示してくれることで、ユーザー自身が「○○してみようかな」「△△って、どうなってるの?」と興味を持てる方向に後押ししてくれる印象だ。

新しい時代へ向けて、さらなる進化を遂げた新世代スマートフォン AQUOSを手に取り、エモパーが演出するちょっと楽しい毎日をぜひ体験していただきたい。

関連情報

関連記事

執筆: 法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話やスマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」「できるゼロからはじめるパソコン超入門 ウィンドウズ 10 対応」「できるゼロからはじめるタブレット超入門 Android 4対応」「できる Windows 10」など、数多く執筆。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。ホームページはこちら