部外者の私がEnterprise Watchを立ち上げるまで



 私がImpress Watchと直接かかわりをもったのは、わずか3年前。それまでは、インターネットのニュースサイトとは縁どおり仕事を担当してきており、Impress Watchについて語るのはおこがましい感じがしている。とはいえ、間接的には創刊当初からかかわっており、記憶している事柄をいくつか紹介しながら、Impress Watchの精神を振り返ってみたい。


INTERNET Watchメール配信トラブル

 Impress Watchはメール新聞であるINTERNET Watchからスタートしたのは、10周年サイトを隅から隅まで読んでいる方ならご存じだろう。年表では1996年に創刊となっているが、その前の年からINTERNET Watchはプレ創刊という形で、毎晩メールを配信していた。当時はWeb版はなく、メール主体であるため、配信にミスがあると媒体として大変な問題となった。

 その頃の私は、INTERNET Watch編集部の隣で発売間近のWindows 95解説書を編集していた。ある日の夜、隣のINTERNET Watch編集部から、「メールが配信できない!」という叫び声が。ちょうど新人のパソコンを設定していた私は、メール新聞も大変だなと人ごととして聞き流していた。
 が、その数分後、原因は私であったことが判明。当時のインプレスはDHCPサーバーを使っておらず、一台一台IPアドレスを手動で設定していたのだが、新人のパソコンに対してDNSサーバーのIPアドレスを設定していたのだ。そのため、IPアドレスの競合が起き、メールサーバーは配信不能の状態に。

 今から考えるとネットワークの構成がシンプルであり、その結果起こったミスともいえるが、この経験からメールを使ったメディアの大変さを身にしみて感じたものだ。また、ネットワークの仕組みをしっかり勉強しようというきっかけにもなった。


PC Watch海外取材への同行

COMDEX/Spring '97
 次にImpress Watchとかかわったのが、当時PC Watchの編集長だった山下氏に同行したCOMDEX/Springの取材。とはいえ、私は書籍担当であり、なにかいい洋書があるかのチェック程度で、自由時間たっぷりの日程になるはずだった。

 が、PC Watchでは、海外イベントを現地から速報するというスタイルを確立しつつあり、気がつくとアシスタント状態に。

 当時私がアシスタントとして活躍(?)した記事は下記のページにあるので、見ていただけると幸いだ。

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970602/comdex.htm
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970603/comdex1.htm

 山下氏はイベントをリアルに伝えることにこだわっており、それを伝える手段として発売になったばかりの日立のMPEGカメラ「MP-EG1」でイベント前日の様子などを動画で伝える努力をしていた。私はそのカメラマンとして使われたのだが、今見直してみると、編集なしワンテイクという素朴なもの。そのため、キュー出しの私の声もそのまま動画に含まれていた(おまけに失敗部分まで含まれている...)。これが私のImpress Watchでの声の初出演だ。残念ながら、二回目の出演は未だにないが。しかし、この経験から、パソコン解説書のビデオ版を出版することにつながった。


PC Watchでの記者デビュー

記事でとりあげた「Microsoft Office 60 Minute intranet kit」
 そのCOMDEX/Springでは、アシスタントだけでなく記者としてもデビューしていた。読み返すと非常に寒いものだが、書籍の編集だけをしてきたものにとって、記事を書き起こすのは非常に大変で、わずかな記事を書くのに何時間もかけた記憶が残ってる。

 ひとつの記事に何時間もかけている私に対して、山下編集長はその数倍の記事をすばやく書き上げていた。もちろん、書き上げるだけでなく、それを日本に送り、公開しているのだ。深夜まで作業をしている姿を見ながら、インターネットの即時性のすごさを実感したのを覚えている。

 これらの経験から、その後、書籍のサポート情報を掲載したWebサイトを立ち上げたり、サンプル文書のダウンロードサービスを開始するなど、インターネットの即時性を用いた情報公開などを行うきっかけにつながった。


そして、エンタープライズへ

Enterprise Watchトップページ
 Impress Watchと接したわずかな経験ではあるが、これらから、当時無名であったRed Hat Linuxを用いた個人用ホームサーバー構築本を出版することになった。サーバーとの付き合いがこのころから深まったといえる。

 また、書籍とはまったく別に、B2B向けコンテンツの事業化プロジェクトの立ち上げも経験。結局このプロジェクトは未完成となったが、これらの経験からEnterprise Watchを立ち上げることになった。あらためて振り返ってみると、直接関係のないImpress Watchの影響をなにかしら受けていたことに気づかされる。

 部外者時代の長い私から見ると、Impress Watchは先進的なテクノロジーを貪欲に取り組んで成長してきた革新的なメディアだったんだなとしみじみおもえる。今はその一員なので、Impress Watchは先進的なメディアであるといわれるようなコンテンツを作りあげてみたいものだ。

(Enterprise Watch 編集長 福浦一広)



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